1/8 宗田理『ぼくんちの戦争ごっこ』を読んだ

面白かった。
『ぼくら』シリーズの外伝的作品。自分の中学受験に失敗したことからきっかけに……実のところはそれ以前からじくじくと……悪くなっていく両親の関係に、どこか冷めた視点から見つつ、しかし同時にスリルめいた不穏な興奮も感じ始める「ぼく」こと光。『ぼくらのマル秘学園祭』じゃ、ぼくらのおかげで夫婦問題が片付きました、みたいな態度取ってたけど全然違ってたぞ。かなりお前主導じゃねえか。しかも激しい口論の末に一度は収まりかけたのを「プロレスデスマッチさせたい。もうチケット売って観客も呼んじゃったし」という理由からデマ工作やら何やらで煽り立てて一大興業にまで発展させてたじゃねえか。全部出し切らせたと言えば聞こえはいいが。
子どもに受験勉強漬けさせて失敗したとなればあっさり見捨てて弟で再チャレンジさせようとして、夫婦間にヒビが入ったらしばらく帰って来なかったり勝手に旅行に行ったりとまあ今で言うならネグレクトどストライクコースではあるが、大人たちの身勝手のワリを諸に食らいつつ、しかしそれを冷静に観察する光の視点が哀しくも頼もしい。同じように夫婦喧嘩から離婚して母と暮らしている友達と、自分たちの親を比較しながら語り合う様にはおかしみと尊みが感じられてよかった。
強力な援軍たるおばあちゃんが、ふとした瞬間に急に儚げに見えてしまうシーンも印象的。そういえば本編の『ぼくら』シリーズでも、瀬川老人やさよばあさんが老いによるさびしさを儚むシーンがよく見られたな、と思い出す。ま、このばあちゃんに関していえば、この後『ぼくら』シリーズにも出張ってきて大活躍するんですが。
あとがきの最後の一文、
”おやじとおふくろが夫婦げんかをはじめたからって、子供のぼくたちまでびびることはないってことがわかったかい?
やるなら、徹底的に戦わせようじゃないか。そして、ぼくらはそれを観戦しようぜ。
途中で、くたびれたからって中止は許さない。戦いをはじめたからには力尽きるまで戦わせるのだ。
ぼくがやれたんだから、君たちだってやれるはずだ。
みんな、人生何が起きたって絶望することはない。道は必ずあるってことをおぼえておいてくれ。”
作品の内容はこの一文につきるのだが、それ故にこそちょっとジンときてしまった。ただこの作品の内容からすると「道」って両親を河原デスマッチに叩き込む道になってしまいますけどね?

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