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11/22 『答え合わせ』を読んだ

NON STYLE石田による漫才論をまとめた本。いやもう、NSCで講師を務めているのだから、これはもはや講義録とか呼ぶべきものなんじゃないか。とても勉強になる……活かす場があるかは知れないが。養成所の講師や賞レースの審査員も務めつつ、今現在もプレイヤーとして舞台に立ち続けている著者の、今現在における漫才に対する向き合い方を、今現在舞台で戦い続けている漫才師たちの名前もじゃんじゃん出しながら語っていくので、講義でありながら、臨場感のようなものがある。来月のM-1に向けて、モチベーションがどんどん上がってくる気分だ。いやだから、俺はいち視聴者にすぎないけれども。
前半部分なんかは本当に大学生時代を思い出す気持ちで、長机に座って教授の話を聞くかのように読み耽った。しかしひとつ、不満じゃないけど要望というか欲を言えば、「システム漫才」というものについてもうちょっと説明が聞きたかったというのがある。ブラックマヨネーズやチュートリアルが発祥となったそうだけど、具体的に「システム」とは何なのか、言葉だけはたまに聞くけどあんまりよくわからない。何となく、会話における一連のお決まりの流れ……ブラマヨだったら吉田の悩みに小杉が解決策を提案するけど吉田はあれこれ屁理屈つけて否定する、といったようなものだというのはわかるけど、どこからどこまでをシステムと定めるのか、石田の言う「漫才コント」「コント漫才」とも絡めるとどういう関係になっていくのか、その辺結構ごちゃごちゃしてわかりにくいので、整理してもらいたかった。まあそこまで踏み入って聞きたかったらNSCに入って直接講義に出るしかないか……。
後半のNON STYLEとしてのこれまでの遍歴も、とても面白かった。特に井上の位置づけが、まさに何とも言えない、相方と呼ぶ以外にこの世界にまだ呼び名が無い関係で。お笑いオタクにすぎなかった自分を、どこからか評判を聞きつけてプロの世界に連れてってくれたかと思えば、方向性は真反対なうえに問題を起こして苦労をかけ、ただそのおかげで解散危機は消滅したりして、禍も福も等しくもたらす、ある種のお笑いの神のようにも見える……一神教的なヤツじゃなく多神教の、魑魅魍魎とほとんど区別がつかない類のヤツだが。しかしそんな井上のテレビ志向と、石田の舞台志向が紆余曲折を経て噛み合った結果、今の「マクドみたいな漫才」ができたのかもしれない。
あとがきで己の講師イキリを散々にコキ下ろしてほしいと言っているけど、この本をあとがきまで読んだ人にそれが出来る人なんていないんじゃないかな……それでもいずれそんな夢が叶う日まで、お笑い問答を続けて行ってほしい。

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