12/19 『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 5 「case.魔眼蒐集列車(下)」』を読んだ
化野菱理、という人物について、1巻で出てきた時はなんだかよくわからないうちにあっさり死んじゃって、と思ったら生きてて、なんだかよくわかんねえなという印象だけ残っていたけど、今回の事件での立ち居振舞いはなかなかキャラクターを見せていた。なんだか魔術に対して……あるいは魔術が関わるミステリについて、やや嘲笑うように振る舞う。こっちが主人公の魔術ミステリもアリよりのアリじゃないか。魔術なんてデタラメを前提に敷くミステリで真面目に推理なんて馬鹿馬鹿しいじゃん?……的な、魔術を解体するエルメロイⅡ世に対してミステリの構造を解体するタイプの探偵。
まあ実際普通のミステリだったら許されない、までは言わずとも何人かは席を立ってしまうような真実ではある。犯行の実行犯は真犯人に催眠をかけられて凶行に及んでいたのだ……などという、あれ最近どこかの新装版で読んだ気がするなというトリックも、魔術が存在するならば、いや魔術が存在する世界だからこそ真っ当なトリックとして受け容れられた。
お話としては、ここまでの話がいわば「ウェイバー・ベルベットは何故第五次聖杯戦争への参加を諦めたのか」というホワイダニットとして完結しており、第一部完の趣もある。しかしあとがきいわくここから後半戦ということで、「敵」たるドクター・ハートレスもお目見えして、事件の怪奇さや魔術戦の激しさもいや増していくことになるのだろう。グレイの秘密も明らかになっていくのかもしれない。そういえばこの巻でようやく気になったけど、グレイがアッドをしまうとき固定具にどうのとか言うけど、具体的にどのようなものなのだろう。なんか右腕全体が固定具、みたいな感じ? 100均ショップで売ってるようなフックとかではなさそう。ちょっと地元のご先祖様に顔が似てるだけの子ではないのかな。そのあたりも気にしていざ後半戦。