11/2 『ジェノサイド 上』を読んだ
名前だけはどこかで耳にしていて、面白いと聞いていたのでいずれ読もうと思っていた作品。高野和明さんは初めて読む作家だが、これはもはや擦り倒されてるネタかもしれないけど、本を開く直前まで高野秀行さんと混同していた。いや開いた直後までかな。カバー折り返しの著者略歴を見て気づいたから。『クレイジージャーニー』を観ていて、「へーあの『ジェノサイド』を書いた作家さん、今は世界の納豆を追いかけてるんだー」とか思っていた。失礼でありました。
タイトルからして物騒だし、どんな話なのかと戦々兢々としていたが、読み進めて行くと、思ってたより読みやすい。ワクワクするような謎や、展開の引きをふんだんに用意していて、エンタメ性がある。創薬とかの話は理解できてるとは言い難いけど、ぎりぎり受け流せる程度の説明を添えてくれているしどうにかいけそうだな……などと思っていたら、話が進んで物語の輪郭が見え始めてくると、思わぬ方向に転がっていく。超知性を獲得した進化した新人類と、彼らにいずれ支配される未来を恐れて殺害を目論む旧人類の国家……これ……『ブギーポップ』だ! まんまMPLSとそれを狩る統和機構じゃあないか。急に馴染み深い話になってきたぞ。進化した人類に特殊能力とかはないしそれを狩る側も普通の人類の兵士だけど、それだけにこの新人類vs旧人類の戦いを旧人類側、進化の芽を摘む側の視点で読むことができる。やっぱ俺は『ブギーポップ』はMPLS、新人類側で読んでいたから。
新人類側が傭兵たちを味方につけてコンゴ脱出を図るところで下巻に続くが、しかし決死の思いで密林を抜け、大国アメリカの魔の手から逃げ果せて日本に辿り着けたとしても、そこにはひ弱な大学生しか待っていないんだがそこからどうするというのか? 肺胞上皮細胞硬化症の特効薬は手に入るかもしれないが……頼みの綱は新人類のその超越的な知性による深遠な計画だが、彼が旧人類をどう思っているかも未だ不鮮明で怪しく、なるほど脅威を感じるのもわかってしまう。新人類と旧人類、果たしてどちらが生き残るのか。それを自分はどちらの側から見ることになるのか。下巻も楽しみ。