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2024年5月の記事一覧

5/28 『マルドゥック・アノニマス 9』を読んだ

前巻で葬儀の対象が明かされたことで、今巻ではいかにしてその状況が構築されるに至ったかを描くのだろうかと予想し、その通りの展開ではあったのだけど、しかここでまた幾重にも捻りを入れてくる。シルヴィアの保護に始まり、バジルとともに愛を育むことでオフィス側との対立感情を複雑にした上での、偽装死計画――葬儀の対象が明かされたことで時系列を分けてることの意味があんまなくなり、正直もうその演出も飽きてきたなと思わせたところで、新たな謎と疑念を放り込んでくる。果たしてシルヴィアは本当に死んだ

5/23 『鎮魂歌 不夜城Ⅱ』を読んだ

前作の感想文(https://note.com/moderatdrei/n/n624c41c557eb)に書いた通り、ジェイムズ・エルロイ『ホワイト・ジャズ』の文体を模したという本作を目当てに、このシリーズを読み始めたわけだが……いざ読んでみると、なんかあんまり……というか全然、エルロイ文体していない。と感じる。確かにダッシュ線や体言止めの短文などを多用しているが、そんくらいでしかない。こちらが慣れ過ぎてしまっているのだろうか? ちょうど、というかここ数ヶ月、ちょっとした待ち

5/15 『テトラド1 統計外暗数犯罪』を読んだ

吉上先生の作品はそれなりに読んできたつもりだが、どうも文章のリズムがあんまり合わねえなあ……ということを認めなければならなくなってきた。いよいよというか、いまさらというか。俺が読点をつけたいところでそのまま進んでしまって、文意の把握が追いつかないことがままあった。特に事件現場の描写などは、土地鑑もないしなかなか大変。 どうにか慣れられたらなあ……と思う。なんせ、他の要素はほぼストライクゾーンなのだから。近未来を舞台にしたややSFサスペンス・ミステリで、人の心情を読み取ることに

5/12 『赤面 一生懸命だからこそ恥ずかしかった20代のこと』を読んだ

くりぃむしちゅー上田晋也のエッセイ3冊目。1冊目2冊目と楽しく読んできたが、3冊目は表紙がちょっと嫌だったので刊行されてもしばらくは買わずにいた。しかしまあ、前2冊も読んでいることだしな、と渋々買って読んでみたら、書かれていることはオールナイトニッポンなどで話されていた往年の人気エピソードの数々で、あらためて本人の筆によって綴られたものを読むのは楽しかった。知ってるエピソードばかりで目新しさが薄いとも言えたが、しかしそれだけでもなく、最も紙幅を多く割いて書かれた芸人への第一歩

5/8 『火喰鳥を、喰う』を読んだ

舞台は信州中南部。ということは木曽か? いや伊那の方か。まあ広く信州と見れば、奇しくも積読リスト上では3連続で地元と縁のある小説が並んでいたことになる(間にリストに無かった西尾維新が入ってるし、『豊久の女』は主人公の出身地というだけだったが)。なかなかアグレッシブなタイトルに惹かれて購入。初めて読む作家。 呪物めいた大伯父の日記がやってきた瞬間から、ホラー演出マシマシで立て続けに怪現象や怪言動が頻発する。あざといくらいに起きる。なかなか無惨な描写も豊富で、映像で観たらちょっと

4/30 『鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説』を読んだ

ウフフフフ爆笑。いや爆笑はさすがにしてないし、ウフフフフとも声をあげて笑いはしなかったが、終始ニヤついて読みたくなる小説だった。まあニヤつきながら本を読んでいたら不気味なので、結局無表情で読み切ったわけだけど……多分。気持ち的にはウフフフフ爆笑。 一言でまとめるなら、「西尾維新の特長ともいえる無駄に手の込んだ言い回しや野放図な言葉遊びが、手段ではなくそれ自体を目的として書かれた小説」とでも言うべきか……あるいは「西尾維新が『西尾維新みたいな小説書いてください』って言われて書い