かっこいい看板
彫刻作品とでも言いたい程のかっこいい看板を見た。
それは、大きな道路沿いにあるガソリンスタンドの看板だ。
歩道とガソリンスタンドの敷地に境界を引くように、大きなコンクリート製の看板が建てられている。
作ったその日にそのまま運んできたみたいにコンクリート剥き出しで、その上部は割れて断面のでこぼこが露出している。
大きな正方形に作ったコンクリートの板の中心を回し蹴りして、上部だけどこかにやったというような形だ。
割れた断面から雨水が流れ落ちたのであろう黒い染みが、上から下にむかってたくさんの直線を引いている。
その下をゴシック体で書かれたガソリンスタンド名が横に貫いている。
文字に表したところで、ただの無機質なコンクリートの壁のような印象を与えてしまうかもしれない。
割れたような形は、誰かがぶつけて壊したのか、初めからそうだったのか真相はわからない。トラックのような大きな車両もよく通る道路に面しているから、壊れた後だと言われても納得できる。
しかし、断面が露出した無骨さがむしろその存在を主張しているようで、ただのコンクリート板には感じられない味わい深さを醸し出しているのだ。
あの看板はとってもかっこいい。
雨水が落ちたような縦線も、ガソリンスタンドがこれまでに給油してきた車が走ってきた道のりを表しているようだ。
あんないいものを、ただのガソリンスタンドにおいておくことはとても勿体無いように思えるが、それこそがよさだともいえる。
あの看板が例えば美術館の屋外彫刻として飾られていても、そこから何を読み取るべきなのかとても悩んでしまうことが想像できる。
あれは、あのガソリンスタンドと一緒にあるからいいのだ。人間の生活がそこにあることを感じさせるからこそおもしろい。