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新宿方丈記・46「炊飯器がやって来た!」

上京して以来、およそ30年ずっとお世話になってきた炊飯器が壊れた。…というよりは、引退の潮時を迎えた、といったほうが正しいな。正確な日付は覚えていないけれど、数年前にまず、蓋の蝶番が割れた。でもこれは本体を抱えて持てば全く問題なかった。さらに数年後、今度は接触が悪くなってスイッチを入れるのにコツが必要になった。おそらくコードの一部が切れていたんだと思う。でもこれも、捻ったり叩いたりの家電昭和ルール(笑)でどうにかなっていた。だってちゃんとご飯は炊けるんだもの。ところが先週、いつものごとくコードをくねくねやっていたら、バチっと火花が飛んで、コードの一部が焦げていた。これにはさすがに閉口した。いよいよダメかな。この状態じゃ、めったに使用しないけれどタイマーかけて外出とか危ないなあ。電気系統の火事は怖いんだよね。仕方ない、辛いけど引退勧告だ。

東京で初めて住んだ街は桜上水だった。当時駅前にあったラオックスで、テレビ(もちろんブラウン管)や掃除機や冷蔵庫や洗濯機(二層式!)とともに我が家にやってきた炊飯器。月日とともに他の家電が順番に壊れたり使えなくなったりしていく中で、最後に残った君ともいよいよお別れか。見た目も機能もシンプルで素っ気なくて、それがよかった。なぜか他の家電に比べて思い入れが強くて買い換えられなかったのだけれどね。私が東京で暮らした日々を全部知ってるんだもの。どんな時も淡々と、ひたすらご飯を炊いてくれてありがとう。ご苦労様でした。なんかそんな気持ち。

基本的に自炊なので、炊飯器は必需品なのだ。早速新しい炊飯器をポチる。家電量販店も見たけれど、今時のご立派な機能は必要ない。かくしてシンプルで小ぶりで、見た目もタイプの新人がやってきた。箱を開けてみたらおもちゃみたいに小さかった。若干不安になりつつ炊いてみたら、見事に美味しいご飯が炊けた。しかも先代より美味しいじゃないか!別に先代炊飯器のご飯が不味かったわけじゃないけど、ちょっとびっくりした。進化してるね。こうやって、時代は動いていく。なんだか自分もリセットして、またやるか、って気になった。新人は今時の子だから、30年は頑張れないかもなあ。まあ、自分もあと30年生きてるかなんてわかんないからね、いい勝負だな。





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