アトピー周辺知識37 : 外用薬・貼付剤(暫定)

 昨今肌の調子がかなり改善したが、その決め手になったのは結局体質改善だけではなかった。
 栄養療法による体質改善は重要だがどうしても即効性に欠け、糖質制限も緩やかなものでは同様である。


中々炎症の収まらなかった手指の第一関節部が綺麗に治ったのは大変喜ばしい。ただ未だに乾燥の具合が強く通常の皮膚に戻り寛解に至るには暫くかかりそうである。

 結局外用薬の効率的な使い方が短期においては最も重要だった様に思う。
 実際の所私自身は元々ステロイド薬の完全否定派ではなく、長期使用・漫然とした常用や免疫抑制剤のみに頼った治療に否定的なだけであり、アレルギーの除去療法・栄養療法での体質改善と並行した短期効率的な使用に関しては肯定派である。

 では一般的な皮膚科推奨の使用方法がそのまま有効と考えているかと言えばそうではない。
 外用薬の使用方法でよく問題になるのはその希釈と使用量・塗る部位である、たまに塗り方も気にされるがそちらは大差無いだろう。


 ただ希釈使用の問題に関しては過去の過ちとして認識が広まったのか、一昔前ではよくあったが昨今は適切な使用をする医師しか見ない。
 一方適切な使用量に関しては個人の経験として余り現実的な治療を見据えたものではないと感じている。

 所謂指一関節分の使用量との事だが、仮にそれだけの量を塗ったとて被覆をしなければそんなものは大半が衣服等に拭われてしまうか洗い落とされるのが現実である。何しろ肌の表面に塗っているのだから当然である(この当たり前の事実に関して皮膚科医がまともに言及しているのを見たことが無い)。

 たまに数十分の塗布でも効果有りと言われるが経験的にはそんな事はなく、薬剤吸収の推移を見ても数時間は塗布状態を維持出来なければ最大限効果は発揮されない。手指の症状に対して寝る前の塗布が効果的なのも洗い落とされる事が無いからだろう。

 塗る部位に関しては直接浸透し過ぎると問題な部位に効果の弱いものや浸透しても問題無いものを使用するのは適切であると思う。
 しかし逆に浸透・吸収を十分にさせる効果的な使い方に関しては、考慮がほぼされていない様に思う。

 これに関しては外用薬の経皮吸収をどう捉えるかという問題にもなるが、あくまで一部位にのみ効果を得たい、加えて必要以上の吸収を避けたいというのであれば上記の使用方法が適切だろう。
 逆に身体全体に効果が得たい、成分の十分な吸収を期待したい場合はむしろ不適切な使用方法となり、これは内服薬に準ずる使い方とも捉えられる。私自身もこの経皮吸収の効率化を意識した使用方法を用いて外用薬を塗布し治療を行った。
 この場合は積極的な経皮吸収を考えつつ、一方で皮膚への副作用や塗布された薬剤の保持も考慮する必要が有る。

 アトピー性皮膚炎治療における皮膚科での外用薬の準内服薬的な使用に関しては自身は余り聞いた事が無いが、近いものはパッチ薬やステロイドテープ剤(貼付剤)だろうか。
 治療効果を考えればいずれ外用薬の準内服薬的使用や、ステロイドテープ剤のアトピー治療へのより広範な普及が為されるかもしれない(テープ剤は軟膏剤に比べステロイドの吸収量が数倍となるため、同成分のステロイドよりランクが1~2ランク上相当となる点には注意を要する)。


 手湿疹治療において、ステロイドテープ剤(以下、テープ剤)を使用するケースも多くあります。手は外用薬の浸透性が悪い部位なので、テープ剤に切り替えることでステロイドの吸収性が向上し、治療効果を高めるという利点があります。
 テープ剤を広い範囲に貼付することは現実的ではありませんが、亀裂部分を保護する目的で、あるいは苔癬化や浸潤が強くてステロイド軟膏・クリームの4 週間塗布ではなかなか軽快が得られない場合にテープ剤へ切り替えることは治療選択肢の一つになります。実際に、亀裂ができていて困るという理容師や美容師にテープ剤を処方すると“とても助かる”とおっしゃいます。また、貨幣状型のように皮疹が限局している場合にも有効な治療法だと思います。
 使用時に注意すべきことは、テープ剤をステロイドと認識されていない患者さんがいることです。局所の副作用発現の可能性があることから、貼付部位に一致して皮膚の萎縮などがみられるような場合はいつまで使用するかの判断や、貼付部位を変えるなどの注意が必要です。

 職業性皮膚疾患の7 ~ 8 割が湿疹・皮膚炎であり、さらにそのうちの8 割以上が手や上肢に発症します。しかも、手は日常的に原因となる物質に触れるため、経過が長期化するケースも少なくありません。しかし、多くの患者さんは、皮膚の症状に悩みながらも、仕事を続けていかなくてはなりません。
 多くの手湿疹で困っている患者さんが、職場や家庭でパフォーマンスをしっかりと発揮できるように、社会的にデメリットが無いように、私たちが適切な治療を提供することによってそのお手伝いをするということは、皮膚科医としての大変重要な使命だと思います。

手湿疹治療の基本とちょっとしたコツ
Ⅲ.手湿疹診療の実際-治療-


 …私自身皮膚科にてステロイドテープ剤を選択肢とした提示された事が一度も無いのだが、本当に治療方法として普及しているのか少々疑問ではある。それとも患者から請われない限り、医師からは積極的に提示しない規則や処方したくない理由でも有るのだろうか。
 個人的にはやたらと高価な生物学的製剤などより、安価で使い易く効果の高いステロイドテープ剤の普及を推進して欲しいものである。

 ステロイドテープ剤は、そういった治療法の一つですが、外用薬のなかで、皮膚科医が使用量を決められ、的確に把握できる、貴重な薬剤だと言えます。 また、結節性痒疹などで使うときなどには、患部に合わせて切って貼るので塗布範囲が決められる、余分なところに作用が及ばない、効果にバラツキが出ないというのも、特徴だと思います。

 もちろん患者さんにとっては、「貼るだけでいいので簡便だ」「使っても痛くない」といった意見に代表される“高い利便性”がテープ剤の最たる特徴だと思われますが、加えて皮膚科専門医は科学的根拠によりテープ剤を選択することが多いものと考えられます。

ステロイドテープ剤の特徴とその適応

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