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「Addicted to the World!!」

昔から本は好きだったんですよ。
世界の童話全集から始まって小学生の頃には学校の図書館に入り浸ってホームズシリーズから三毛猫ホームズまでめちゃくちゃ読んでましたね。
モルグ街の悪夢でチンパンジーの恐ろしさに震え上がり緋色の紐で毒蛇こわい…ってなったりしながら起こった事件が解決するまでの展開をドキドキしながら読んでいたものです。
はい。三つ子の魂百まで。ミステリ大好きですよね。
そして当然のように明智小五郎少年探偵団に手を出して怪人二十面相に行きつくわけです。
あの手この手で警察の手をすり抜けていく怪盗。そのスマートさかっこよさが嫌いなわけがないんですよね。

というわけで2019年7月20日〜7月23日まで川崎アルテリオ小劇場で公演された「百年書店〜ルパンVSホームズ 世紀の戦い」を拝見してきました!!
ルパンVSホームズの舞台化と思いきやこれは本にまつわる物語の物語。
ルパンVSホームズを書き上げたモーリス・ルブランとホームズの作者コナン・ドイルのお話でした。
まずはキャストごとの感想です。

ルパン&モーリス・ルブラン(ヨンミンさん)


怪盗紳士アルセーヌ・ルパンとルパンの作者モーリス・ルブランを演じるヨンミンさん。
ルパンのビジュアルが最高すぎました…。めっちゃカッコイイ…。
転じてモーリス・ルブランは新進気鋭の作家でまだまだ若造って感じのお芝居されてて演じ分けお見事でした。
ルパンVSホームズの本の中のシーンはミュージカル仕立てで割と歌とダンスで表現されてて(それもすごいと思ったんですけども)ルパンとそして金髪の女さんのダンスキレッキレだし軽快だし楽しそうでめっちゃ好きでした。
ルパンの好きなところは基本的には物腰が穏やかな紳士なんですけどホームズに引っ掻き回されてたまに言葉が悪くなった後に「…失礼。少し頭に血をのぼらせすぎました」って言うところめっちゃ好きでしたね…。
ルブランさんはゲルシャール警部がドイル先生のことわからなくてボロクソに言ってる後ろでアワアワしてるところめっちゃ好きでした…。
あと前方で見たときに思ったんですけどヨンミンさんダンスしてる時とかお芝居してる時とかすっごい目がキラキラしてるなーって。
楽しそうにお芝居するヨンミンさんすごく素敵な方だなって思いました。

ホームズ&コナン・ドイル(インジュンさん)

イギリスの名探偵シャーロック・ホームズとその作者サー・アーサー・コナン・ドイルを演じたのはインジュンさん。私の推しですよろしくおねがいします。
常にクールなホームズさんなんですけどバリッバリの殺陣が入るのでそうだったホームズさんはバリツとかいう謎の格闘技使いだった…(華麗な回し蹴りを見ながら)みたいな気持ちになりましたね…アクションがすごい。
そして作者のアーサー・コナン・ドイル。もうこの人が偏屈で気難しくて気分屋で本当めんどくせぇ男だな!?って感じで最高でしたね…。
ホームズを生み出してホームズに取り憑かれたドイル先生の歪みを見事に演じていらっしゃいました…。あと歌が上手い…。
ホームズの千秋楽での「ということは3つの事件においてルパンと重要人物である金髪の女を捕まえたのにすんでのところで逃げられたというわけですね」的な長台詞を一息で淀みなく言ってのけた後にもう一回繰り返したところほんとビビりましたね…滑舌よすぎでは…。
ドイル先生は「ホームズを…殺した…!」のあたりの一連の鬼気迫るお芝居本当に圧倒されました。

常盤悠季(Yumiさん)

このお話は百年書店という歴史の古そうな古本屋さんからお話が始まるんですね。
古本屋で出会った古い本、そしてその本にまつわるエピソードを案内してくれる不思議なナビゲーター。
それが百年書店の主人常盤悠季さんなんですけど本当この常盤さんですねーー!!!!曲者でしたねーーーー!!
WキャストでYumiさんは黒基調の衣装を身につけた常盤さんでした。
登場時は本当に古本屋のパートのオバチャンって感じだったんですけど話が進むにつれてその不可思議な存在に圧倒されるんですよね。
悪戯っぽい話し方で本の妖精のような常盤さんでした。
Yumiさんの常盤さんは最初にオマケだけほしくて本はいらないって言われた時に「可哀想な人ねぇ…」って呟いたところをすごく覚えています。
本当に本が好きな人なんだなって思いました。

常盤悠季(有村昆さん)

YumiさんとWキャストでこちらは赤基調の常盤さんを演じられた有村さん。
こちらはブックオフの店長さんって感じで登場されてましたね…。
今更思うんですけど冒頭の本屋のシーンのお客さんってもしかしてすでに生身の人間ではない人たちだったりしたんですかね?
有村さんの常盤さんはよく通る声と落ち着いた話し方で本当にナビゲーター!って感じでした。
有村さんの常盤さんはクライマックスのドイル先生の行動を指摘するシーンの追い込み方がすごかったですね…。圧倒されました…。

ワトソン&ピエール・ラフィット(萩尾圭志さん)

ホームズの可愛いペットのワトソンさんとルブランの担当編集ピエールさんを演じられたのは萩尾圭志さん。
冒頭のルブランを諌めるシーンでクールなメガネだ!って思ったら突然踊り出したりする残念なメガネでした(好きです)。
ピエールさんは編集さんなので作家であるルブランとぶつかったり和解したりして大人ー!って感じなんですけど反面ワトソンさんは無邪気すぎてああー…うんー…ペット〜〜〜〜!って感じめっちゃ出てましたね…いやこれは原作のルパン対ホームズがそもそもそうなのでルブランさんはワトソンのこと嫌いだったの??って感じではあるんですけれども(逆に大好きすぎたのかなって気もする)。
ピエールさんは毎回高いところから飛び降りたりしてて毎回膝打ってるように見えて大丈夫ですか…?ってなってましたね…。
あとルパンとクロティルドのラブシーン、引いてるドイル先生と対照的にピエールさんはすごい熱心に見ててこれがフランス人とイギリス人の差…って感じですごく良かったです。
ワトソンさんは本当に喋るだけで面白かったですね…声がでかい…。
最後の「フランスパン…フラン…スパン……ルパン!かかっちゃいましたね!」のなにひとつかかってねぇー!!感がもう大好きでした。

クロティルド&マルグリット(村岸優希さん)

金髪の女=クロティルド・デタンジュとルブランの奥さんマルグリットさん役の村岸優希さん。
冒頭に百年書店を訪れてルパン対ホームズの本を手に取るお客さんも村岸さんですね。
いやー金髪の女さんがですね…めちゃくちゃすごかったですね…。
まずビジュアルが強い。そんな全身金色で目立ちすぎる格好ある??って感じの登場からのキレッキレのダンスで圧倒されルパンとのラブシーンは仕草のひとつひとつが面白くて爆笑した後のホームズとのやりとりはルパンのパートナーにふさわしく堂々と落ち着いていてジェットコースターみたいな存在でした…大好き…。
ダンスの時とかすごく楽しそうにダンスされてて目が離せなかったですね…あんなにヒール高いのにそんなに踊れるんですか??ってところもびっくりしました。
そしてマルグリットさんはルブランを支えるしっかりした女性…と思いきや彼女には彼女の悩みもあって…。
原稿が盗まれた後の「私の存在って何?メイド?秘書??…私はあなたの妻よモーリス…!!」のシーンとそこからごめんなさい…って泣き崩れるシーンの熱演ぶりに毎回泣いてしまいました。
作家…に限らず仕事に情熱を燃やす人は時に周囲の人たちのことが目に入らなくなってしまうのでその切なさや苦悩っていうのがすごく伝わってくる気がしました。
歌もお芝居も本当に素晴らしかったです。ありがとうございました!

ガニマール&ゲルシャール(永沢たかしさん)

ルパン逮捕に情熱を燃やすガニマール警部とルブランの原稿が盗難された時に駆けつけてくれたゲルシャール警部役の永沢たかしさん。
とにかく背が高くて足が長い。ステージ前方に座った時ほぼ足しか見えてなかったですね…。
ガニマール警部はもう本当にノリが銭形のとっつぁんすぎて馴染みがすごい。このノリとこのテンション…落ち着く…。
原作の方だとホームズが来てしまうのでちょっと頼りない警部さんって感じにはなってしまうんですけどもそれでも舞台だとホームズのピンチに駆けつけてくれたり(あんまり助けにはなってなかったですけど)してて良かったです。
ゲルシャール警部は原稿が盗まれた!ってなった時にルブランの家に来て調査兼話をまとめてくれる人なんですけど特に理由もなくピエールさんを逮捕しようとしたりするお茶目な警部さんでした。
ガニマール警部は「私はルパンと金髪の女を追い詰めた!…だが取り逃がしてしまった…」って言いながら腕組んで仁王立ちしてるところすごい圧があって好きでしたね…。

アンサンブル・楠木優樹さん

古物商の店主、ドートレック男爵の死体を発見した下男シャルル、そしてルパンの手下役の楠木優樹さん。
バーでルパンと金髪の女と話をしているのも楠木さんですね。
なんと今夏の舞台初日に二十歳になられたばかりだそうで。お若い…。
古物商の店主さんといい男爵の下男の役といいすごく軽快な喋り方をされますね。お声がいい…。
ライディングデスクを買うあたりのやりとりがすごく息が合ってて物語に引き込まれました。

アンサンブル・山口拳生さん

たまたま娘への誕生日プレゼントにライティングデスクを選んでしまったばっかりに大変な目に遭うジェルボア先生とルパンの手下役をされてました。
「私はただの貧!乏!教師だ!!」の言い方すごく好きでした。万年筆だったんですね…。
冒頭からルパンに絡まれたりしてて可哀想かわいい。好きですジェルボア先生。
娘さんに嫌われてなさそうなのだけが救いですね…。

ジーン(小笠原桜子さん)

ドイル先生の恋人のジーンさん役の小笠原桜子さん。
村岸さんもだったんですけど小笠原さんもダンスめっちゃすごいですね!?
衣装も相まってターンの時に綺麗にスカートが回ってましたし。
気難しいドイル先生を支えるジーンさんなんですけどドイル先生はジーンさんに見えない誰かと話をしているのでめちゃめちゃ話しにくそうでしたね…。
ジーンさんっていうのはドイル先生の二人目の奥さんらしいですね。
いやもう本当ジーンさんのこと考えるとしんどみが強い…一生懸命ドイル先生を支えて話しかけてるのにドイル先生はジーンさんのことほとんど見てないんですよ…ときどきふっとジーンさんを見るときは本当にジーンさんのこと好きなんだなって思うんですけどそれ以外の時間の方が多すぎて…。
ホームズの亡霊に取り憑かれたドイル先生は恋人のことすら見えてなくてそれでいて原稿盗難騒動の時はジーンさんをかばうどころか疑いだす始末。
このドイル先生人の心がない…でもジーンさんはそんなドイル先生をそれでも愛してくれてるんだなぁ…って泣きそうになります。泣きました。
ドイル先生の力になりたいけど力になれない無力感とそれでもどうにかしたいっていうジーンさんの必死さが伝わってくるようなお芝居でした!
ありがとうございます…!

アンサンブル・増田三恵子さん

古物商のアシスタント、青いダイヤのクロゾン伯爵夫人、ルパンの手下役をされていた増田三恵子さん。
アンサンブルの方々ダンスに殺陣にめちゃくちゃ動かれてましたね…。増田さんはダンスもキレキレでしたし殺陣の時のアクションめっちゃすごかったです。
ルパンの部下の時の「…2時です」の言い方がめっちゃカッコよくてアフタートークでも言われてましたね。ホントかっこよかったです。

アンサンブル・梶谷唯さん

ジェルボア先生の娘シェザンヌとルパンの手下役の梶谷唯さん。
三つ編みのシェザンヌちゃんめっちゃ可愛い。
ジェルボア先生とのやりとりもめっちゃ可愛くて親子ーーー!!って感じすごく好きでした。
殺陣とダンスの時もめっちゃ動いててすごいな…ってなりました。今回の女性陣ダンスめっちゃすごいですね…。


以降は感想と考察です。

常盤悠季について

この作品で一番謎の存在なんですよね常盤さん。
古本屋の店主さんであり不思議な物語のナビゲーターでもありドイル先生の頭に住み着いたホームズの亡霊であり最終的にはエドガー・アラン・ポーにすらなってる。
でも最後のポーはどうなんだろうな…ポー本人と言うよりはポーが常盤さんの体を借りて話してるような感じでもあったけど。
男であり女であり無邪気な子供のようであり落ち着いた大人のようであり黒であり赤であり多分そのいずれでもない摩訶不思議な本屋の人。
Yumiさんと有村さんのWキャストが見事にその不思議な存在を成り立たせていて本当にすごいとしか言いようがないんですよこれ。すごい。
物語の結構な場面に存在しているのにまるで存在していないかのようでもあり。
いやほんと常盤さんの見せる物語他の話もめちゃくちゃ気になるんで百年書店これシリーズ化してもらえませんかマジで。

ルパン対ホームズ原作パート

原作のシーンは歌とダンスで表現されててめっちゃすごいな????ってなったんですよ
細かい説明はなくてルパンがカッコよくてホームズもカッコいい。すごい。説明がいらない。みたいな潔さすごく好きです。
そうなんですよ最終的にはルパンがどれほど華麗に警察の手をくぐり抜けるのか、ホームズがどれほど鮮やかに謎を解くかなので細かい文字的説明よりビジュアルで圧倒するのも全然アリなんだなって…。
いやほんとあの演出は私の中で拍手喝采でしたね…。
あとアンサンブルの方々による3つの事件のシーンあそこめちゃくちゃ好きなんですよね。
ダンスから入って流れるように始まる劇。スポットライトで切り替わっていく登場人物と起きた出来事の説明。
ホームズがやってきて調査するところの無言再現パントマイムあれめーーっちゃ好きなんですよ。
原作読んでから舞台見に行ったんであーーっ!これはあのシーン…!!!みたいな。
楠木さんの旦那様の遺体を発見するあたりの仕草めっちゃ好き!ってなりました。

音楽

舞台は1900年代初頭のフランス。でも音楽は割とテクノ系っていうか…エレキ系っていうか…
クラシック系じゃないあたりがまたこの作品に合ってる気がしますね。
歌も音楽もめっちゃよかったですサントラほしい。


最後

ルパン対ホームズが原作の舞台と聞いて見に行ったらミステリとすごい不思議なお話と作家の苦悩みたいなヒューマンドラマでなんていうかこうカロリーの高い舞台でしたね…カレーとハンバーグとステーキが皿に乗ってきましたみたいな…いやでもめっちゃ面白かったです。
なにかを作り出す人は時には孤独になってしまったりするんですけども、そんな時にも支えてくれる人がいて、共に語ってくれる相手がいて、そんな人たちがいるからこそなにかを生み出せるんだなとそんなことを考える舞台でした。
人は一人で生きてるわけではないんだなと。
特に創作、なにかを表現する人は人と人との関わりがないとなにも生み出すことはできないんだなと。
誰かの作品を読むことも関わりであり、縁なんですよね。

キャストの皆様、スタッフさん、舞台に関わった方々のおかげで素晴らしい舞台に出会うことができました。
本当にありがとうございました。
百年書店のシリーズ化、本当に待ってます!




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