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虎の子日記  聖地巡礼とアジフライ?

一年くらい前、ふと思い立って長崎県のローカル鉄道を乗りまくる旅にでた。初日の島原鉄道を満喫し、今日は佐世保~佐賀県伊万里市を繋ぐ松浦鉄道に向かう。

母の実家が長崎県平戸にほど近い田舎町であることと、20代の頃大村市という所で過ごしたこと、佐賀県有田町の窯元で修行をしたことがあることとで、このあたりは第二の故郷。地元に帰ってきたような懐かしい道筋をたどりながら車で海辺を走る。

昨晩飲みすぎたアルコールも抜けて元気が出てきたところ、大村市に差し掛かった。かつての職場をのぞいてみたかったが、ナビに映らない場所であることと、30年前には存在しなかった大型展店の進出であまりに町の風景が変わっていたことから、たどり着くことができなかった。人の記憶はたよりにならないものだなあと車を進めていくと「あ!あの店まだある!」30年前と変わらぬ出で立ちのレストランを発見。北九州ナンバーよろしく急ブレーキで店の前に付けた。

そう、カフェではなく、レストラン。ロウで作った食品見本のパスタやらハンバーグやらが入口のガラスケースに並んでいて、レジ前には不思議な田舎の名物がお土産として置いてあり、おおきなゴムの木なんかが邪魔なレベルで飾ってあり、トイレの表示がW・C。
30年ご健在で地元民に愛されている事に敬意を表しつつ、ハンバーグランチをいただいた。セットについていたコーヒー(大村発祥スココーヒーの銘店なのだ)をテイクアウトにしてもらい、また先へと進む。

この駅舎の向こうは海!

本日の一番目の駅、千綿駅。ここも海が見える駅として知る人ぞ知る人気スポット。と、なにやらカメラを抱えた青年たちがざっと50人ほど駅構内にレンズを向けている。お?なんだ?芸能人でも降りてくるのか?と思いきや、その視線の先には一本の車両。え?全員撮りヲタ?(列車や駅など鉄道関連の写真を撮影するのに全力をかける人々)
この車両は長崎大村線の風景と車両を撮るための、撮りヲタ専用特別臨時列車らしい。偶然居合わせた私も、なぜか張り合ってムキになって写真を撮りまくった。

ここで不吉なアナウンス。「明日は台風接近のため全便運休の予定です。」
運休?そんな!電車に乗るためにやってきたのに運休なんて!いや、明日になったら嵐が去って運転再開するかもしれない。願をかけつつ、松浦に向かう。途中畑の中を走る列車をみつけては急ブレーキを踏み、写真を撮る。
ローカル線のすごいところは、手を伸ばせば触れる距離で列車が走るところだ。都会は鉄柵などがあって容易に線路には近づけないが、あぜ道をチャリンコと同じような感覚で列車が走る。うそでしょ~?というこのわくわくがおもしろいのだ。

夜の松浦駅前

海辺のドライブを楽しみながら本日のお宿についた。松浦駅前である。この田舎には不似合いな(失礼しました)すてきなビジネスホテル。松浦鉄道三昧のため連泊予定にしていた。コロナのおかげで2泊で4800円!(旅行支援と地域振興券利用)おまけに「アジフライチケット」を二枚もいただいた。
アジフライの聖地へようこそ、と書かれている。
初めて知ったのだが松浦市はアジフライの聖地らしい。聖地と聞くとアニヲタさんがアニメに出てくる場所や建物をめぐる聖地巡礼が思い浮かぶが、アジフライにも聖地があるのか!
いつかアジフライの聖地、イカゲソの聖地、鶏天の聖地など(あるのか?)食べ物の聖地巡礼シリーズなどもやってみたいものである。

そして今宵も地元メシをたらふく食べた私は、どうあがいても明日の運休が覆ることがないことを知り、せめて、と駅に向かった。

もう駅員もいない無人と化した駅のホーム。周囲にビル明かりなどなく、線路の照明だけが暗闇に浮かぶ。なんとも哀愁のある愛すべき風景!
花もない、めずらしいものがあるわけでもないこのホームを、しゃがみこんで撮影する私はたいそう変わり者に見えるだろう。でもこの”ほっとかれ感”がまたいいのである。
この変人を、見なかった事にして横顔で写真に味を添えてくれたダンディ。
このダンディのおかげで田舎のうら寂しい駅のホームが芸術になる。
これがファミリーでは台無しだし、女性一人では別の心配が発生してしまう。この程よいくたびれ感がこの写真には重要なのだ。ありがとう!

ボーイズよ、これが男の哀愁だ。
あ、アジフライ食べ損ねた。リベンジ。


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