向いているとか、向いていないとか。
これまで、明確に書いたことはなかったが、わたしが現在勤めているのは広告制作会社である。
肩書はなんと、「コピーライター」。
立派過ぎてくらくらする。
この肩書をもらった6年前はうれしくってくらくらしたけれど、今はふさわしくなさにくらくらする。
無理むり、わたしはコピーライターなんて向いてない。
幼い頃から、それはそれはたくさん書いてきた。
祖父母の家に泊まった日には過ぎたカレンダーの裏に新聞を作ったし、手紙を書くのも大好物。
国語の授業が好きで、中でも作文の授業は「待ってました!」と言わんばかりに張り切った。
結婚情報誌を作る人になったきっかけも、自分の書いたレポートを褒めてもらったからだし、結婚情報誌を作る人になってからは広告コピーに夢中になった。
そんな風に、ずっとずっと、書くことと一緒に過ごしてきて、書くことが大好きだった。
もっと書けるようになりたいと思っていたし、きっと書けるはずだとも思っていた。
好きを仕事にするタイプ、そして、欲しいものは手に入れにいくタイプである。
書くことを仕事にしたい、できたら大好きな広告業界で。
その思いはいつしか、「絶対にコピーライターになるのだ」というものに変わっていた。
そして、運よく「コピーライター」として採用してもらえたのが今の職場だ。
あの時の面接官は今のわたしの上司だが、一体全体、どの辺をいいと思って採用したのだろうか。
とにかく、コピーライターという肩書とともに走り出したわたしは、結構序盤からずっこけた。
なんだか全然、おもしろくない。
おもしろくないだけならまだ良かったのかもしれない。
やればやるほど自信がなくなる。
日に日に肩書が目障りになる。
つまり、書けない。
書くのが仕事だというのに書けない。
結構な事故である。
そもそもどうして、わたしは書くことが好きだったのか。
心が動いた瞬間や、初めて抱いた感情などを、忘れないように保存しておきたいから、書く。
心や頭にある思いを、どうにかして伝えたいから、書く。
記憶や気持ちなどの形ないもの、でもすごく大事なものを、目に見える形にして、誰かと共有できるから、書くことが好きなんじゃないだろうか。
うんうん、多分そう。
だから、書く時のこだわりも一つしかなくて
「正しく伝わること」
だけを大切に書いている。
読みやすい文章を心掛けるのも、正しく伝えたいからこそだ。
伝えることが好きなんだよな。
それじゃあ、コピーライター、本当に向いてないのかしら。
書きだしてみるとよくわからなくなったけれど、今のところはこの仕事が好きじゃないし、向いているとは思っていない。
どうしてそう思うのか、わかりそうでわからない。
あとちょっとでわかりそうな気がする。
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