芽吹かない種 #エッセイ
寂しさをかこつ言葉だけ吐き続けている。そんな自分を俯瞰すると、自分がどこかおかしいからだろうかとか、そんな気持ちに襲われる。
自分がおかしいとしてもおかしくないとしても、自分が何かを持て余しすぎてるのであるならばそれは改善するべきことだし、問題がなくても問題としてしまうのならば、それこそどこかに行った方がいいのかもしれない。
どうすれば逃れられるのだろう。そんなことわからないし、本当は逃れたくないのかも知れない。そんな自分を発見するのがとても怖い。
発見したとして何ができるだろう。全ては自分のせいなのだ。自分が決めて自分がそうした。駒鳥を殺したことをスズメが率直に言ったように、私も断じることができるのか。
バジルシードドリンクを飲んだ。
流動質の液体の中で、沈むことなくそのままの座標軸上に存在している黒い種たちは、お互い何を抱いているのかわからないのだ。ばらばらと散らばって互いに接点を持たず、自分たちがどんな未来を抱いていたのか知ることもないのだ 。何の因果か人間に採取されて瓶の中に入れられて、あともう少しで私の中に流れ込んでいく。そんな種たちを見ていると、とても悲しい気持ちになった。彼らは約束された未来を全て失っていくのだ。自分を芽吹かせることもなく、昏い昏い肉体の中に消えて行くのだ。私がひとつの種だとしたら、永遠に芽吹くことができなかったら、芽吹かぬままに朽ちてしまったら、それはとても悲しい。その程度の感情はまだ残っている。
種ならば芽吹きたいだろう。風ならば旅をしたいだろう。なら、私は?このまま死んでいいの?
飲み干した瓶にはひとつの種も残っていなかった。全ての歴史は終わってしまった。
私の中の種がいつか芽吹いてほしい。そう思いながら夜の台所に立ちすくむことしかできなかった。
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