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曽野綾子 大地に還る

この大地は至る所墓なのであって、

有史以来

この地球上で死んだ猫の数は、

億、兆、京、

その上の単位はボクも知らない。

自分の知っている墓に入っている人のことを

知っているとしても

何代か前の人でしかない。

それ以外の人を知ることはない。


それでも

自分に続く人が存在したことで

今の自分が存在している。


とにかく数京匹である。
人間も又、そうであろう。

多くの人間が死んできた。

人が死んでいない土地などない。

どの土地も

誰かが

そこで死んでいる。

人も死んできたし

多くの動物、生き物も死んできた。

そんな儚い命の生き物たち。

それなのに、

たかだか数百年、

自分の残したカルシウムを保管するための

墓のことなど

重く考えるのは実におろかしい。

墓の問題について考えるのは

おろかしいという。


けれども

それぞれができる限り

それも

したいように

していいのだと思う。

猫はそんなバカなことはしない。
静かに大地に還るのみである。

墓に入ったとしても

何れは

大地に還る。

空気中に散らばっていく。


そして

新たな生き物などに吸収される。


物質の循環の環。


その環の中で

私たちは

生きている。

『ボクは猫よ』

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