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曽野綾子 ほんとうの意味

しかし、いずれにせよ、ごく普通の人間は、

パウロの言うように、

苦しみの中からしか、

ほんとうの自分を発見しない。
はっきり言えば、

幸福である間は

だめなのである。
幸福である限り、

人間は

思い上がり、自信を持ち続け、そのような幸福や自信がいつくずれるか、

と思ってはらはらしている。
いや、はらはらする人はまだいい。
たいていの人が、

自分は「幸福にふさわしい人間」

とさえ思っているのである。
この幸福は

自分の努力によって手に入れたもので、

自分の心がけが悪くない限り、

まず運が狂うことはない、と思う。
その点、パウロは甘くない。
パウロのものの言い方は経験によっている。
世の中は、

決して正当に報いられたりしてはいないこと、

火傷をしなければ普通人間は分からないものだろうから、

私たちは火傷の後に、

人生のほんとうの意味を理解して、

強い人間になる、ということなのである。

人生の苦しみを深く味わった人が

到達できる

人生のほんとうの意味がある。


人生のほんとうの意味は

ものに満たされることでもなく

お金で満たされるだけでもなく

火傷を負ってみてやっと分かるというのだ。


痛い思いや

苦しい思いの中で分かる

ほんとうの幸福。


日常の大切さは

失いそうになってみないと

事実

理解することは難しい。

『心に迫るパウロの言葉』

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