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そうだ、『ハイキュー!!』を読もう。―人はみな “ヒナタ”を求め 生きている―

0.『ハイキュー!!』とは?

みなさんは『ハイキュー!!』という少年漫画をご存じですか?

週刊少年ジャンプで2012年から連載されているバレーボール(排球)を題材とした古舘春一さんの漫画です。

▽あらすじ
主人公である日向翔陽は小学生のころに見た「小さな巨人」に憧れ、バレーボールを始めます。圧倒的な身体能力を持ちながらも環境に恵まれず、不遇の中学時代を送った日向でしたが、進学した高校で天才セッターの影山飛雄と出会い、バレーボールにのめりこんでいきます。

いわゆる「王道スポ根漫画」ですが、「スポ根」にも「バレーボール」にも縁のない私も、『ハイキュー!!』にはドはまり…!

今回はそんな『ハイキュー!!』の魅力を3つのポイントに絞ってお伝えします!


1.「バレーボール」という競技の魅力 ―ボールを落としてはいけない 持ってもいけない―

“「バレーボール(排球)」 コート中央のネットを挟んで2チームでボールを打ち合う ボールを落としてはいけない 持ってもいけない3度のボレーで攻撃へと“繋ぐ”スポーツである“(ハイキュー!!第1話より引用)

バレーボールはスポーツ少年団や部活動でもメジャーな競技。世界大会はテレビ中継されることも多く、知名度が高いスポーツのため、詳細なルールが分からなくても、大まかな試合の流れが分かる方が多いのではないでしょうか?

最大の特徴は「ボールを落としてはいけない 持ってもいけない」ということ。一瞬で点数が決まる、白黒がはっきりしたスポーツです。

また、1つのコートを6人で守り、それぞれのポジションがあることも特徴としてあげられます(9人制のバレーボールもありますが、本作品は6人制バレーボール)。アタッカーが攻撃するためにトスを上げる「セッター」、攻撃の主軸となり、エースを担う選手が多い「ウィングスパイカー」、ブロックや速攻、囮(おとり)を担う「ミドルブロッカー」、一切の攻撃が禁止されている守備専門選手「リベロ」など。

一瞬で点数が決まるがゆえに、1つ1つのポジションに役割があり、ストーリーがあります。互いが互いを補い合うからこそ、獲った1点に感動があるのです!


2.キャラクターの魅力 ―日向と影山―

キャラクターもまた魅力的です。たくさんのキャラクターの中で今回は主人公・日向翔陽とそのライバルである影山飛雄について紹介します。

 ▽日向 翔陽(ひなた しょうよう)
[身長:162.8㎝ 体重:51kg(高校1年生4月時点)ポジション:ミドルブロッカー]

体格には恵まれませんが、圧倒的な身体能力の持ち主。

男子バレーボール部のない中学校で3年間を過ごし、助っ人を寄せ集めて出場した初の公式戦では、影山がセッターをつとめる強豪・北川第一中学と対戦し、惨敗してしまいます。

影山へのリベンジを誓い、憧れの「小さな巨人」の母校・烏野高校に進学しますが、なんとそこでリベンジを誓った影山と再会し、同じチームに。影山にトスを上げてもらうことで、これまで生かしきれなった身体能力を存分に生かすことができるようになり、一層バレーボールにのめりこんでいきます。

性格は、前向きで貪欲。どんな状況でも成長や勝利のために何ができるかを考えています。日向のまっすぐな姿勢はコミックス中で「直射日光」と比喩されるほどで、周囲のキャラクターを巻き込む太陽のようなパワーを持っています。また読者にも、前を向いて進む勇気をくれる存在です。


▽影山 飛雄(かげやま とびお)
[身長:180.6㎝ 体重:66.3kg(高校1年生4月時点)ポジション:セッター]

強豪校である「北川第一中学」でセッターをつとめた才能の持ち主です。

北川第一中学の生徒が多く進学する強豪「青葉城西高校」や県No.1スパイカーが所属する「白鳥沢学園高校」には進学せず(厳密にいうと白鳥沢には不合格)、全国大会へ導いた名将の復帰が噂された烏野高校に進学。

体格にも恵まれ、セッターとしての才能にも恵まれた影山飛雄の異名は「コート上の王様」。彼の独善的なプレーを揶揄してチームメイトがつけたのです。中学時代の県大会予選では、その自己中心的なトスをついにチームメイトから拒絶されてしまうというショッキングな経験も。しかし、この類まれなる才能がゆえの挫折は日向との出会いによって克服されていくのです。

独善的でプライドが高い彼ですが、バレーボールに関しては素直で努力を怠りません。才能におごることなく、常に成長し続けようとする貪欲さは日向と共通しています。


日向・影山の他にも、日向と同級生で同じポジションであるクレバーでクールな月島蛍や、影山の中学時代の先輩で強豪青葉城西を率いるセッター・及川徹など、魅力的なキャラクターがたくさん登場します。

また、それぞれのチームでカラーやコンセプトが異なるため、「推しキャラ」だけでなく「推しチーム」を考えて楽しむことができるのも『ハイキュー!!』の魅力です!


3.言葉の魅力 ―リフレーミングの天才、日向―(ネタバレ含む

「リフレーミング」とは「ある枠組み(フレーム)で捉えられている物事を枠組みをはずして、違う枠組みで見ること」です。

例えば、友達と喧嘩をしたときに「衝突してしまった」と捉えるか、「お互いの気持ちを整理するきっかけとなった」と捉えるかで、違った心情となりますよね?つまり同じものごとでも、見る角度によって捉え方を変えられるということです。

主人公・日向はものごとを良く捉える天才!
ここでは日向のリフレーミングが印象的なセリフをいくつかピックアップします。


▽「おれにはちゃんとトス上がるから関係ない」(「第6話 中学のハナシ」より)

同じ高校に進学した日向と影山は、初日から仲間割れし、主将から入部届を突き返されてしまいます。入部の条件は「互いがチームメイトだと自覚すること」。そのために他の新入部員とゲームをすることになった2人でしたが、ゲーム中、相手チームで同級生の月島に、影山は中学時代の挫折を指摘されてしまいます。そこで日向が放った言葉です。

影山にとって、中学時代にチームメイトから拒絶された経験は苦い挫折でしたが、克服していくきっかけの一言となったはず。

▽「2mなんて一番最高にMAXスゲェ才能だろ!!」(「第217話 “楽”」より)

宮城県1年生選抜強化合宿に選抜されず、ボール拾いとして練習に潜入した日向は、体育館の片隅で浮かない顔をする角川学園高校・百沢雄大を見つけます。百沢は202㎝の長身を誇りながらも、経験値の低さから練習に後れを取り、弱音を吐きます。「お前(日向)が選ばれれば良かった」「俺はデカいだけだ」と。そこで日向が百沢にかけた言葉です。

バレーボールという競技において「長身」とは大きなアドバンテージで、努力では得られない才能です。この場面で百沢は自分ができないことにフォーカスしすぎて自信を失ってしまいますが、日向の言葉で百沢は自信を取り戻し、前向きに軌道修正します。

人は自分の長所に鈍感で、時にその長所を見失ってしまいがちです。その人にしかない長所を大切にすることが、目の前の壁を乗り越えるカギとなるとを教えてくれる一言です。


▽「“王様”ってなんでダメなの?」(「第224話 返還」より)

春高出場を控える影山は全日本ユース強化合宿に召集されます。実力のある選手に囲まれた練習を経て烏野高校へ戻り練習試合に挑みますが、強化合宿の影響か、チームメイトへ高圧的な態度をとってしまいます。「“王様”に逆戻り」と煽られてしまった影山に対して日向が放った一言です。

おそらく影山は自分が「王様」と呼ばれることに対し、周囲が思うよりもコンプレックスを持っていると思います。しかし、日向は「王様」と呼ばれてしまう影山のパーソナリティを否定せず、自分の意見を述べるのです。

個性を無理に集団に合わせるのではなく、個性として尊重することの重要性に気付かせててくれる一言です。

今回は日向の言葉に着目しましたが、『ハイキュー!!』は「言葉」にフォーカスした展示会が行われるほどたくさんの心を打つセリフが登場します。
言葉に注目して読んでも面白い作品です!



4.さいごに

ここまで3つのトピックに分けて『ハイキュー!!』の魅力について語りましたが、皆さんに伝わったでしょうか?

「バレーボール」という競技を通して主人公・日向やその仲間たちは私たちに様々なことを教えてくれます。
特に今回本記事で書いた主人公・日向翔陽の存在や言葉は、「孤高の天才」だった影山飛雄を「本当の天才」にする力を持っていたのではないかと思います。

私たちは影山にとっての日向のような存在をいつでも探しているのではないでしょうか。自分の良さを見つけてくれて、より最強の自分にしてくれる存在を。日なたに導いてくれる存在を。

前を向きたい人、心機一転したい人におすすめの作品、『ハイキュー!!』。
ぜひ読んでみてください!


5.参考

・古舘春一『ハイキュー!!コンプリートガイドブック 排球本』(集英社)
・古舘春一『ハイキュー!!』1巻~42巻(集英社)
・Wikipedia「リフレーミング」

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