#15 アメリカで言葉の壁を感じながら
起きたくないし、眠い。だけど仕方なく起きることにした、アラームがうるさいから。あぁ、学校行きたくない、学校に行くのが面倒だなって思いながら学校に行く支度をする。簡単にごはんとみそ汁を食べて、学校に向かった。
一時間目の授業はまた小テストがあった。小テストのことをこっちではクイズって言うみたい。だから私はクイズを受けた。昨夜勉強したからか、意外と早く終わったので暇な時間が二十分程あった。周りを見渡すとまだ一生懸命頑張ってる生徒もいたけど、もう終わって机の上で爆睡している生徒もいた。私も眠かったので、机に顔を伏せて寝た。チャイムが鳴り響き、教室を後にした。
廊下で溢れている生徒の間を縫って、体育館に向かった。廊下で歩いている時に、生徒が私の着ている服に注目して、目を凝らしているのに気が付いた。なんだろって思ってその生徒の顔を観察すると、なんか少し面白そうに笑っているような、でもなんか謎を解いている探偵の様に何か考えているようにも見える。私は私の服を見てみた。私はなるほどね、と思った。私が着ているパーカーに英語でなんか書かれている。それを読んで、解読しようとしているみたいだった。日本にいた時は英語は言葉ってよりも記号やデザインだと思っていたから、服に英語で何か書かれていても私は気にも留めなかった。。。
そういえば一回だけあった。小学生の時に私が着ていたジャケットにI am hungryと書かれていた。私は英語が分からなかったので、特になんて書いてあるのか気にしないでいたが、秀才の友達が私のジャケットを見て、馬鹿にして笑ってきた。最初はなんで笑っているのか皆目見当つかなかったが、「私は腹減ったって書いてあるよ」って友達が教えてくれた。「へー、そうなんだ!」って言って平静を装ったけど、家に帰ったらお母さんに「この服で友達に笑われた、もう着たくない」と言って、ジャケットを脱いだ。
また、同じ現象が起きている。私は腹減った事件を思い出しながら、今何が起きているか察知して、恥ずかしくなって、顔が真っ赤になった。足早に廊下を歩いて、その少年の横を通り過ぎた。もう訳の分からない英語が書いてある服は買わないし、着ないと心に決めた。家に帰ってから辞書を使ってそのパーカーに何と英語で書かれているか調べたけど、意味不明で理解ができなかった。そりゃ、あの少年も不思議そうな顔をして私の顔を見るよねと渋々納得せざるを得なかった。
迷路の様な校舎の廊下を進み、体育館のロッカーで着替えて、体育館に向かう。荷物をロッカーに放り込んで、体育館に向かった。いつも話しかけてくるウィリアムが”Hi!”って言ってきた。だから私も”Hi!”って返事した。ウィリアムが、私の指に絆創膏を巻き付けているのを見つけて、指さしながら「これどうしたの?」って聞いてきた、恐らく。だから、私はドライヤーを使っている時に火傷したって一生懸命伝えようとした。通じたかは分からない。幸いなことに、あのドライヤーはこっちでもドライヤーと言うみたいだったから、多分通じたように見える。「何でドライヤーで火傷をしているんだ、ハハハッ、」って笑われた。アメリカ育ちのウィリアムにはもしかしたら分かりずらいかもしれないが、最近買ったドライヤーが強力で、重くて、熱い。だから、私は風呂上りに髪を乾かしていたら、火傷をしてしまった。ウィリアムが話しかけてくれるのは嬉しいけど、正直何を言っているかほとんど分からない。分かるのは一割程だと思う。だから、少し疲れる。ネイティブのイングリッシュって速いし、よく分かんない難しい単語使ってる。
今日もまた、バトミントンだった。ソフィアは今日は体育館にいた。ソフィアはちゃんとしっかりとメイクをしている。ソフィアとウィリアムと私がグループメンバーになって、他チームとバトミントンの試合をした。ソフィアは少し運動が苦手なのか、バトミントンのラリーを続けるのに少し悪戦苦闘しているみたいだった。でもソフィアは楽しそうにバトミントンをしていた。今日また、休もうよ、って言われるかと思ったけど、言われなくて良かった。ウィリアムは相変わらず大袈裟に喜んだり、悲しんだり、悔しがったりしながらバトミントンをしていた。私も少しつられて、一緒に大袈裟にリアクションを取っていた。
体育の授業が終わるとソフィアと一緒にカフェテリアに向かった。今日は弁当を持参しておらず、初めて学校のカフェテリアランチを食べてみることにした。飲み物はパックに入った牛乳、巨大サイズのピザ一切れ、ポテトだった。ランチは順番に並んで、バイキングみたいに自分で選択できる。だけど、ランチを選択できると言っても、ピザ、ハンバーガー、ポテト、クッキー、林檎ぐらいしかメニューはない。ランチは2.5ドルだった。とてつもなく美味しいという味ではないが、普通においしかった。でもこれを毎日食べると体重が増えそうだなとも思った。ソフィア、仲良くしてくれているベトナムの女の子、あと名前が分からない人達とランチを食べた。なんか皆が何かについて喋って盛り上がっているけど、何話しているか分からないから、私は黙ってた。私は何について話しているのか知りたくて、集中して会話を聞いてみた。知ってる単語もたまに飛び交うけど、何について話しているのかは結局分からなかった。最後は諦めて、ボケーとしていた。
三時間目のESLの時間には一応英語以外の言語で話すことは禁止というルールがある。先生が、ESLの目的は英語を上達することだから英語以外の言語で話さないでってこないだ言っていた。先生はたまに”Only English”って言って、英語以外の言語で話すことを注意する。でも結局、クラスメイ達は英語以外の言語で話している。ESLの先生は母国語の英語とスペイン語を話せる。だから、先生もたまに母国語がスペインのメキシコやエルサルバドルの生徒とスペイン語で話して、ベトナム人同士はベトナム語で話している。だから、中国人の李君と、私だけが取り残される。私は中国語が分からないし、李君は日本語が分からない。取り残された者同士、私達はつたない英語で何か適当に話したり、絵を描いて見せ合ったりする。絵って便利だなってつくづく思う。絵は言語が必要ない。ただ描いた絵を見せるだけで笑えたり、楽しくなったりする。あとは、英語で説明できない時は絵を描いて説明することだってできる。
李君はたまに、他男子にからかわれてしまっている時がある。そうすると、李君は何か言い返したいけど、英語じゃ上手く伝えられない。だから、何を言っているのかは分からないけど、中国語で何か罵ってる。言葉で思いとか、考えを伝えられないって苦しいことだなって最近思う。なんかもどかしい。もっと、すらすら話せたら、楽しいのにな、すっきりするだろうなって思うと悲しい気持ちになる。言葉って人間関係を築くのにすごい大切なんだなって、言葉を失って気が付いた。
四時間目の英語もESLの生徒たちと一緒に今日も簡単な文法を学んだ。
放課後はベッド専門店に行ってベッドを見た。接客をしてくれた人は私に英語が通じないから、嫌そうな顔をしていた。だから私は腹が立った。英語は分からなくても、顔の表情は読み取れる。あー、この人、私が英語分からないから、もどかしくて、イラついてるんだろうなって思った。私の英語力の無さをただただ痛感させられた。結局、ベッドは購入しなかった。
その後、スーパーでこないだソフィアが私の爪に塗ったマニュキアを落としたくて、除光液を購入した。全ての商品が英語で書かれているから、商品を探すのでさえ一苦労である。面倒極まりない。スーパーのレジで体育の授業で同じクラスの背の高い男の子がレジを打っていた。顔は知っているが、名前もしらなければ、話したこともない。私のことを知っているかも分からない。だから話しかけないで、知らないふりをした。アメリカのスーパーは広い。びっくりする。カートもやけに大きい。大きいカートを押して、大量の食品をカートの中に放り込んでいるおばさんがいた。牛乳は小さいサイズもあるが、巨大サイズのミルクも売っている。四リットルぐらいあるのではないかというサイズの牛乳が陳列されている。しかも様々な種類がある。ビタミンが入っているとか、脂肪何パーセントだとか、色々記載されている。試食品のクッキーが置いてあったので食べてみたがとても甘かった。あと、ケーキが売っているが、これがびっくりするぐらいカラフル。これでもかっていうぐらいに色んな色をふんだんに使っている。スパイダーマンとかスポンジボブなどのキャラクターケーキも販売されていた。
レジの人はなぜかいつも”How are you?”って聞いてくる。だから”I am good” とか言ってみる。んで、たまに”How are you?”って聞くと、”Good”とかなんとか言ってる。皆、気さくだった。日本のレジで「ご機嫌いかが?」なんて聞かれたことはない。レジ係りじゃなくて、友達とか、先生、家族にもなかなか聞かれなかったと思う。そういう文化なんだと思うけど、気さくだなって思う。たまに少し面倒に思うこともあるけど、聞いてくれるのは嬉しいと思う。たまにすごい馴れ馴れしいおばちゃんとかは、”Hi Sweetie” とか”Hi cutie” とか言ってくる。おばさんの顔を見ても別に悪気はないように見える。ただただ、馴れ馴れしいおばちゃんなんだなって思った。だから私はアメリカの明るくて、何故かやけに馴れ馴れしいおばちゃんに「ハニー」と呼ばれることに少し最初は抵抗があったが、受け入れることにした。でもそういう風に呼ばれることが嫌な女性もいるから、気を付けたほうがいいらしい。そりゃそうだよね、大人の女性をハニーって呼ぶのは親しい関係でない限り避けた方がベターな気がする。親しくても嫌な人は嫌だろうし。