五平

人事をはじめとした書籍のブックレビューを中心に書いています。

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最近の記事

「企業の賃金決定に関する研究」で賃金決定のリアルを味わってみる

はじめに 最近は最低賃金引上げや「新卒でも年収1000万円!」をはじめ、格差是正や人手不足解消など様々な面から「賃上げ」のトレンドが加速している感があります。 そんな中見つけたのが「企業の賃金決定に関する研究」。「研究」とあるだけあって、なかなかかっちりしています。ビジネス本や新書みたいなキャッチーな帯があるわけでもなく、愚直に「研究」。これはこれで、大事な姿勢ですね。 さて、研究というと、難解で複雑(要はとっつきにくい)をイメージしてしまいますが、そんなことはなく、企業へ

    • Z世代化する社会~テーマパーク化する大学の中で生きる若者~

      今回は、舟津昌平氏の「Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち」よりピックアップします。 「Z世代」というワードが知られるようになってから久しいですが、タイトルを見ると「社会」がZ世代化している、ということです。筆者の舟津昌平氏(元京都産業大学准教授)が大学生への取材や大学における講義を通じて得たことも踏まえながら書かれています。 なお、最近YouTubeのPIVOTチャンネルにも本書を取り上げた動画がアップされました。 「不安ビジネス」という動画のサムネイルが不安

      • 「早期退職時代のサバイバル術」~都市史からの居場所も考えられる良書~

        今回読んだ本は小林祐児氏の「早期退職時代のサバイバル術」です。小林さんは最近書店でよく見かける「罰ゲーム化する管理職」の著者の方です。 この書籍、「早期退職」と聞いて、FIREや老後のマネープランの本なのかなと勝手に想像していたのですが(私だけ?)雇用制度、賃金制度について書かれた本でした。 働かない問題~WIndows2000~ 本書のメインは「働かないおじさん」問題です。窓際で年収2000万という「Windows2000」というワードは今でも頻繁に聞きますが、その背

        • 等級制度の考えと違いを学べる!「等級制度の基本書」

          以前、「人事評価の教科書」を紹介しました。 人事制度はおおよそ「等級」「評価」「報酬」の3つからなる、がいわば王道とも言えますが、前回の評価に引き続き、今回は等級制度についての本です。同じく労務行政から出版されています。 等級制度の違い さすが「基本書」というだけあり、等級制度として主流となっている 職能資格制度 職務等級制度 役割等級制度 について紹介されています。本記事でもここにフォーカスしていきます。 職能資格制度 職能資格制度は、高度経済成長期から存

        • 「企業の賃金決定に関する研究」で賃金決定のリアルを味わってみる

        • Z世代化する社会~テーマパーク化する大学の中で生きる若者~

        • 「早期退職時代のサバイバル術」~都市史からの居場所も考えられる良書~

        • 等級制度の考えと違いを学べる!「等級制度の基本書」

          持ち味を活かし、決断経験を沢山しよう「強みを活かす」

          今日は「活躍する人のセオリー 強みを活かす」という書籍を読みました。 こちらは、人事界では有名人、「ソヤマン」ことサイバーエージェントの曽山哲人さんの書籍です。 ところで、この「強み」って…坂井風太氏の動画に出てくる「持ち味」というキーワードと近しくありませんか(※坂井さんのまわし者ではありません) そのあたりも意識しながら読み進めてみました。 強み≒持ち味を活かしていくにはどうしたらいいか。2017年の書籍ですが、「強み」以外にも学びになることがたくさんありましたので、

          持ち味を活かし、決断経験を沢山しよう「強みを活かす」

          レールを漫然と歩くのではなく、目の前のことに情熱を捧げよう。「自分の中に毒を持て」

          このGWの自分のテーマ「坂井風太氏の推薦書を読む」、今回は岡本太郎氏の「自分の中に毒を持て」です。以下に坂井さんのリンクがあります。 「自分の中に毒を持て」は初版1988年だそうで、私が今回読んだものは2002年の新装版、坂井さんが薦めているものは2017年版のようですね。 敵は己自身。危険な道をとれ 人は気づけば、レールに乗った人生を歩んでしまう。この惰性的な生き方に対して岡本さんは「ぼくは、ほんとうにうんざりする」と述べています。この閉鎖性は、江戸時代の封建制が「長

          レールを漫然と歩くのではなく、目の前のことに情熱を捧げよう。「自分の中に毒を持て」

          「人事評価の教科書」から「年功主義とは何か」を学ぶ

          ゴールデンウィークの課題図書として「人事評価の教科書」を読みました。 こちら、労政時報でおなじみの労務行政さんの書籍です。このシリーズ、人事パーソンの方ならどこかで目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。 人事評価って、設計手法を扱った本はありますが、以前からメジャーな「情意考課」「コンピテンシー」といった言葉をわかりやすく説明してくれる本ってなかなかないような気がしています。 もちろん、人事制度は各社各様ですし、専門書を読めば理解できることもあるのでしょうが、適度な

          「人事評価の教科書」から「年功主義とは何か」を学ぶ

          「天才をあきらめた」とは、努力の本である。

          坂井風太氏が紹介する本を読むシリーズ。 今回は山里亮太さん(山ちゃん)の「天才はあきらめた」を読みました。私が山ちゃんを知ったのは「いきなり!黄金伝説」のケーキを食べまくる企画で、まだ「山里」としか紹介されていなかった記憶… そんな山ちゃんですが、ものすごく努力の人なのだな、とこの本を経て初めて知ります。 お母さんのほめ方 努力の話の前に…冒頭で幼少期のエピソードが出てくるのですが、このお母さんがすごい。 怒られていて「反省するふり上手いねえ」 一番大きい服が入ら

          「天才をあきらめた」とは、努力の本である。

          働くひとのキャリア焦燥感~漠然とした焦りはどのように生まれるのか~

          仕事を続けていくうちに、「このままでいいのか」という、得体の知れない焦りを抱くことがあるのではないでしょうか。 本書はその焦りを「キャリア焦燥感」と表現し、主に若年就業者を対象にしたアンケートをベースに多角的に分析しています。 こちらの本は坂井風太氏が「組織と評価に悩む若手に薦める6冊」で紹介していた本で、GWの課題図書として読みました(若手と言える歳ではないのですがそこはスルーで…)。 焦燥感の要因とは この焦燥感とやらはどこから来るのでしょうか。本書では主に4つから

          働くひとのキャリア焦燥感~漠然とした焦りはどのように生まれるのか~

          「組織開発の探究」に見る、組織開発の在り方

          最近坂井風太氏の動画にはまっている、という件を触れましたが、その延長線上で「組織開発の探究」という本を読むことにしました。 全400ページは、これまで組織開発に詳しくなかった者としては想像以上に重厚でした…。 本書は 組織開発とは? 組織開発の歴史 組織開発の事例紹介、これから を中心にして構成されています。ここでは、組織開発とは?に触れてみます。 組織開発とは 組織開発、聞き馴染みがある方もいらっしゃるでしょうが、いまいち漠然としない方もいらっしゃるはずです。

          「組織開発の探究」に見る、組織開発の在り方

          「他人を見下す若者たち」から学ぶ、仮想的有能感と喜怒哀楽の変化

          常にキャッチーなワードでZ世代や組織開発を語る坂井風太氏の動画に出てくる「仮想的有能感」という言葉。 動画の13分頃から、「最近の若者は~」のくだりで「仮想的有能感」というワードが出てきています。 このワードが紹介されている「他人を見下す若者たち」という書籍を今回読んでみました。2006年の本ですが、現在に通ずるものが非常に多い本です。 仮想的有能感とは 動画でも紹介されていますが、仮想的有能感とは自分は人より偉い、と思うこと、そして本当は有能ではないにもかかわらず、と

          「他人を見下す若者たち」から学ぶ、仮想的有能感と喜怒哀楽の変化

          〈坂井風太氏推薦:読んでみた〉マインドセット「やればできる!」の研究

          坂井風太さんの動画で出てきたワード「成長マインドセット」。「成長」と「マインドセット」。わかるような、わからないような… ※動画の20分頃から出てきています。 というわけで深掘りしてみよう!と元となる書籍を読んでみました。 ベストセラーゆえに要約や紹介記事はたくさんありますので(便利な時代ですね…)、そちらも参照していただければと思います。 自分なりで一言で表すと…「才能」VS「努力」論争において「努力」の大切さを表した本です。 本書では「硬直マインドセット」「しなや

          〈坂井風太氏推薦:読んでみた〉マインドセット「やればできる!」の研究

          〈読んでみた〉大企業ハック大全

          ONEJAPAN「大企業ハック大全」を読みました。 大企業かどうかにかかわらず、皆さん会社に対する閉塞感やもやもやを感じることはないでしょうか。 そんな状況下を潜り抜けよう、変えていこうという人たちが実践した「ハック」が書かれている一冊です。 印象に残ったことを書き出してみます。 大企業の本質 ONEJAPAN内で議論して出たことに「資産は豊富であるが、社内調整コストがかかる」とあります。 大企業は資産を豊富に持っていることが強みです。言い換えれば、調整コストを減らしさ

          〈読んでみた〉大企業ハック大全

          駆け出しマネジャーの成長論

          近頃マネジメントを意識することが多くなってきた中で、諸先輩方はどのように乗り越えてきたのかを知りたく、読んでみました。 完全にマネジメントのみのマネジャーは2.7% 逆に言うと、97%はプレイングマネジャーということですね。なんとなくそうだろうなとは想像していましたがここまでだとは。 CC爆弾 本書で一番キャッチーなワードでした。 「とりあえず上司をCCに入れておこう」経験があるのではないでしょうか。部下の立場から見たら「報連相大事だし、共有しないと怒られるし入れてお

          駆け出しマネジャーの成長論

          組織の〈重さ〉

          最近はまっている坂井風太氏のYouTubeで紹介されていた、「組織の〈重さ〉」という本を読みました。 とりわけ大企業ですと根回しなどから組織の重さを感じることがあると思います。 本書では、その「重さ」は大きく4つからきている、としています。 1.過剰な「和」志向 「和を以て貴しと為す」ですね。まさに日本人の美徳ともいわれています。2.内向きの合意形成 1.に関連して競合他社や顧客でなく、社内の合意形成(組織内調整)を重んじてしまっている。 3.組織内フリーライダー 「社内評

          組織の〈重さ〉

          社労士試験を取得した後の周囲の反応

          はじめに前回、勤務社労士登録に至るまでの話をしました。今回は、合格してからの周囲の反応や変化などに触れたいと思います。 1.予備校から合格者インタビューの依頼 こちらはなんとなく、想像がつくかと思います。各予備校のホームページにある一連の「合格体験記」の類への掲載依頼があります。内容は、「合格者喜びの声」「一問一答形式のインタビュー」「取得後のキャリア」など。媒体もホームページ、チラシ、動画など様々ですよね。実際に応えるかどうかはともかく、学習の動機や苦労した箇所を自分な

          社労士試験を取得した後の周囲の反応