手のひらに広がる世界
本でも漫画でも、手のひらサイズのその中に世界が広がっている。
ページをめくってその世界を旅する。
何度読んでも面白いと思うのは、何度同じ旅行先に行っても楽しめることとなんだか似ている。
今まで気づかなかったような小さな一コマが妙に刺さったり、以前とは違うセリフが心に響いたり。
何度読んでも「この作品と出会えてよかった・・・!」とじーんと感じ入るものはたくさんあるけれど、その中からひとつ引っ張り出してみようと思う。
『今日の恋のダイヤ』(草川為、白泉社、2014年)
草川先生の作品に出会ったのは『世界で一番悪い魔女』(草川為、白泉社、2015年)がきっかけ。登場人物が繰り広げる軽妙な会話がなんとも楽しくて、すっかり虜になってしまった。マンガアプリでチマチマ読んで、最終巻はデジタルで購入した。手元に残したい本は紙で揃えたい派なので、そのうちチマチマ集め始めると思う。
そんなこんなで、草川先生の作品を少しずつ読んでいる中でこの作品に出会った。
4人の恋模様が連作オムニバス形式で描かれていて、この4話の絶妙な重なり合いがとても・・・なんと言えばいいのか。ぴったりくる表現が見つからない。とにかく、とても”いい”のだ。私は何度読んでも鳥肌が立ってしまう。
あらすじに関しては公式さんの説明が至極わかりやすく魅力的なので、引用しておく。
この作品でも軽妙な会話がそこかしこで繰り広げられていて、それにクスッと笑っている間に4人の心情にぐいぐい引っ張られて、気づいたら作品の世界にドボンと浸かっている。
言葉選び、表情、コマ割り・・・とにかく演出力が素晴らしくて、ぐいぐい引き込まれてしまう。登場人物がみんな人間らしくて、愛おしくなってしまう。
最後のページをめくる頃にはきっと、繋いできた勇気のバトンが読者の手に渡される。恋をしていてもしていなくても、自分という人間が少し肯定されたような、そんな気持ちになれる。
タイトルに「恋」とあるけれど、確かに恋が描かれているけれど、それ以上に人間模様が色濃く描かれていて、恋愛系の漫画はあまり読まないな〜という人でもきっと読みやすい。
草川先生の作品でもうひとつ「すごく好きだな」と思う作品があって、『迷路庭園に死を』という作品なんだけれども。
コミックス未収録の読切で、これも読んだ後になんだか晴れやかな気持ちなる素敵な世界。
私はどうも、晴れやかな気持ちになる作品が好きらしい。
作品を旅して、きっと読んでいる私たちにもいろんな気持ちが生まれる。
その先に「ああよかった」ってホッと微笑みたくなるような、そんな作品は、きっと何度でも旅をしたくなる。
それから大きな拍手を送るんだ。
「こんなに素敵な世界を創り出してくれてありがとう」と。
えりぴ
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