#009 日本4大ビールメーカーはどうやって生まれた?
こんにちは。社会科コンテンツクリエイターのモチオカです。
このnoteは、世の中、日本や世界をテーマに、私が面白いと思ったことや疑問に思ったことについて話すnoteです。
今回は、日本のビール産業についてお話ししたいと思います。皆さんもご存知の、日本の4大ビールメーカー、つまりキリン、アサヒ、サッポロ、サントリーについて、それぞれがどう誕生したのかを、私が工場見学などで学んだことも踏まえて説明していきます。
開港→ビール輸入
まず、日本におけるビール産業の始まりは江戸時代末期、幕末の頃にさかのぼります。ペリーが来航し、鎖国が終わって日本が開国すると、1859年に横浜港が開港されました。これに伴って、居留地に住む外国人向けにビールが消費されるようになります。居留地というのは、外国人が住むことを許された特定のエリアのことで、当時の日本人はまだビールを飲んでいませんでした。
横浜港が開かれた当初は、ビールは輸入されていましたが、次第に国内でビールを作ろうとする動きが出てきます。そして、1869年に日本初のビール醸造所である「ジャパン・ヨコハマ・ブルワリー」が横浜に設立されました。この醸造所は外国人が経営しており、後にキリンビールの前身となります。
ビールの国内製造を目指す
当初は外国人向けだったビールですが、次第に日本人もビールの味を覚え、国内でもビールの需要が高まっていきます。これに応じて、1876年に北海道に「開拓使麦酒醸造所」が設立されました。これは後のサッポロビールになります。
北海道が選ばれた理由は、大麦やホップといったビールの原料が豊富に採れ、さらにビールを発酵させる際に必要な氷も手に入れやすかったからです。この「開拓使麦酒醸造所」は1887年に「札幌麦酒会社」に改称されました。
同じ時期に、東京でもビール醸造が進み、1887年には「日本麦酒醸造会社」が設立されました。これは今のエビスビールの前身です。ちなみに、現在エビスビールはサッポロのブランドの一部になっています。また、1889年には大阪で「大阪麦酒会社」が設立され、これが後のアサヒビールとなります。
こうして、1880年代にはキリン、サッポロ、エビス、アサヒの前身となるビール会社が揃いました。しかし、サントリーはまだこの時点では存在していません。サントリーのビール事業は1963年から本格的に始まりますが、これについては後ほど触れます。
ビール企業の淘汰・整理
1888年、キリンビールの前身となる会社が「キリンビール」を販売し、1890年には「日本麦酒醸造会社」が「恵比寿ビール」を販売。さらに1892年には「大阪麦酒会社」が「アサヒビール」を販売します。こうして各社が競争し合い、日本のビール市場が次第に成長していきます。
1901年には、ビールに税金が課されるという大きな出来事が起こりました。それまで税金がかかっていなかったビールに重税がかけられたことで、ビール会社の経営は一気に苦しくなります。
この状況を打開するため、1906年にキリンを除く札幌、恵比寿、アサヒの3社が合併し、「大日本麦酒株式会社」が誕生しました。この合併により、一時期サッポロとアサヒは同じ会社として存在していたのです。
一方、キリンは1907年に「麒麟麦酒株式会社」となり、三菱グループの傘下に入りました。
こうして日本にはキリンと大日本麦酒という2大ビールメーカーが生まれました。
ビールの海外展開
その後、第一次世界大戦が勃発し、日本のビール産業にも大きな変化が訪れます。日本がドイツから中国の青島(チンタオ)を占領し、その地でドイツが作っていた「チンタオビール」の経営権を大日本麦酒が取得しました。
また、戦争によってヨーロッパからのビール供給が途絶えたため、日本のビールはアジア市場に輸出されるようになり、ビールの海外展開が進んでいきます。
戦時中
しかし、戦時中の1943年には、ビールの銘柄商標が廃止され、名称が「麦酒(むぎさけ)」に統一されました。各ブランドが一時的に消滅してしまったのです。
戦争の影響でビールの生産量も激減しました。
4大ビールメーカーの成立
1949年には販売が再開されます。この時、大きな出来事が起こりました。GHQの占領下で行われた「財閥解体」により、大日本麦酒が「アサヒビール」と「日本麦酒(後のサッポロビール)」に分割されたのです。
そしてようやく、サントリーが1963年にビール事業に再参入します。サントリーはもともとワインの製造を中心にしていましたが、ビール市場にも本格的に参入することになりました。
こうして、1960年代までにキリン、アサヒ、サッポロ、サントリーの4大ビールメーカーが成立したのです。
以上、日本の4大ビールメーカーがどのように誕生したか、その歴史をお話ししました。次回は、これら4社の具体的な違いについてお話ししたいと思います。