親から何も言われずに、私はきょうだい児になった。
私は、兄の障害を知らなかった。
まだたかが六歳くらいの私は、食事中、何の気なしに言ってしまった。
「私のお兄ちゃんって、どこか悪いの?」と。
その瞬間。
食卓が凍りつき、父親からものすごい剣幕で言われた。
「そんなこと言うな」と。
その顔があまりに怖くて、わけもわからず、トイレの中でわんわん泣いた。
あの日、とんでもないことを聞いてしまったことだけは、よくわかった。
*
それからも、何度か母にこっそり聞いたことがある。
でも、決まってはぐらかされた。
聞いたところで、教えてほしいことはなにもわからなかった。
何かあるのはわかっていたのに。
いま思えば、私の両親は障害を受け止めるレベルになかったし、妹にどう言うかなんて、もっての他だったんだろう。
みんな腫れ物に触るかのように、私の前では兄の障害の話をしなかった。
*
ちゃんと兄のことを親と話せるようになったのは、私が大学生になってから。
でも、やっぱり。
早く教えてほしかった。
わけのわからないお兄ちゃん、じゃなくて、
障害があるお兄ちゃん、って
はっきり教えてほしかった。
そしたら、もっと、
優しくできたかもしれない。
こんなわけわかんない奴、死んでしまえ!!!と何百回と思うことはなかったかもしれない。(私の性格の悪さ。。笑)
もっと別の悩み方をしていたかもしれない。
わからないのが、一番辛かった、
私にとっては。
人それぞれかもしれないけど、
ちゃんと障害について話し合える家族であれたらと思います。