見出し画像

「優しいキャラがいい」という言葉の裏にある本音

せっかく桃源郷がそこにあったとしても番犬にケルベロスがいては近寄れない。

※特定のキャラ属性へのネガティブな感情があります。

「優しいだけのキャラがいい」

女性向け、特に乙女ゲーでよく聞く意見。
「優しそうに見せかけて実はヤンデレとかドSははいらない」ともセットで言われている。

実際、属性として真っ先に「優しい」という言葉が浮かぶ男性キャラは不人気なのはよく知られています。
逆に人気のある属性は俺様、ドS、ヤンデレなど…多かれ少なかれ女性がMであることを前提とした属性に偏りがちです。

私が以前、その種の不満を口にし、なぜあんなに私の苦手なものが人気なのか不思議と言った旨を話した所、ヤンデレを好む人からこんな言葉を聞きました。

「自分にそのくらい強い感情を向けてくれないと、存在を認識できない

好みじゃないとかそういう以前に、優しいキャラは存在していない…!?
n=1を総意と考えるのは危険ではあるし、極端過ぎるほうの意見とは思うものの「存在感が希薄なものは、好き嫌い以前の問題で興味を持ちようがない」と言い換えてみれば腑に落ちる部分がありました。

ヤンデレが「逃がさないから」と言って監禁してくるのは、つかみの一発ギャグみたいな鉄板ネタを持っているのとほぼ同じ意味かもしれないということですね。
私もちょっとそういう持ちネタ欲しい。
これはバカにできないというか「名前だけでも覚えて帰ってくださいね」ということがエンタメの消費期限が早くコスパ、タイパを重視される時代においていかに重要かは知っての通り。

これを「女性はMが多いからしゃーない」という解釈でいると永久に本質は見えてこないところでしたね…。

思えば、ここ数年は女性向け男性向け問わず、はたまた一般向けですら、どのジャンルでも「人間の他人への感情の重さ」をいかに描くかを重視している傾向です。一言で言えばクソデカ感情と呼ばれるもの。

私自身は正直なところ、うっすら苦手意識がある概念でもあります。
いや、全てが嫌いじゃなくて平気な場合もあるんですけど、本音を言えば自分や乙女ゲー主人公にそれを向けられたくない…と思った所でふと気づきました。

「優しいキャラがいい」とは「強い感情を受けたくない」と言う意味?

「優しい」とはキャラ属性においては消極的な態度の一種です。
現実には能動的な優しさもありますが、二次元だとそれは「キザ」「ナンパ」といった別の属性と認識されることが多いと思います。
はっきり言ってしまうとキャラ造形上は「優しい」とは個性でも何でもない属性と言えそうです。

例えば乙女ゲーではなく恋愛要素ありのスローライフゲームの話になりますが、そちらでは登場人物全員多かれ少なかれ優しい(※)というのが割と当たり前です。
もちろん属性として不人気ということはありませんし「明るい」とか「元気」とか「おっとり」とか別の属性で差別化します。

※これは作品の性質上、恋愛だけでなく結婚、育児もするので自分相手だけならともかく子どもに優しくできなさそうな人間を入れたくない…つまりは恋人としては許せても家族としては許せないタイプは入れられないのだろうと思います。例外はありましたが。

私は正直な所俺様とかドS、ヤンデレが看板にいる乙女アプリを嫌っていて、広告で出ると「うわー…」と思ってしまうタイプです。
乙女アプリ開発者インタビュー記事によればその手のアプリには「優しいキャラもいるけどあまり人気がない」そうです。

私もそれは興味湧かないな…。というのが正直な感想でした。
だって「苦手な要素があることが確定してるから、その奥にある物に感心自体がない」と思って避けてるのですからね。
奇しくも、優しいキャラの存在を認識できないのは、私自身心当たりのあることでした。

例え桃源郷があっても、ケルベロスがうろついていたらそれに気づくことはありません。
知っていたとしても途中でケルベロスに噛みつかれない保証がないので近づけない。
もともとケルベロスにあまがみされるのに抵抗がない人が、かろうじてその存在に気づくかもしれない程度です。
うーん…人気出るビジョンが見えない。

なので「優しいキャラがいい」とは「まず世界観から優しい作品がいい」とほぼイコールなのかもしれないなぁ…と思いました。


いいなと思ったら応援しよう!