許せない"譜割り"の話 〜サイレントマジョリティーが聴けない僕〜
“譜割り”とは
”譜割り”って言葉、聴いたことありますか?
音楽をよく聞く方ならご存知かもしれませんが、普通はあまり知らない言葉なんじゃないかなあと思います。
引用したこちらも、すごくいい記事なのであわせて読んでみてください。
一言で言うと「メロディーに対しての歌詞のハマり方」といった感じでしょうか。
一般的な考え方
歌詞を書く上で、テクニックとして言われることの一つに、この譜割に関してのルールがあります。「基本的に、その言葉のもつイントネーションの抑揚にあったメロディを付けるのがベター」というやつです。
例として、僕がよく引き合いに出すのがBUMP OF CHICKEN “ロストマン“のサビのこの歌い出し。
「破り損なった」と口に出して言ってみてください。表記するのは難しいですが、「や/ブリソコナッ/た」と、イントネーションが上下するのがわかると思います。「や」「た」が低く、「ブリソコナッ」で高くなっていると思います。この、もともと言葉が持つイントネーションが、メロディーのリズム、音程の動きとぴったり一致するんです。
BUMPは本当に譜割りが綺麗で、メロディーに対して歌詞がとても自然な当たり方をしている曲が多いです。自然と歌詞が入ってくるバンド、歌詞がいいと言われるバンドや、歌詞を先に書き、それにメロディーをつけるタイプのソングライターにはこのルールを守った曲が多いように思います。
もちろん、これはあくまでも一つの考え方であり、絶対的なルールではありません。曲中全ての言葉が元々のイントネーションに沿っている曲なんてほぼ無いと思いますし、意図的に元のイントネーションから外して印象付けるといったテクニックもあるでしょう。何も考えずに作られている曲もたくさんありますし、一つの指標にすぎません。
許せない譜割り
ただ、個人的にどうしても許容できない譜割の曲があります。欅坂46 ”サイレントマジョリティー”のサビです。
「支配」の部分のメロディーですが、「しはイ」と、イが特別高い音程にんなっています。またリズムは早く細かく、口頭で普通に「支配」と口に出したときに近くなっています。(「しーーーはーーーイーーー」など、ロングトーンであればイントネーションと食い違っていても特に気にならないでしょう)
「支配」のイントネーションは「シ/はい」と、頭のシが本来一番高い音になるはずですので、完全にメロディーと食い違っています。ものすごく違和感のある譜割りだと思いませんか?
また、イ(i)の音が歌うときに高音を出しづらい母音であることも違和感の原因だと思います。アやオなどの母音の方が高音で歌った時に自然と声が出しやすいので、歌を前提に歌詞を置く場合、意図的に避けることもあります。(これはあくまでも自分であればの場合です)
もっと言うなら、「君は君らしく生きていく自由があるんだ」からして、メロディにとんでもないねじ込まれ方をしています。細かいリズムにも関わらず、元の言葉のもつリズムとまるっきり違いますから。完全にメロ先詞後で作られた曲の典型です。(実際、作詞と作曲が分かれている曲のほとんどはそう作られているはずですし、坂道グループはコンペで出された曲にあとから詞を付ける形で作られているので、当たり前なんですが…)
どう受け取るか?
そのギャップは、必ずしも悪いというわけではありません。特に欅坂は「個々人の個性を前面に押し出さず、全員でひとつの漠然とした”若い女の子像”を作り歌っている」という、”歌わされている”という構図を逆手に取ったコンセプトを感じます。曲に関しても、シンガーソングライターの曲のように「確固たる”個人”が説得力を持って伝える」構図ではないため、むしろ譜割りに関しても、こうして噛み合わず歪である方がコンセプトに合っているとも思います。(ちゃんとした欅ファンの方につっこまれたら太刀打ちできないので、勘弁してください…あくまで一個人の持論です)
ただ、それにしてもあの譜割りはいただけないだろ、と僕は思っています。本当に変だもん。気を取られ過ぎてしまう。もしカラオケで歌おうものなら、その箇所で小笑いが起きてもおかしくないでしょう(起きないの?)。一度気になったら最後、この曲を聴くたびにどうしようもない違和感に苛まれる、個人的に魔の一曲です。あ〜ぞわぞわする。
ちなみに、欅坂ではベタに「二人セゾン」「危なっかしい計画」が好きです。
余談
自分でちゃんと分かってるんですけど、本当に2021年にチョイスする曲じゃなかったな、と思ってます…
でもどっちも昔から思ってたんだもん…たまたま今書きたくなったんだもん…
また、重ね重ねあくまで個人の意見であり良し悪しの話ではないので、そういったつっこみは入れないでね。全部ちゃんと好きなので…