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あの日、中島美嘉は輝いていた 2


↑この記事からの続きです


ちょうどツアーが行われている間に、更に輝きを加えたいという気持ちで開発を進めていた「素のグリル」が工場から仕上がってきた。

「ダイヤ」を更に輝かせるには、石のついていない状態のグリルにツヤ感を与えることだと考えたのだ。


 「12月29日の最終日に映像シューティングがあるよ」

ステージ担当の方がこっそり教えてくれた。
マイクを気にかけてくれていたのだ。

 DVD化などはまだ決定していないようだが、映像に残るのであれば「ベスト」な物を提供したい。早速、技術者と相談し、何とか最終日に間に合うように「新しいモデル」を作ることになった。

時間はあまり無かったが技術サイドも頑張り、そしてそれは満を持して「完成」した。

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中島美嘉のトレードマークである「 Lotus ( 蓮の花 ) 」をモチーフに、完全なるオリジナルデザインのダイヤモンドマイクロフォンにしたかった。

ベースにツヤというアイデアは的中した。隙間を活かしてもフィニッシュが美しい。石の輝きも従来のバージョンの比ではなかったのだ。

 そのデザインのお陰もあって、石の数も1,841石 ( 10.26 ct ) となった。
当然ながら、販売価格も従来品より35%程度も抑えることができたのだ。

 

12月22日の金曜日、日本青年館に出かけた。

最終公演の前に都内でチェックできる最後のチャンスだと、河野がアシストしてくれたのだ。

久しぶりの青年館は、オリンピックの施設建設によっていつの間にか移転していた。その場所は、奇遇にも河野と私の母校「國學院高校」の隣であった。

「美嘉ちゃん、これ最終日用に作ったんです。蓮の花をモチーフにしたんですよ。」

彼女は今までのマイクも気に入ってくれていたことや、マイクを床に落としてしまったこと、歯にぶつけてしまったことなどを話してくれた。

「望月さん、これ今日から使っちゃいます。」
エンジニアの方が私に駆け寄り、こう話したのだ。
美嘉ちゃんからも「使いたい旨」を伝えてくれたのかもしれない。

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そしていよいよ12月29日金曜日、日本でのツアーファイナルを迎えた。
オーチャードホールは久しぶりだ。

 「マイク、いい感じですよ」

エンジニアの方が、サウンドチェックに来た私を見つけるなり声をかけてくれた。

このツアーに携わる人達は、実はこの日が最後ではない。
2018年の正月明けから、中国・深センと上海の2公演が残されているのだ。

2017年10月の杭州公演の時も、是非このマイクを連れて行って欲しかったが「セキュリティが怖い」という理由で、残念ながら中国デビューは実現しなかった。

「私、マイクのボディガードで中国行きますので、コイツをあちらでも使ってもらえませんか?」
もちろん自腹で行くつもり。

 エンジニアの方は笑いながらこう言ってくれた。
「僕が管理しますから。コイツ連れていきましょう。」

美嘉ちゃんのスタッフの方々はみんな優しい。
メンバーも一流だし、現場はいつも和やかだ。
これも彼女の人柄がなせる業だろう。

リハーサルが終わり、最後に観客のいない「会場」を隈なく見て回った。
外にはすでに列をなしているファンの方々がガラス越しに見える。入口付近では会場スタッフの方々が、忙しく準備を進めている。

特に何がしたかったわけではない。
自分がこのツアーの「ピース」のひとつだと実感したかったのだ。

もう「ただのマイクの人」ではない。
自分でそう思いたかったのかもしれない。

チケットは、一般の方達と同じ方法で買っていた。
「2階」の最前列が運良くとれたのだ。
ただ、自分は既に会場の中にいるわけで、そのチケットを使うことは最後まで無かったが。

後から来た妻と技術者と3名で、自分たちのした「仕事」をどうしても現場で見たかった。芸能人の姿も同じ列に見かけ、事の大きさも噛み締めた。

程なくして、オープニングに相応しい「GLAMOROUS SKY」のイントロが流れる。

そして幕は開いた。

10月から何度も何度もリハーサルを見ていたから、内容は隅々まで知っている。しかし「本番」は何か特別な空気で包まれていた。とても言葉では表現できないエネルギーで満ち溢れた世界だ。

「 俺の2017年もこれで終わる 」

このツアーを支えていた全員の " 一生懸命 " を陰ながら見てきたから。
俺たちも " 一生懸命 " 頑張ったから。

メンバー全員にライトが当たった瞬間、涙が溢れてきた。

このコンサートの模様は後に、「雪の華15周年記念ベスト盤 BIBLE」の特典映像としてDVD化された。(2:23〜がこのマイクの見どころです。河野伸の素晴らしいピアノにもご注目ください。)


それじゃ、また。


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