厨房より狭い人生の一日

パン職人のAさんは美味しいパンを焼けるが、赤ちゃんのときは何も焼けなかった。小学生のときはモチを焼いた。中学生のときに始めてパンを焼いた。

しかし、出来上がったパンは焦げており全く美味しくなかったと言う。それが今は世界中の人がAさんのパンを食べる。同じ人間から生まれる同じパンのはずなのに、全然違う。

それはAさんが何千、何億とパンを焼いてきてより美味しいパンを作るために試行錯誤してきたからだ。

私はというと、きっと人生の一日一日が、中学生の焦げたパンのまま、何の美味しくならないまま、ここまで来てしまった。

手元には焦げたパンがあり、需要が一切ないパンがあり、風船のようにただ軽い空気を吸い込み、やがて破裂するのを待つのみだ。

だからこそ一日一日の精度を上げていかないといけない。美味しいパンを作れる感動を味合うので。やがて死んで何もなくなるといえ。