民事実務基礎:R6予備論文 再現答案
第1 設問1
1 小問(1)
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権
2 小問(2)
被告は、原告に対し、本件建物を収去して本件土地を明渡せ。
3 小問(3)
(ア) Xは、現在、本件土地を所有している。
(イ) Yは、現在、本件土地上に本件建物を所有して、本件土地を占有している。
4 小問(4)
(ア) Xは、令和2年7月1日、Aと、本件土地を賃料月額10万円、期間30年間の約束で賃貸することを合意した。
(イ) Xは、同日、Aに対して、(ア)の賃貸借契約に基づいて本件土地を引き渡した。
(ウ) Aは、令和5年3月17日、Yと、本件土地を賃貸期間の定めなく、賃料月額10万円の約束で賃貸することを合意した。
(エ) Aは、同日、Yに対して、(ウ)の転貸借契約に基づいて本件土地を引き渡した。
第2 設問2
1 小問(1)
(1) (i)の言い分について
① 再抗弁として主張すべきである。
②(a) (ア) Xは、令和6年3月7日、Aに対して、本件延滞賃料を2週間以内に支払うように催告した。
(イ) Xは、令和6年3月31日、Aに対して、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。
(2) (ii)の言い分について
① 再抗弁として主張すべきである。
②(a) (ア) Yは、令和6年3月17日以降、本件土地を使用している。
(イ) Xは、令和6年3月31日、Aに対して、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。
2 小問(2)
① (イ) Aは、同日、Xに対して、(ア)の売買契約に基づいて本件商品を引き渡した。
② 事実(ア)の主張によって、双務契約であることが現れるので、事実(イ)を主張することによって同時履行の抗弁権(民法533条)の存在効果を消滅させる必要があるため。
第3 設問3
1 小問(1)
① (う) XとAは、同日、本件商品の売買代金について争わないことで合意した。
② 和解を規定した民法695条は、「その間に存する争いをやめること」を効力発生要件としているため。
2 小問(2)
(1) 小問(i)
① 裁判所は、弁護士Qに対して、本件合意書のAの署名部分が、Aの意思に基づいてなされたものであることを認めるのか否かを確認すべきである。
② 本件合意書のAの署名部分がAの意思に基づいてなされたものであることに争いがなければ、民訴法228条4項によって本件合意書の成立の真正が推定される。そのため、Aの署名部分がAの意思に基づいてなされたものであることについて争いがあるか否かによって、相手方であるXが採るべき対応が変わるため、裁判所は当該事項について確認すべきである。
(2) 小問(ii)
(ア) Aの署名部分がAの意思に基づいてなされたものであることを争うとQが回答した場合、Xは、Aの署名部分がAの意思に基づいてなされたものであることを、筆跡鑑定等によって証明する訴訟活動を行うと考えられる。文書の成立の真正の証明責任は、当該証拠の挙証者にあるため、Xによるこの証明活動は本証である。
(イ) Aの署名部分がAの意思に基づいてなされたものであることを争わないとQが回答した場合、民訴法228条4項によって本件合意書の成立の真正が推定される。もっとも、この推定は事実上の推定であるため、文書の成立の真正の証明責任は転換されない。Yが、Aの署名後に本件合意書が改ざんされた等と主張した場合、Xは、Aが保有する本件合意書について文書提出命令(民訴法223条)を申し立てる等して、本件合意書に改ざんがないことを証明する訴訟活動をすると考えられる。本件合意書の成立の真正の証明責任はXにあるので、Xによるこの証明活動は本証である。
第4 設問4
① 本件建物の所有権がYからZに移転されたのは令和6年10月14日であり、本件訴訟の基準日は令和6年11月5日である。Zは、「口頭弁論終結後の承継人」(民訴法115条1項3号)には当たらず、本件確定判決の効力はZに及ばない(同項柱書)。そのため、本件確定判決を債務名義としてZに対して強制執行することはできないという不都合が生じる。
② かかる不都合を防ぐために、Xはあらかじめ、建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分(民保64条)について申立て(民保13条)をするべきであった。当該仮処分の処分禁止効・当事者恒定効によって、上記の不都合を回避できるためである。
以 上