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歯医者に行かなくなって何年目だ?
上京してからも学生の間は、定期的に地元に帰省していた。
その度にかかりつけの歯医者の予約も取っていた。
でも、就職してからは何かと理由を見つけて帰省を避けていた。
あれ、歯医者に行かなくなって何年目だ?
どうして行かなかったのか
歯医者との接点を無視していた
住んでいる自治体から定期検診の案内のはがきが届いていたことは知っていた。ああ、行ったほうがいいのかななんて思った。でも気づいたらはがきの期限が切れていて、そのままうやむやにした。せっかく自治体がサポートしてくれる機会だったのにもったいないことをしたと今は後悔している。
歯医者を選ぶ基準がわからなかった
歯医者ってめちゃくちゃ多い。(特に都市部は美容室と歯医者が競い合うように看板を出している。)
自分が地元で通っていた歯医者は歯列矯正に特化した医院だったが、今は自分の歯列矯正もひと段落している。
今住んでいる地域にどこの歯医者の評判がいいかなんて雑談ができるほどの仲の良いご近所さんもいない。
Googleの口コミはどこも極端で治療内容がわからない。これは歯医者じゃなくてもなんでもそう。
職場で同僚に聞いてみても良いけど、同僚とプライベートの話をしたくないタイプだったら難しい。上京単身生活女性のデメリットかもしれない。
別に歯に問題を感じなかった
幸いなことにこの数年間、歯が猛烈に痛い、口臭を指摘される、歯が欠ける、などなどの口の中のトラブルが発生しなかった。歯医者に行く緊急性を感じず、いつか行かなきゃな〜とずるずると後回しにしていた。
うっすら感じる不安
前述した自治体からのはがきや、歯磨き用品のCM、メディアが発信する「歯の定期検診をしましょう」というメッセージから、うっすらと、歯医者に通っていない自分への不安感が高まってきていた。子どもの頃は8020運動を呼び掛けられていた世代である。歯医者に通わない代わりに歯磨きの時間が長くなった。歯磨きの前にフロスもするようになった。逆にこんなに歯のケアを頑張っているのに、歯医者にいって何か歯の問題が見つかったらどうしようなんて悩んだ。
歯軋りの疑惑
気心しれた友達が泊まりで遊びにきた朝、それは告げられた。
「寝言の間になんかカチカチ聞こえた。あんた歯軋りしてるかも。歯医者行けば?」
自分はもともとはっきりと寝言を話す家系に生まれたので、そのことは友達にも話してあった。お互いの家に泊まりあって遊ぶ仲だ。指摘されること自体は全く嫌じゃない。
自分が歯軋りしている?
歯軋りといえば食いしばりによる顎の筋肉の疲労、顎の審美的な問題以外にも歯のすり減り、最悪歯が割れて長期治療に繋がってしまう恐ろしい症状なんじゃないか?子どもの頃に痛みに耐えながら矯正してきれいな歯並びを手に入れたのに歯軋りで全てを無駄にしてしまうのか?
自分の顔色が変わったのをみた友達は、とりあえず近い歯医者に行ったら?歯軋りしているかもしれませんって言えばいいよ。特に何にもなくても定期検診で通っている人いるよ。と優しく声をかけて慰めてくれた。
寝言と歯軋りでよく眠れなかっただろうに病院を勧めてくれて慰めてくれる友達に本当に感謝している。
その日は歯医者が休みだったので、後日この友達は歯医者に予約を取るリマインドのLINEもくれた。本当に友達は大切な存在だ。
このおかげで数年ぶりに歯医者に行くことになった。
歯医者に行こう
歯科の予約の電話はシンプルで、拍子抜けした。
歯を見てもらいたいんです。初診です。自分で気になることは歯軋りをしているかもしれないことです。日にちの希望は○日です。
名前以外はこれくらいしか話していない。
するする〜っと予約が取れてしまい、順調に歯科医院に到着し、初診の問診票を書いたらすぐに診察台に呼ばれて歯を診られた。
歯医者独特の金属とミントが混ざったような匂いがあって、小さい時はその匂いを嗅ぐと緊張していたけど、心なしかその匂いもあまりしなかった。
歯科医師に隠しごとはできない
今回の歯軋りには関係ないかと思い、歯列矯正をしていたことは問診票には書かなかった。
なのに自分の歯を文字通り上から下まで見た医師は開口一番「歯列矯正されてましたかね。」と微笑みながら言うのである。
じっちゃんの名にかけてまるっとぐるっとお見通しってわけである。
こちらは口も閉じられないまま間抜けづらでうなづくだけしか許されない。
「虫歯はないようですし、噛み合わせも問題ないです。この後歯石を取って、歯軋りが気になるようだったらマウスピースを作りますか?」
良かった。虫歯はないんだ。噛み合わせもおかしくなってないんだ。さっきの一瞬だけ緊張が走ったが、その後のこの一言で自分の肩の力が抜けて安心し切った。ギリギリセーフだ。
歯石がゴロゴロ
無事に歯石取りに作業が移ったが、これがなかなか大変な作業だった。医師がさっと見たときはそんなに付いていないとのことだったが、歯科衛生士さんに実際に作業して貰っていると、歯茎の中にたんまりと歯石があったらしい。下の左奥歯から下の右奥歯まで、上の右奥歯から上の左奥歯までと往復して作業していただいたけれど、歯石が多くて多くてなかなか進まない。何度も器具を変え、角度を変え、うがいをし、なんとかやっと取れるだけ取って貰った。担当の方が本当に大変そうで、申し訳なかった。もっと早く歯医者に来ていればこんなに歯石が溜まらずに苦労をかけずに済んだ。不徳の致すところである。今後はこの歯科医院にきちんと通うことを決意した。
ピンクのやつ進化してんじゃん
普段集中しているときに歯を食いしばっている自覚もあったので、医師と相談してマウスピースを作ることにした。
それにはまず歯形を取る必要がある。
前述したとおり、自分は子どもの頃に歯列矯正で何度も歯形取りを経験している。
歯形取りがピンクのぽろぽろとカスが口の中に残るアレを使うことも知っている。アレは固まるまで時間もかかるし、口をずっと開けていないといけないし、口の中がスースーするし、なかなか厄介だが自分にとっては慣れたものだ。どんとこいや。と余裕しゃくしゃくで構えていた。
全然時間短い。あのピンクのやつ、思ってた10倍短い時間で固まる。ぽろぽろも出ない。匂いもあんまりしない。昔は歯につけた後、固まるまで一人で診察台に放置されて悲しく不安になる時間があったのに、すぐ外しに来てくれる。嬉しい。さみしくない。
歯医者に行った自分に自信が持てる
初めての診察が終わり次回の予約を取ったあとの自分は晴れやかだった。
長年心の片隅にあった歯医者への不安が一掃されたのだから当然である。
調子に乗ってその後連絡をとった友達にも歯医者の話をしたら、
その相手も歯医者に行けていなくて、行けていないことを気にしていたので是非一度行くことをお勧めした。
そうしたらその友達も歯医者に行けて、歯医者って思ったより怖くなかった、みんな褒めてくれたと感想までくれた。
実はこれを後二人別の人間にもやってまんまと全員歯医者に行っている。
歯医者に行くのをお勧めする会の会長になれそうな勢いだ。
歯医者が嫌いな人、行きたくない人は全然行かなくていい。自分の苦手なことを無理してやって具合が悪くなってしまうのは本末転倒だ。
歯医者に行かなきゃなと思っているけどきっかけがなくて行けてない人、あなたは絶対行ったほうがいい。
歯石の量が増えないうちにできるだけ早めに、でも無理しないで行ける日に行こう。
私の歯石を取ってくれた歯科衛生士さん本当にありがとうございます。