しゅわしゅわの思い出
仕事が終わって帰路につく。夏の日は長く、外はまだ明るい。帰宅時間帯の電車はいつも混んでいるが、クーラーがよくきいていることはありがたい。
家に帰って荷物を置くと、すぐにお風呂にお湯をはる。「暑い、暑い」と言いながら帰ってきたのに、お湯に浸かるのはおかしいだろうか?
買い溜めしているバスソルトや入浴剤の中から、その日の気分で選んでお湯に溶かし、好きな音楽をかけながらひとり時間を楽しむ。
そして、何よりの楽しみは、お風呂上がりのビール。少し低めに設定したクーラーの効いた部屋で、冷蔵庫でよく冷やしておいたビールを開け、グラスに注ぐ。「やっぱりこれだなぁ」と思わず言ってしまう。これだけはやめられない。
小さいころ、祖母から貰った小銭入れに、十円玉や百円玉をぎゅうぎゅうに詰め込んで、町の銭湯によく行ったことを思い出す。受付台にいるお姉さんが、背伸びをしても手の届かない私のところまで降りてきてくれた。勘定のできない私は小銭入れごとお姉さんに渡すと、「いつも、ありがとうね」と小銭を何枚か受け取ってくれた。
毎回、手が梅干しの皮みたいにしわしわになるぐらい色んな種類のお湯につかった。お風呂から上がった後は、大きな扇風機の羽に向かって、「アーーーー」。「危ないよ」とご近所さんに注意されたこともあったけど、誰もいない時には大きな声で「アーーーーーーーっ」と叫んだ。銭湯全体に響いていただろうけど、幼い私には恥ずかしさもなかった。
扇風機で遊ぶのも一段落ついたころ、受付のお姉さんにサイダーをもらいに行くのがお決まりのコース。
「サイダーください!」と私が言うと、お姉さんは「はい」と言って、たくさんの氷を入れたコップを持ってきてくれた。コップの口すれすれまでサイダーを注ぐと、シュワ~と音を立てながら泡がはじける。早く飲みたいが、まだ飲むのは早い。サイダーがしっかり冷えるのを待って「せーの」で一気に飲む。お湯につかった後のサイダーは最高に美味しかった。
東京でもクマゼミの鳴き声が聞こえる。お風呂上がりにビールを飲みながら、テレビのニュースをぼんやりと見る。最高気温が42度にもなった地域もあるらしい。ここまで書いてきてふと思う。私はお風呂が好きなのか、お風呂上がりに飲む炭酸が好きなのか、その両方なのか。
当時の私は想像もしていなかった、今の私が東京で送っている日々を。子どものころは思ってもみなかった、お風呂上がりにビールを飲むようになるなんてね。
お風呂とビールでリセット。「さ、今夜も飲もう」
#炭酸が好き
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