『10年間飲みかけの午後の紅茶に別れを告げたい』に学ぶ編集の妙。
帯に書かれた通り、〈実験〉的エッセイであり、部屋を巡る空想譚。
その執念のようなリサーチ力と壮大な空想(妄想?)力に圧倒され、圧倒されるがゆえに肩の力を抜いて読める、と思いきや
途中から、「編集の妙を感じまくって勉強になる!!」とかじりつくように読んだ。
各章、1部屋に1つキーとなるアイテムが登場し、役に立つのか立たないのかわからない仮説に基づく執念深いリサーチの様子が繰り広げられる。
隅々まで気を配られ、訳が分からないにも関わらず惹きつけられるその文章力は言わずもがななのだが、
部屋で章立てした編集の手法、その感覚を参考にしたい。
特に秀逸だったのは、トイレの章:「『地球の歩き方』100冊の詩的な一節で旅に出る」
ここでは、かの有名なガイドブックの編集の一面が紐解かれている。(そしてむちゃくちゃ地球の歩き方を読み漁りたくなる。)
各章には、エッセイから派生した物語も添えられているが、
この章の物語で出てくる最後のセリフ
これには
「まさに編集という言葉を表してるじゃないか!」と、一人静かに興奮した。