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自分を知る【4】誰かがしてくれていることに気付く。
2024年の年末も、夫の実家で過ごした。
彼と結婚して14回目の年末。コロナ前はお互いの祖父母宅(仙台と浜松)に泊まることも多かったが、コロナ禍以降は彼の実家で過ごすのが慣例となっている。
鮮魚が美味しいと有名なスーパーで刺身とボイルされた蟹を買い込み、好きなだけ酒を飲みながらたらふく食べる。
いつもなら遠慮するチーズやおつまみも用意して、こどもたちもジュースで乾杯して。毎年恒例の年越しパーティーだ。
ただ、2025年の元旦は、夫が休日当番となっていた。
彼の職場は年中無休で稼働している。365日必ず誰かが営業所にいることになっている。大晦日だろうと元旦だろうと関係ない。実家が遠方だからと優遇されるわけでもなく、独り身だからと当番をあてられるわけでもない。たまたま順番で当たった人が当番になるだけだ。
今年の元旦は、たまたま夫の当番だったのだ。
年越しで0時まで起きていたこどもたちは寝かせたまま、朝早くに実家から出勤することになっていた。
あまり遅くまで飲酒しては翌朝の運転に響くと懸念して、今回の年越しパーティーでは早めに酒は控えていた。
そのためなのか、はたまた心境の変化なのか、今回は酔いつぶれることもなく、率先して洗い物やゴミの片付けをしてくれていた。
たいていは酔って寝てしまうことが多いのに。珍しいなと感じていたものの、大変助かるのでありがたく彼の行動を受け入れていた。
ただ、元旦に出勤する直前、夫は不満そうな表情で呟いた。
「今年の年末は、なんだかゆっくりできなかったなって…。せっかくの休みなのにさ。なんか休みって感じしなくて、すげぇ疲れた。」
私はその言葉を、ただただうなずきながら聴いた。
たしかに、夫の母も足を悪くしてから全然席を立たなくなり、食事に関してもほぼお任せ状態になっていたのだ。義母がしてくれていた分まで、私達が動くことになったので、正直負担が増えたのは否めない。
しかし、夫は急にハッとした表情をした。
「えっ…。でもさ、俺が何もせずにゆっくりできたのって、誰かがやってくれてたからなんだよね?ってことは、〇〇(私の名前)が全部やってくれてたってこと…なのか。」
まさか夫が自分自身で気付くとは思ってもみなかった。
私はただ、彼が話しているのを、うんうんと聴いていただけなのに。
「そう…だねぇ。まぁ、私は結婚してから大晦日にゆっくりできたことはほとんどないかな。」
これはイヤミでも、あてつけでもなく、ただの事実だ。
というか、この時夫が気付いてくれるまで、私自身も当たり前過ぎて疑問にすら思わなかった事実だった。
誰かに教え込まれたわけでもないのに、『嫁さんだから義実家で洗い物をするのは当たり前』という価値観を私自身ががっつり持っていた。
考えてみたら、嫁である叔母はいつも祖父母宅で台所に立っていたなぁ。
当たり前過ぎて、不満にすら感じていなかったのだ。
いや、もしかしたら嬉しさすら感じていたのかもしれない。
『みんなが楽しく年越し出来て良かったな。』と、自分の行動によってみんなが楽しい時間を過ごせたことに喜びを見出していたから。
この、私の心境を全て話すと夫はしみじみと言った。
「そっかぁ…。ありがとね。やってくれてたんだよね。そうだよね。ありがとう。俺いつも寝ちゃってたから。なんかもう、覚えてもいなくて。ってことは、今年は〇〇も少しはゆっくり出来たのかな?」
夫は窺うような目で私の表情を見ていた。
「うん!!!こどもたちも手伝ってくれたし、洗い物がすごい早く終わって、ゆっくりテレビ観れた!寝かしつけもなかったし、みんなと一緒に観れたのが嬉しかったよ!!」
そっか。嬉しかったんだな。
夫に話しながら、自分でも感じていたことを自覚できて、改めて嬉しさを噛みしめた。
「そっか!!じゃあ、良かった!!なんかゆっくり出来なくてモヤモヤしたけど、〇〇がいい年越し出来たなら俺もスッとしたわ。ありがとう!いってきます!!」
すっかり晴れ晴れとした顔つきで、夫は仕事へと向かった。
『誰かがしてくれていたことに気付く』瞬間に立ち会えて、私も晴れやかな気持ちになった。
それも、自分がしてきたことに気付いてくれたのだから、喜びもひとしおだ。
今年はいい年明けになったなぁ。
そういえば、私達が美味しい刺身やご飯を食べられるのも、年の瀬に魚をさばいてくれる人達やお店を開けてくれる人達がいるおかげなんだ。その背景にはさらに多くの人達が関わっている。
私自身も『誰かがしてくれていたことに気付く』を意識して過ごしてみよう。同時に、私自身が誰かにしていたことにも、気付く時間を取ろうと思えた。
きっとこれを読んでくれているあなたにも『誰かのためにしてあげていること』があるはず。それも無意識に、当たり前に、していることがきっとあると思うから。
気付くきっかけにしてもらえたら嬉しいです★
探してみてね。