スプラトゥーン3も失敗したマッチングの基本的な話
ものすごい売上本数をたたき出して周りの人間もイカばかりやってる今月。スプラトゥーン3でも初回のフェスが先日開催されました。
ただ残念なことに、マッチングについては大きな問題を抱えた開催となりました…。
この記事は昔チーム内向けに整理した内容を思い出しつつ、あれから7年くらい経っても同じようなことが起きるもんだなあと悲しみとともに放流するものです。
状況
「道具」「食料」「ヒマつぶし」の3チームに分かれて争うルールでした。別陣営と戦って勝利すれば、ポイントを相手より多くもらえます。シンプル。
初日は3チームのうち2チームがぶつかり合う通常のバトルが組まれ、2日目には追加で3チームが一堂に会する「トリカラバトル」が開催されました。
発生した問題
「道具チームはマッチングに時間がかかる」
「道具チームが道具チームと当たる」
という状況が初日から続出。
そして2日目には
「道具チームの人だけ全然トリカラバトルに参加できない…」
原因は明らかで、得票数に大きな偏りがあったことです。公式の最終結果発表によると、人数比率は以下のようになっていました。
・道具 約58%
・食料 約21%
・ヒマ 約21%
人数比率問題の単純化: 2陣営の場合で考える
人数比率が偏ると実際どういう問題になるのか。まずは全体が2勢力に分けられた単純なケースで考えます。Aチームが55%、Bチームが45%という人数比率だったとしましょう。
この場合、Aの人間が10%ぶん余ってしまいます。Aチームのプレイヤーに一方的に待ち時間が生じるわけです。
仮に一切選り好みしないシンプルなマッチングをしたとして、B所属プレイヤーが10回遊ぶ間にA所属プレイヤーは8.2回くらいしか遊べないことになります。
マッチング品質にも影響があります。Aチームが相手を探すときに、Bチームで滞留させている人数、すなわちマッチング相手を選ぶための選択肢が少ないので、実力や構成…スプラトゥーンでいえばウデマエやブキを考慮した高度なマッチングがしづらくなってしまうのです。これを解決するためには、Bチームのマッチング可能プレイヤーがある程度溜まるまで待ち時間をプラスするほかありません。
これはどちらのチームから見ても待ち時間の増加ですし、「○○秒以上待っているプレイヤーはマッチング優先度を上げる」なんてことをしようものなら、結果できあがるマッチングの品質は低質なものになります。(しかしそういった仕組みを全く入れないことは難しい)
ひとつの工夫として、このように待ちプレイヤー群が偏ったときには「Aチーム同士で試合をさせてしまう」あるいは「NPC戦をやらせる」ということができます。試合としてはなんとか消化されますが、シナリオ上の整合性を取るのは難しくなります。とはいえ延々と待たせるのは厳しいので、よくあるシステムです。
この「2チーム分割、ルール外マッチあり」システムになっていたが、初代スプラトゥーンのフェス(2015年)や、アーマードコアV (2012年) でした。アーマードコアVは対人戦待ちで数十分かかったあとは出会って数秒で撃墜というすごいバランスで不評を博し、続編のアーマードコアVDの初動売上が1/3になるという悲しい滅びを見せてくれましたね…
3チーム分割の場合
2チームの場合を踏まえて、3チームに分けたときの話をします。
これは2分割のときの問題をかなり吸収してくれます。
上図の例ではそこそこ人数が偏っていますが
・A-B 30%
・B-C 50%
・A-C 20%
くらいの比率で開催すれば、2チームで50:50で分かれたときと同程度のクオリティを得ることができます。Bの関わるマッチが増えるのでルールはよく考えないといけませんが、少なくともマッチは円滑に開催されます。
なので、基本的には対人戦で全体を2チームに分割して戦わせるというのは絶対やってはいけなくて、3つ以上に分けられるようにシナリオやゲームシステムを作る、というのが定番となります。
道具チーム、どうして…
ではなぜスプラトゥーン3の初回フェスはうまくいかなかったのか。2つの問題がありました。
3チーム分割による吸収の限界
これだけ偏っていると、マッチをどう組んでも道具が余ります。
1勢力が50%を越えてはいけないのです。まあこれだけなら、道具同士の試合が起きたり待ち時間が長くなったりするだけですが… (だけと言っていいかどうかは微妙)
トリカラバトル: 3チーム戦の開催
どうして。2チームから3チームにしたときに、どういう仕組みで問題が解決するのか検討したわけではなかったのでしょうか?3チーム全員揃えるために、一番人数の少ないプールに開催頻度が制約されます。
しかもトリカラマッチは「ヒマチームから4名、食料と道具から2名」でした。ヒマチームの滞留人数が他の2倍必要。ここは多少工夫が認められていて、他陣営は明示的にトリカラバトルにエントリーした人間だけがマッチング対象だったところ、防衛側のヒマチームは普通の試合をしていると勝手に組み込まれるようになっていました。
ただ食料と道具の人数比もいかんともしがたく。最終的にヒマチームと道具チームのどちらがボトルネックになったのかはわかりませんが、道具チーム所属者はトリカラバトルに全然参加できないことになりました。
せめて攻撃と防衛なんて設定にせずに、人数の多いところから4人抜けるようにしておけば…。そもそも、人数が偏らないようになにかしらゲーム設定やSNS展開、報酬設計まで含めたバランシングの仕組みが入っていれば…。そのへんまで全部含めて、プランナー陣には猛省と改善を求めたいところです。(こういうの自プロジェクトであれば犯人捜しとか責任取れとか絶対やってはいけないんですけど、よその話なので好き勝手言います)
ここまで述べてきた人数比の話は「全体の所属人数」をそのまま展開してきましたが、実際には局地的・瞬間的な偏りも含めて実際そこにいる人数が問題になります。ヒマ陣営はトリカラバトル数回やれば簡単に遭遇していたので、「フェス終了!もう寝るか~ 」とどんどん離脱していき、道具チームばかり必死に残ってさらに人数比を悪化させていたことが想像できます。
まとめ
全体を「単一マッチに必要なチーム数」と同じ数に分割するのをやめよう
人数の偏りを減らす工夫をしよう
いい感じにゲーム内の雰囲気にあった、かつ柔軟性のある設定付けをしよう
余談: GameWithの調査では攻撃側として単一欄にまとめられているけど、道具チームと食料チームではトリカラバトルへの参加難易度にはかなり差があったのではなかろうか?(Twitterを見ていても苦労しているのは道具だけ)