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05.いよいよ入院…!

楽しみにしていた予定をパスしたくないという思いで設定した入院日だったが、これが実に良かった。なぜかというと、準備するための時間をたっぷり確保できたからだ。
入院準備は、持ち物と心だけ準備すればいいわけではない。協会けんぽの限度額適用認定証やら、生命保険の必要書類やら、事務的な準備も必要となる。特に、限度額適用認定証は即日発行ができない。申し込みから受け取りまで自分でしようと思ったら、短く見積もっても5日程度は必要だ。限度額適用認定証については入院した後の提出でも構わないと言われたが、準備する時間があるのならば、準備するに限る。人間、忘れる生き物だから…。
生命保険の手続きは、わたしの場合は退院後に行うことしかなかった。しかし、それがわかったのも事前に確認する時間があったからこそ。体と頭が元気なうちに、直接請求方法を聞きに行く時間が取れたのは大いに安心だった。
それから、仕事の引継ぎも言わずもがな。巻き取ってくれる側が有能なので、ほぼ「すまぬが、よしなにやってくれ…」と、ほぼ丸投げしてしまったのだが、それでも自分でよろしくどうぞができたのは気持ち的に救われる。
 
肝心のプライベートでは、9月末には何カ月も前から楽しみにしていたミュージカルを観劇し、10月の頭にはこれまた長らく楽しみにしていたホテルランチを楽しんだ。これで、春から決まっていた楽しい予定がすべて終了。一つも欠くことなく楽しめて大満足し、心置きなく入院に気持ちを向けられた。
もし、9月の受診時にがんだとわかっていたら、一刻も早く!と無理やり手術をねじ込んでもらい、すぐに入院していただろう。こういった類のことは知らなかったからこそできたことなのだ。知らぬが仏とはよく言ったものである。
 
◇ ◇ ◇
 
3連休が明け、いよいよ午後から入院である。あいにくの雨だったが、昼にはすっかりあがり、地上近くの空にはまるで本の帯のように虹が広がっていた。
パートナーのリクエストでお昼ごはんはオムライス。パンパンのおなかをさすりさすり、のんきに病院へ向かった。
 
指定時間までに病院に到着すると、まずはコロナチェック。駐車場に特設されたコロナ検査場にて、鼻をぐりぐりやられる。痛い。無事に陰性が証明されたので院内侵入の許可をもらうことができた。中に入って最初にやるのは入院の当日手続きだ。前回入院手続きをした場所で書類を提出し、お世話になる病棟が書かれたファイルをもらう。受け取ったファイルと荷物を持って、いざ病棟へ。
 
到着した病棟はとても綺麗だった。受付には事務スタッフさんがいて、ファイルを渡すと病室まで案内してくれる。一緒に来てくれたパートナーとはここでお別れだ。外面のよさに定評のあるわたくし、事務スタッフさんを私情で待たせることはご法度である。無情なほどにさくっと別れて案内をお願いした。
 
ここまでパートナーが持ってくれていた荷物は、事務スタッフさんが持ってくれた。元気だから自分で持てるんだけど…と気が引けたが、ここは病院、わたしは病人。お言葉に甘えることにした。
病室に行く前にと案内されたのは、共用スペースであるラウンジとシャワー室。注意事項や利用方法などの説明に、いちいち「ほー」とか「へー」とか間の抜けた相槌を打ちながら見学した。そうしていよいよ、病室である。入院している人を見舞ったことはあれど、見舞われる立場は初めてだ。ちょっぴりわくわくしながらついていくと、「こちらのお部屋です」と中へ案内される。
まだ電気がついておらず、うすぼんやりと暗い部屋では、入院患者同士がお互い自分のテレビを見ながら声だけでお喋りしていた。アウェイ感に戸惑い、「失礼しまーす…」とデクレッシェンド気味に挨拶をして、あてがわれた通路側のベッドにかばんを下した。窓側に憧れがあったのでがっかりしたが、初めての病室である。目に映るものすべてが珍しく、ここが一時わたしの家になるということに、やっぱりわくわくした。
 
あてがわれた病衣を着て、床頭台をあちこちいじっていると、看護師さんが来てくれた。Oさんという可愛らしくもしごできなオーラが漂う看護師さんで、入院ビギナーのわたしに一つ一つ丁寧に説明してくれる。書類にサインをしたり、身長と体重をはかりに行ったり(…オムライス!!)、入院に必要なタスクをこなしていく。そして最後に、手首にリストバンドが巻かれた。
どこの病院もそうだと思うが、入院するとバーコード付きのリストバンドが巻かれる。情報管理やミス防止だと思うが、逃げられない感じがしてちょっぴり悲しい。わくわくしたり、しょんぼりしたり、初っ端から大忙しである。
Oさんが病室を出ていき、これにて無事入院完了。院内探検に出かけようと、わたしは意気揚々とうす暗い部屋を後にしたのだった。
 

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2022.10上旬のお話です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
よろしければ、また別の記事でお会いしましょう!

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