月曜モカ子の私的モチーフvol.208「物々交換」(2019.03.25 アーカイヴ)
もともと世の中は物々交換が主流であった。
そしておそらく交換するにあたり互いの欲しいものがかみ合わないまたは成立しない場合に、じゃあそれと同じくらいの価値があり、腐らず、また価値の変動がないものとして、それでもってまた他の何かと交換できるものとして、金とか、貨幣とかが生まれたのだとわたしは思っている。
けれどいつしかその手形のような、取り急ぎの「中継ぎ」の役割であったものが主役(通貨)となり、ツール(手段)であったものが最終目的になっている現代に至る。
そんな中でここ2年ほど、個人的に物々交換の流れを、自分が作るように試みている。例えば、月1のがんこ堂エッセイの挿絵は妹に描いてもらっているが、これは子守と引き換えになっている。たとえば親友のちほさんには、毎週土曜日に働いているワインバーのBGMのセレクションをシーズンごとにお願いしており、これはわたしでよければできる「何かしら」と交換するようなシステムになっている。どうしても代替できる何かがない時は、あらかじめ互いに決めてある金額で支払うことになっている。
これは勝手にわたしの中で流行っていた新しい文化であったのだが、先日、友人の歌手のMayaさんが新しくリリースする音源の紹介文みたいなのにわたしがちょっとアドバイスというか、言葉の提案などをしたことに関して、
Mayaの相棒のピアニストのSinskeyが、わたしに「Sins券発行しよっかな」と言ってくれていたことを知り、個人的に「うわ、笑える、同じ考えやん」笑、と思ったことで今日取り上げてみる。当然「Sins券」というのは、彼が何かしら芸術的労働でお礼をしてくれる、の意味である。
わざわざ彼と話し合いなどしていないが、何となくこれにはわたしにはルールがあって「今後ごちそうするよ」というのはナシなのである。
なぜかというと、すっごくうまく言えないのだが食事をおごるのは本人の労働ではないし、物々交換にならないというか、だし、わたしたちのような値段をつけにくい仕事に関して「ご飯ごちそうするから」と言って安く使おうとする人も割と多いのだが、そう言ってる段階で「そもそも1万くらい」にわたしたちの価値を勝手に向こうが決めていることになるからである。
(だって「え、まじで? じゃあ**で」とか言って高級フレンチとか指定しづらいからね。笑)
だからつまり、わたしたちが「いいよいいよお金なんか」と言ったことに対して「え、じゃあ今後ご飯」はありというか、とってもありがとう、でも、
「今後ご飯」ありきのオーダーはなし、という意味なのである。
(マヤウー &Sinskey⤴︎ New EP絶賛発売中!)
わたしは今、ピアノの先生の名刺を新しくデザインし直してあげたいなと思っていてでも今の名刺も悪くない、でもどこがイマイチなのかわからなくってそれをセンスMayaに聞いてみたかった、そしたらものの数十秒で彼女が
「うん、紙とフォントだね。それを変えるだけでもずいぶん変わるよ、根本からデザインを変える必要はないね。あとこの端っこの模様だけど、これ自体は可愛いんだけどこのピアノの絵との相性が悪いのだと思う」
と即答してくれたので、それだけでもわたしにはお金に変えられない価値があったので、こちらとしては紹介文へのアドバイスなんて、こんなことでよければ! という感じであったから、全く問題なく互いがHappyな形でディールできていたのでSins券発行まで手厚くしていただかなくて十分なのだが、しかし彼のセンス(彼は映像なども作ります)は素晴らしいので、
ぜひともためらわず、発行したいのであらば、発行して欲しいところ。笑。待ってるよ、Sins券!笑
物事の価値というのは本人が決めるもの。
だから商談というのは互いの合意で成立するもの。
だから「いくらだったらいいんだよ」とか「金は払うって言ってんじゃん」とか言って相手を抑え込もうとしてくる人がいるけど、
本来そのような「中継ぎ」のものでは、人はディールできない。
気乗りしないことをしぶしぶやらされるなら、せめて「中継ぎ」たくさん積んでもらわないとしんどい。(何かに対して一定金額を設定していない商売の場合)
逆に本来動いてもらうのにその「中継ぎ」が相場ではたくさん必要な人が、時に「いいよ」と言ってくれて成立することもある。
だからやっぱりお金の相場というのは、
株式よりも人の心行きに左右されるのである、
特に1対1の場合には。
(イラスト=MihoKingo)
☆モチーフとは動機、理由、主題という意味のフランス語の単語です。
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