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”きっかけはピンクだった” by新連載に寄せるまえがき

きっかけはピンクだった。そしてきっかけは少しづつ色を変え、きっかけでなくなり、放物線を描いて、今、実環子の前に転がっている。
                 ——「ソメイヨシノ」より抜粋——


みなさま。初めまして。
おそらくPASSAGE BIS!のNight Coffeeでこの連載を知り、QRから飛んで来てくださった方は”初めまして”の方が多いと思うので初回はざっとこの連載に至る経緯などを簡単に「まえがき」させて頂きたく思っています。

初夏の新メニュー”さるすべり” by 栞珈琲 at Bis!!

↑栞珈琲at Bis!についての概要はこちらのCMをご覧ください♪

わたしは今年の2月、ちょうどBis!のOpenのタイミングでBis!の空間と代表のユイさんと出会い、まずは著者として1階に棚を持ったのが色々なことのきっかけでありましたが、自身は色々割愛しますが長い作家生活の中でありがたい想いも、中指立ててやりたいほどクソな想いも色々経験してきたので棚を持つことはそれ自体が目的、そこに新刊「宵巴里」を置いておければよかったので、「宵巴里」はそこに飾られているだけでもありがたい、驚くほど売れてほしいとかもないですし、本棚そのものにあまり執着はありませんでした。
そんなわたし、酒場生活が作家業より長く女主人も五年目になるわたしがグイと惹かれて魅力を感じたのは3階のBarカウンターで(すまんわたしにはいつだってBarカウンターに見えている)、わたしが入りたいというよりは
「うちの栞ちゃんと全てにおいてマッチするなあ」と思ったのですが、
経営者というものは人の経営には何があっても口を出さないというのは経営者同士の暗黙の鉄則で、それが出来ないと互いに信頼を築けないので当然口にはしませんでしたし、人様のお店のことをあれこれ考えられるほど自身の店も数字はうまく回っていませんでした。し、今も回って、いません。笑
(なにせ飲み屋に人が来ないんだ!!)
同時にわたしが夜のお店をやっていることを知ったユイさんからは「今後19時以降もBis!を開けていきたいと思うのだが、夜というのは一筋縄ではいかない気がするのでプロのご意見頂戴したく」とお話頂きまして、
そこからまず試しに4月に2回【栞珈琲 at BIS!】が行われ、ありがたくみなさまに好評頂き、今月は週2回に増えたわけなんです。


その際にPASSAGEの棚主さんたちが喜んでくれるような「なにか素敵な珈琲カクテルを」「物語があるものがいいよね」と思い、うちでは半ば蔵入りになっていた春のカクテル「深閑のソメイヨシノ🍸」を持って行ったのですが、これが大変好評を頂き毎回売り切れるくらい人気になりました。
我が店イーディでは開発した初年度に緊急事態宣言、翌年もその翌年も、なぜかその「ソメイヨシノ🌸」のシーズンだけ時短営業や休業に重なってしまい、本当に気の毒なカクテルだったので、今年これだけみなさまに飲んでいただき、長い冬を耐えようやく花を咲かせた本当にありがたく嬉しいことでした。

「ソメイヨシノ」(2020に開発)

本題に入りますと、もともとこの「ソメイヨシノ」は、せっかく小説家がやっているお店なんだしと自身の持っている春の短編をモチーフに栞と常連の桜子が3年前に考案してくれたカクテルでした。
それでせっかくカクテルが「さるすべり」にアップデートするのに物語がないのも寂しいなと思い、自身の蔵入り小説「すきとおる」を連載しようと思い冒頭に貼りましたようにメニューから飛べるようにしてみました。
「すきとおる」というのは「ソメイヨシノ」の続編です。
これには経緯がありまして、わたしがデビューしたのは2009年の1月ですが、デビューして最初にやったプロのお仕事が小説新潮の「官能特集号」に載せる短編だったのです。かのレジェンド団鬼六さんと同じ文芸誌に載るだなんて大変光栄な出来事でした。

その後、夏の短編「すきとおる」秋の短編「めぐる/清潔な歪み」と書き進みましたが、秋の短編が3回書き直しになった後担当編集者のノーリーから「これでは冬が超えられません」と言われて(笑)作品はお蔵入りになりました。当時わたしはなかなか期待の新人であったのでデビュー二作目がとても肝心、ということだったんですね。(と解釈してるがその実ただポンコツだっただけだったりして……)そのことを懇意にしている幻冬舎の編集者に雑談としていてしたところ(彼女は「宵巴里」の編集者です)、
「それ、春だけください!」となって「ソメイヨシノ」は幻冬舎から発売されるアンソロジーの中に収まったわけなんです。

なのでつまりはいきなり「すきとおる」からbis!連載が始まったら当然みんなその手前のお話「ソメイヨシノ」が気になりますよね。

ここでユイさんの神アドバイスによって大ニュースが齎されたのでありますが、2023年5月15日現在「ソメイヨシノ」を読むには↑この書籍を買うより他が何のですが、なんと!!!!

📣🤩近々幻冬舎が「ソメイヨシノ」を単体で電子書籍にしてくれることになりました!!!

これは本当にユイさんナイス!!
ユイさんのちょっとした提案をふと幻冬舎の壷井さんにお伺いしてみたらこのような展開になったのです。ともかくわたしは現在不良債権作家ですから、こんな対応をしてもらえて本当にありがたい!!!感謝しかない!!

ここいらの経緯に関しては自身の番組の「女主人のコレが言いたいねん!」のコーナーで話していますので、興味がある方はご覧ください。

そういう嬉しいニュースがありましたので、
本来は「すきとおる」の初回にしようと思っていた今日の投稿を、このような「まえがき」にさせて頂くことにしました。電子書籍のリリースに関しては近々編集の壷井さんと会いますので日にちをいつ告知できるか聞きますが、近い未来になっています!

そんなわけで本日はこちらに「ソメイヨシノ」の抜粋を貼って終わりにしようと思います。

自分の目に映る景色がほんとうにそこにある景色なのか、
その空は本当に青いのか、耳に聞こえる音は一体いつ震えているのか、そのすべてが不確かであるとするなら、互いの目に映る景色を尊重し、
認め合い、相手の見ている景色を自分も見ようとして、
手をつないで、一緒に空を見上げられることが幸せなのか、
それともそんなことよりも、お互いの目の中に、お互いを確認できることが幸せなのか、実環子にはよくわからない。

「ソメイヨシノ」より
続き、続きも抜粋ですがはこちら↓(pdfデータ)です。
DLしてそのままでも、プリントアウトしてでも。
プリントアウトされる方は出力時に「レイアウト」を選択しa4に4ページくらいプリントできる設定にするのがオススメ。わたしはゲラ直しの時、そうしてます。


新連載は【栞珈琲 at PASSAGE Bis!】の日に更新します!
(19:00までにと思っていましたが本日ちょっと間に合わなかったごめんなさい)

ではまた来週!
「プチコパン」美味しいですよ!笑

Petit copain/プチコパン

文/ MOCAKO NAKAJIMA🖋🌒

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中島 桃果子 / Mocako  Nakajima
長く絶版になっていたわたしのデビュー作「蝶番」と2012年の渾身作「誰かJuneを知らないか」がこの度、幻冬舎から電子出版されました!わたしの文章面白いなと思ってくれた方はぜひそちらを読んでいただけたら嬉しいの極みでございます!

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