「マリッジストーリー」「別離」。。。離婚ドタバタ映画をみるなら子供視点が強いほうが染みるのです。

個人的に昨年のベスト5に入る名作にノア・バーンバックの「マリッジストーリー」があるのだけど、2010年代は、2年に1回くらいのペースで同じような離婚名作を見てるような気がする。

「マリッジ・ストーリー」はブロードウェイ演出家の夫(アダム・ドライバー)とハリウッド女優の妻(スカーレット・ヨハンソン)が離婚にむけて、独特な離婚裁判ビジネスや家族たちとの関係を絡めならが、コメディ的に物語が進んでいくドラマ。

明らかに「クレイマー・クレイマー」の影響が大きいみたいで、ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープの緊張感と愛のある演技に対して、アダム・ドライバー、スカーレット・ヨハンソンもそれを超えるような演技をしてきたりと、過去の名作と比べての遜色のない感じで見て損はない、いや得しかない映画になっているとおもう。お互いのいいところを箇条書きで書いていくオープニングと、中盤の夫婦喧嘩(アドリブ?)は映画史に残りそうだなーと個人的には思ってます。

マリッジストーリー   netflix

演技の凄さだけでなくて、ロサンゼルスとニューヨークのメタファーや、誤解を恐れずにいうと歌曲映画としての面白さなど魅力がてんこ盛りなんだけど、そのあたりはいろんなレビューが出てるので読んでみるといいかと。

注目したいのは「子供」の視点。ノア監督が

ぼくには離婚経験がある。同時に、両親も子供のときに離婚しているので、離婚はぼくの人生に長くつきまとってきた。

出典: Banger

と言ってるように、自分の離婚、親の離婚の両方のイメージが反映されているみたいで、親権を取り合う状況も大きく扱われている。このあたりがもう一つの離婚傑作、「ブルー・バレンタイン」とはまた違う感情を呼び起こすのかなーと。個人的には子供視点がジワッと入ってるほうが複雑な感動があって良いので、この2大離婚映画に関してはマリッジ・ストーリーに軍配が上がるのです。

たとえば、アダム・ドライバーが「今日は遊ぶ日だから二人で出かけようぜ!」と息子に声をかけると、「行きたくない。。。」(子供)、といわれて、ジワジワと誘うんですが、最後は我慢できなくなってキレる。ここは親視点でも、子供視点でも地獄なシーンで忘れられない。

「クレイマー・クレイマー」もやはり子供視点が強くて子供が親(ダスティン・ホフマン)を成長させていく部分や、僕(息子)が離婚の原因じゃないのか? 僕はパパにも捨てられるのか?みたいなツライポイントがグッと来ます。

クレイマー・クレイマー

イラン、ロシアという映画先進国ではもっと救いようのない子供視点が描かれる

上記2作品って、最後まで見るとわかるんですが「救い」があるんです。どんな救いかは見てもらうとして、この救いすら削除。子供視点があるのに「ブルー・バレンタイン」風味を加味してるのがイランのアスガル・ファルハーディ監督の「別離」。

これ、2011年のベルリン国際映画祭で金熊賞をとっていて、「ここ最近、離婚名作多いなー」と思い始めたきっかけじゃないかなと思っています。

こちらもオープニングの両親が並んで裁判官?の質問に答えてるカットが印象的。この映画の後、この画角の映画が増えた気がするのはぼくだけでしょうか?

別離
こちらも子供が本当に振り回される。父親も母親も自分と一緒に暮らしたほうがいいとアピールするのですが、子供の気持ちというよりも、自分たちの主義主張をアピールするために子供を手元で教育したい、という感じになっていて、子供の振り回され感が激しいのです。

ただ、まだ救いがある。最後のシーンまでみると、ハリウッドの2作とは質は違いますが、子供の救いはまだあります。

子供視点でまったく救いが無いのがズビャギンツェフの最新の映画「ラブレス」。

ロシア的なメタファーだったり、絵やセット、廃墟の中を流れる水が圧倒的にタルコフスキー的な映画ですが、それ以上に愛がない。まあ、タイトルがラブレスなのでショウガナイんですが。。。

夫婦喧嘩中にいろんな発言を子供が聴いてしまい泣き崩れるシーンが、残酷すぎて頭を離れません。

ストーリーとしては離婚をテーマにしてますが、これ人間の不審、思いやりの無さみたいなサガを美しい背景をもとにじっくりとあぶり出していく、哲学的な、やはり名作だと思いました。

で、なんでこんなに"子供視点"離婚映画にグッと来るか。おそらく、自分の映画マスターピースが「パリ、テキサス」だからじゃないかと。

「パリ、テキサス」自体は全然、離婚ムービーではないのですが、トラビスの息子との接しかたがラストのキーになっていて、そこが心のどん底に漂ってるんですね。なので、ここまで子供、親の関係を書く映画が好きなのだと思います。

ちょっと、みてもらえると。

さいごに、こちらもいい映画です。トラウマです。

ブルー・バレンタイン


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