MMTにおけるインフレーション その2

というわけで↑前回の続きです。

前回のnoteでは、世の中のお金が増えるとインフレになる理屈の基になっている理論について書きました。貨幣数量説の価格の理論(インフレーションの金融観)

今回はその理論への反証です。

今回もティモワーニュ氏のブログを基に書きました。(無許可です。すいません。)

前回のおさらいにもなりますが、

MV≡PQの方程式を価格の理論に発展させるために、以下を仮定とする。

Mは定数または、一定のスピードで成長する。中央銀行が貨幣乗数をもって、コントロールしている。

Vは定数。(支払いの習慣は一定している。各経済主体は貯蓄すべき貯蓄量を蓄えきったので、すべての貨幣を支払いにまわす。)

Qは完全雇用状態(Qfe)で一定または一定の(自然)成長率で(gQfe)で成長する。

●供給条件(生産能力)は、需要条件(商品やサービスへの支出)から独立していると想定。

でしたね。

では、この仮定にツッコミを入れていきましょう。

●まず、第一にM(マネーサプライ)は中央銀行はいかなる形でもコントロールすることはできない。MMTでは、M(世の中のお金)は誰かが銀行からお金を借りると増え、それを返すと減ると考えられています。つまり、民間の経済主体の借り入れと返済、政府の赤字支出と租税によって増減するのであって、中央銀行は国債を売り買いして、準備預金の量を調整し、金利を調整する事しかできない

V(貨幣の流通スピード)は定数ではなく変数ではないのか。ある期間のマネーサプライを全て支払いにまわすというのは、考えづらいです。貯蓄にまわすなど支払いに使わないお金もあるはずです。

Q(生産量)に関していうと完全雇用状態は稀にしか達成することはできない。

●自然成長率を測定する事は実際にはとても困難。

●供給は需要から独立してはいない。

●PとMの因果関係の方向が分からない。

このツッコミから考えられるのは、つまり、貨幣数量説による価格の理論(インフレの金融観)の

gP=gM-gQfe


この式が成り立たないってことですよね。


そして、ティモワーニュ氏は実証的な証拠からもgMとgPには強い相関関係は見られないとしています。

下のグラフはインフレ率(CPI)とマネーサプライの成長率の相関を表したグラフです。

上が長期、下が5年間と短期です。

画像1


画像2

gPとgMに強い相関関係があるのなら、この斜めの直線に完全に沿う形で点が存在するはずです。

点が斜め線に近い時もあれば、全く違うところにあることも確認できます。

つまり、このグラフからインフレ率とマネーサプライの成長率にはそこまで強い相関関係がないことが分かります。

というわけで、

貨幣数量説の価格の理論がいうように、PとM、つまり、価格水準の成長とマネーサプライの成長には強い相関関係がないというのが結論です。

つまり、世の中のお金の量が少なすぎるから、デフレ。

だから、ほどよく世の中のお金を増やすと、ほどよいインフレになるからナイス。

でも、加減を間違えて、ものすごくお金を増やすと、ものすごいインフレになるから、世の中のお金を増やすのは危ない

といった両方の理屈を説明するための式が成り立たない。

では、価格水準の成長率は何と強い相関関係にあるのでしょうか。


それは


生産性の上昇率に対する賃金の上昇率です。



これは厄介ですよ。

つまり、賃金の上昇が生産性の上昇に比べて、大きいとインフレになるのです。

これだと因果関係はこうなるんじゃないでしょうか。

経済成長すると賃金が上昇するのではなく。

賃金が上昇するから、経済が成長する。

さらにいうと、

デフレだから、賃金が上がらない。

ではなく、

賃金が上がらないから、デフレ。


ってことは、賃金が上がらないことにはデフレから抜け出せないことになります。

というわけで、次回は賃金と物価の関係をやります。

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