なぜ日本銀行は国債を保有するのか

早速、タイトルの答えから。
答えはそうでなければ、通貨がゼロになるから。

というわけで、今回は公開市場操作(といっても、詳細までやるわけでもなく、あくまで論理的記述のみ。
というのも、詳細なやりとりまで分からないから)についてなのだけど、その前に前回、日銀当預は政府が支出しないと増えないと書いたのだけど、そのへんからもう少しやろうと思う。

政府が支出するというのは、年金支払い、社会保障支払、公務員への給与払い、民間から財・サービスを買う(公共事業などで道路を作ってもらう)といったことで歳出と言ったりする。

この歳出よりも歳入(政府の収入)が少ないと、赤字分を補填する形で国債が発行される。

そして、
歳出(日銀当預増加量)-歳入(日銀当預減少量)=日銀当預残高
であるわけなのだけど、

国債発行量もこれまたおなじく歳出-歳入なので、もし仮に民間が発行された国債を全て買って保有するとなると日銀当預の残高はゼロになる(国債は日銀当預でなければ買えないから)。

日銀当預の残高がゼロだと以下のような不具合が出る。

1.金融機関による民間の商取引の決済が出来なくなる

2.金融機関による租税払いの代行が出来なくなる

3.金融機関は所要準備を満たすことができなくなる

4.追加で発行される国債を買うことができなくなる

5.金融機関が預金者の要求払い預金の引き出し要求にこたえることが出来なくなる。
つまり、現金が引き出せない。(重要なのは、日銀当預の残高はゼロなんだけど、金融機関の預金は国債と同額あり、この預金は預金者のものであるということ)

他にもあるかもしれないけど、とりあえずぱっと思いつくのはこれくらい。

つまり、上記の問題を取り除くためには日本銀行が民間保有の国債を買って、日銀当預残高を増やさなければならない。

日本銀行は国債を買うしかないということになる。

という前提のもとに、公開市場操作の事を書こうと思うのだけど、はっきりいってここからは日本銀行の機能と業務に書かれている内容と同じなので、そっちを読んでもらった方がいいかもしれない。

公開市場操作は日本銀行が金融機関から国債やその他資産を買ったりすることで日銀当座預金の量を調整することなんだけど、

なぜこんなことをするのかというと、日本銀行はコール市場の金利を自身の政策目標としていたから(過去形なのは、いまはゼロ金利政策中なので)なんだけど、

このコール市場というのは、金融機関が資金を貸し借りする金融市場のことでここで貸し借りされているのは日銀当預。

つまり、日銀当預の量が多すぎると、コール市場の金利はゼロにまで低下するし、少なすぎると政策目標金利を上回ってしまうから、日本銀行はそうならないように常時日銀当預の量を調整するために公開市場操作を行っていた。

日銀当預の量というのは、激しく増減するのだけど、これは前回と今回の冒頭でも書いたように、政府が支出すると増えるし、政府が収入を受け取ると減る。

つまり、公務員の給与が支払われた際、年金が支給された際などは増え、反対に租税の納付時期は減る。

また、民間の給与払いの時期も激しく増減し、連休前などにも現金が一斉に引き出されることで減っていた。

などなど、とにかく政府の財政要因と民間の銀行券需要要因によって、大きく日銀当預は増減した。

この増減に合わせて、日本銀行は常時日銀当預の量を調整するしかなかったということ。

MMTなんかはここからさらに一歩踏み込んで、

中央銀行が自身の政策目標金利を正の数値としている場合(時代によるけれど、5%前後としていた)、民間には新たに発行される国債を買うだけの準備預金(日銀当預のこと)がないのだけれど(余分な準備預金があるならば、金利はゼロにまで低下してしまうから)、民間はなぜか新たに追加された国債を買うことが出来た。

それはなぜなのか?

中央銀行が追加で発行される国債と同額の民間保有の国債を買い上げ、準備預金を供給し、そうやって供給された準備預金で民間は新たに発行される国債を買っていた。
つまり、中央銀行が相殺していた。
だから、全体で見た際に民間の資産ポジションに実質的な変化はなかった。
というのも、国債と準備預金が『置き換わった』だけだから。

そして、この時中央銀行が国債を買うための準備預金をどこから工面していたのかというと、中央銀行は準備預金を増やすことで民間から国債を買っていた(準備預金は中央銀行自身の負債であるため。負債は誰でも発行できる。そして、この中央銀行の負債には償還期限がない。つまり、返す約束が無い負債)。

これが国債がデフォルトフリーな理由なんだけど、どうにも日本でMMTを掲げる人の大多数がこのへんのことがいまいちわかっていないし、言及すらしていないというのが現状。

まあ、そんなことは置いておいて。

日本銀行は国債を買うしかないし、またそのための日銀当預は日本銀行の負債であり、この負債は償還期限が無い(かつては付利もなかった)わけで、この償還期限のない日本銀行の負債が民間の決済で使用され、納税にも使用され、国債の購入、償還、利払いも行われているというのが、最も重要なことだと思うんだけど、まあ、とりあえず今回はこの辺で。

参考文献
日本銀行の機能と業務 日本銀行金融研究所
Eric Tymoigne Money and Banking series


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