自由民主党税制調査会と宮沢税調会長


~自民党の税制決定プロセスについての問題提起~

前回の衆議院選挙で自民党が大敗し、少数与党に転落した。そして、その事によって自民党内の組織である税制調査会の存在が、広く国民に認知されることとなった。

長らく自民党が単独過半数を締め、国会の役割が形骸化していた。その最たるものが、今回明るみに出た自由民主党税制調査会の存在だろうと思われる。自民党の中でも税制については、宮沢税調会長を筆頭にインナーと自ら称するごく一部の自民党議員が、独占的に決定権を有している。

インナー以外の自民党議員、政府の税制調査会ですらその決定に口を挟むことが許されず、自民党が単独過半数の議席を持っていたことから、自民党税調の決定がそのまま、国会での決議と同じ意味を持っていた。

まさに、税制に関しては宮沢税調会長を筆頭にインナーと自ら称するごく一部の自民党議員が、独裁的な権限を有していたことになる。

自民党が与党で単独過半数を有している限り、政権交代などとも関係なくその特権を維持してきたということである。税制は国民の生活にも大きな影響を及ぼす事柄であり、国の根幹をなす仕組みでもある。それが、ごく一部の自民党議員によって独占的に扱われてきたというのは恐ろしい話である。

自らをインナーと称するごく一部の自民党議員が、その特権とも言える権利を独占してきたということは、外部からのチェック&バランスなども機能していないと言うより、そもそも存在していないということである。


前回の衆議院選挙で自民党が大敗し少数与党となったことで、これまで自民党の宮沢税調会長率いる自民党税調に、国民民主党が切り込んでいく形で所得控除額の引上げに関する協議が開始された。

税制は本来は国会にて審議されるべきものであるのが、一部の自民党議員によって独占されていたことを考えれば、大きな変化である。むしろ、自民党税調の存在が、広く国民に認知されたことそのものに大きな意味があったと言える。

しかしながら、国民民主党と自民党税調との協議の結果は多くの人が既に御存知の通り、酷い有様である。自民党の宮沢税調会長は、いまだに以前と同じく税制については自分たちの占有事項、つまり特権であると考えているようだ。

自民党の宮沢税調会長の提案があまりにも要求からかけ離れていた為に、国民民主党が見直しを求めた所、ゼロ回答。そのため国民民主党が協議の席を立つと早速、これまでように自公のみで税制改正大綱を取りまとめた。はじめから協議などする気がないというような態度である。

他にも協議中に自民党と国民民主党の幹事長が、所得控除額の引上げについて一定の合意に達し合意文書を交わすと早速、宮沢税調会長から不快感が表明された。あからさまに自らの特権であることをアピールしているようなものである。

結局、臨時国会で補正予算が可決された途端、自民党はこれまでのように手のひらを返し、宮沢税調会長が再び国民民主党との議論の場を持つことはなく、自公のみで税制改正大綱を取りまとめ、その案がそのまま閣議決定された。


幹事長レベルで協議を継続すると言いつつ、年内は予定が合わないとし来年の国会に、審議は持ち越されることとなった。これまでの自民党の手口から考えるに、協議継続は維新や立憲を牽制するためのパフォーマンスであろうことが、十分に考えられる。

これまでの宮沢税調会長の態度を考えれば、自民党はよほどのことがない限り、自らの決定案を変える気はないだろう。自民党のインナーと呼ばれる特権議員(と自ら思っている)からすれば、税制の制定に野党が口出ししてくることそのものが許せないのだろう。

国民民主党が席を立たなければ、別の提案もあったと後から行っているが、典型的な後出しジャンケンである。

自民党の支配的な地位にいる古参議員は、自らは選挙でも安泰と思っているのか、先の衆議院選挙で大敗してもなお、考え改める気はなさそうである。現役世代を中心に国民が自民党に対してどれほど怒りを抱えているのか、未だ実感していないのだろう。石破首相も、自民党の予算案が通らなければ解散総選挙もあり得るとの発言。自ら国民に真意を問うと。


世論調査では40代以下の現役世代の支持率は、自民党を抜いて国民民主党が1位となっている。全体でも野党第一党の立憲を抜いて2位につている。国民民主党は若い世代を中心に、大きな支持を伸ばしている。

裏を返せば、それだけ若い世代の生活が苦しくなっていることの表れであろう。その影響もあるのか、出生数もことしは大きく下がっているようだ。

そして今回の宮沢税調会長の振る舞いや、政府の態度に多くの若者世代怒りを覚えている。

今回の一見で、自由民主党税制調査会の存在が大きく認知されたこと。そして、宮沢税調会長を筆頭に自らをインナー称する自民党議員が、これまでずっと税制について独占的な権限を有していたことが明るみになった。

少なくともその事は、大きな前進だろう。これまで自民党が単独で過半数を締め独裁的な地位を有していたが、少数与党に転落したことで、自民党内の歪な力関係が、多少なりとも表から見えるようになってきた。

「税は国家なり」たしかに、それは真理の一端を示しているだろう。しかし、そもそも国家とは国民を守るために存在している組織であり、国家のために国民が存在しているわけではない。そのような考え方は、戦前の日本のあり様と同じである。

そして、ごく一部の自民党議員が国会で日本の税制を決めていたということは、裏金問題以上に大きな問題であり、いかに危険なことかということを考えるべきである。

今なおその特権を、自分たちが有していると当たり前のように考えているように見える宮沢税調会長を筆頭に自らをインナーと称する自民党議員。日本の政治は本当にこのままでよいのか。


2024年12月29日


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