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ニクロム線の設計力と加工技術を活かし、セラミックバンドヒーターと小型管状炉を製造
今回インタビューした社長はこちら!
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■大阪でセラミックバンドヒーターを製造する希少な会社
王子商会の強みは、ニクロム線の加工技術である。
顧客は主にヒーターメーカーや電気炉メーカー。
もとはヒーターをつくるための電熱線を販売する卸売業だったが、今は電熱線加工や特殊なヒーターも製造している。
製造部と商事部という名でメーカーと卸の2事業を展開する企業である。
同社の主要製品はセラミックバンドヒーターと小型管状炉。
いずれも顧客のニーズに応じて設計製造する受注生産だ。
特にセラミックバンドヒーターについては関西には製造しているメーカーがほかに無いと思われ、「ひとたび設計に着手するとたいてい正式に注文していただける」と代表取締役の黒田氏は話す。
同製品は約700℃までの高温に対応し、非鉄金属や高温樹脂の押出成型機、射出成型機、多くの筒状装置の高温部に使われている。
「セラミックバンドヒーターはニクロム線の加工技術と設計力が勝負です。この技術は他社には負けないと思います」と自信を持っている。
当社がSP型と呼ぶ小型管状炉は通常の管状炉とは構造が異なり、炉芯管に直接ニクロム線を巻きつけるという特殊加工技術を活かした製品。
温度の立ち上がりが早く、熱が均一に伝わるなどのメリットがある。
つくり方が簡素なのでコストも安い。この製品は、最近、環境試験機メーカーや大学の研究室からの引き合いが多いという。
これらの製品の元でもある電熱線加工技術は多くの装置メーカーから認められ、難しい形状やサイズのコイルを巻いてほしいなどの相談もある。
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■信頼の積み重ねで小規模企業のデメリットを払拭
同社は1986年に黒田氏の父が創業。
ヒーターが世の中に出始めた頃、多様なサイズのニクロム線を販売することからスタートした。
黒田氏は20代後半の時に入社。
「バイクが好きで趣味は機械を触ること」と言う黒田氏は「せっかく素材の特性を知っているので、それをより生かす仕事もしたいと思い」と、ニクロム線の特殊加工に乗り出す。
それが製造部の始まりである。
「父は『好きにやってみろ』という考えの人なので、何も教えられませんでした。それが良かったんでしょうね」。
黒田氏は試行錯誤しながら自由に製品をつくり、PRを兼ねていろいろな会社を訪問。
今、その会社が顧客になっている。
「当時は採用されませんでしたが、話を聞いてくれた担当者の役職が上がり、うちを思い出してくれたんです」。
社長に就任して約19年。
「社長になってからの苦労はあまり思い出せないですね。私が鈍感なんかな」と苦笑するが、初期は会社が小さいことがデメリットになったらしい。
社員数は10名。
同社は製品の肝になるところは必ず社内でつくる方針だが、それ以外の部品加工は信頼できる取引先に外注している。
そのため製品数の割には従業員が少ない。
そこがネックとなった。
「お客様は会社の規模を見るので、担当者が製品を評価してくれても、『小さい会社だけど大丈夫か』と上層部の決裁が下りないことがあったんです」。
そこで黒田氏が取り組んだのは、自分を含め、特定の従業員しか知らないことをゼロにすること。
「誰かが急に休んでも、他の誰かがわかる体制を日頃からとっておくんです。最悪、私がいなくても会社が回るように」。
社内でまめに情報交換したり、メインの業務以外のことをあえて別の社員にやらせてみる。
そうすることで、わかる仕事の幅が広がる。
取引先から電話が入った際に担当者が不在でも、他の誰かが対応できる。
「その積み重ねで『この会社なら大丈夫』という信頼を得てきたと思います」
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■担当外の仕事にも関心を寄せられる人材育成
そんな風通しの良い組織をめざし、社員育成にも力を入れてきた。
黒田氏はある会社の社長から言われたことを今も心に留めている。
「営業は作っている者の気持ちを考えてものを売らなあかん。製造は営業がどんな思いで売っているのかわかってものを作らなあかん」
その考え方をもとに同社では営業経験のある人を製造部に、製造経験がある人を商事部に配属する。
また、展示会出展時にも多くの社員を送り出す。
「同じ人に常駐してもらった方がコストはかかりませんが、展示会は勉強の場でもありますから、いろいろな人に関わってもらいたいんです」
部署にとらわれず自社製品を深く理解する機会になっている。
そして、自分が先代社長にしてもらったように、若い人の意見を積極的に聞くようにしている。
「たとえ失敗しても自分が考えてやったことなら勉強になる。そう思えば多少損してもいいし、早く成長してすぐ元は取れます。」と見守る。
部品をどちらに置けばいいのかなどの小さなことでも気づいたことを変えていく。
「その変化を見るのがうれしいですね」
そんな雰囲気が根づく同社では、ここ8年、離職率はゼロだという。
今後の課題はなにか。
ひとつはセラミックバンドヒーターの小型化だ。
装置自体の小型化に伴い、同社の製品にもサイズダウンが求められている。
もうひとつは材料の仕入れ先を増やすこと。
事業の広がりを見据えて、得意分野を持つ仕入れ先と連携を取る。
「新しいことをやりたくなった時、当社の思いを具現化してくれる“より適材適所にはまる会社さん”に発注したいんです」。
黒田氏がその先に見ているのは取引先との共存共栄の関係だ。
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■MOBIO担当者 村井のコメント
「技術営業(セールスエンジニア)」を早くから導入されている同社。多くの取引先との信頼関係が築かれているゆえんは、社長のお人柄や先代社長との承継前後のいきさつから必然的に発生したものではないでしょうか。
今後も、時代のニーズに対し敏感に即応した新製品開発はもとより、多様な材料を扱う仕入れ先の開拓に余念がないなど、ゴールのないチャレンジに取り組んでいらっしゃる黒田社長から、まさに『熱い』お話をうかがいました。
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