第十二回輪読会~Bloch-Siegertシフト~
こんにちは〜、最近昼も夜も暑くて参っています、山田です。今回は第十二回輪読会について報告していきたいと思います!!
2023/6/26
前回まで共振器QED系を記述するモデルとして、回転波近似を施したJaynes-Cummingsモデルを用いてきました。今回の議論では回転波近似で無視した励起数非保存の項をエネルギー補正として取り込み、それによって観測されるBloch-Siegertシフトを理論的に導きます。
教科書は越野和樹さんの「共振器量子電磁力学」です。
以下に示すようにハミルトニアンを3つの部位に分割して考えます。
このVの項が励起数非保存の項であり、これをエネルギー補正として取り込みます。結果を示せばエネルギー補正の項は
で表されます。括弧内の第一項が励起状態に作用してエネルギーを上げ、第二項が基底状態に作用してエネルギーを下げることがわかります。これをBloch-Siegertシフトと呼びます。
一般の共振器QED系では式(3.35)にある結合定数gは原子や共振器の共鳴周波数$${\omega_a}$$,$${\omega_c}$$に比べ、極めて小さいです。しかし超伝導回路QED系と呼ばれる特殊なQED系ではgが$${\omega_a}$$や$${\omega_c}$$より大きいという状況を作ることができます。
このパラメータ領域を深強結合領域(deep-strong-coupling regime)と呼び、この領域ではBloch-Siegertシフトにより原子の励起状態と基底状態の逆転が起こることがあります。
すなわち共振器内の光子数によっては、原子が励起した状態の方が原子が基底状態にいるよりエネルギーが低いという状況が現れるわけです!
直感的に理解し難い現象が式を追って、丁寧に議論を進めていくと導かれるのは理論研究の醍醐味とも言えそうですね!
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