無題98-1

感情と表現


すごい声優さんには、個性的な人が多い

と思います。

「自分は自分」と強い個性を体現できるのですね。


「確固たる自分」があるからこそ、演じられる……


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《自分はこれを感じた》


という感情をそのまま爆発させても、
他者には通じにくい。

壁に皿を投げれば割れるだけ。
人に向かって投げたら、怖がられたり嫌がられたりする。

《うまい朗読》は、感情を込めて読まない。
”情景”を声に乗せる。

そこに、読む人それぞれが、それぞれの感情を抱く。


うまい小説も映画も、
巧緻な背景を描くことに力を入れている。

そこに人を、引き込む。


そして読者は
おのが内なる感情を
想起させる。

だから、

感想も、
個人個人が少しずつ異なるものを持つ。



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《ひとつの感情》を描くことが
優れたものになるのではなくて、

”情景を描ききる”ことが
”素晴らしい作品”になる。



「昨日、りんごを食べました。
とても美味しかったです!」

と聞いた人は「それはよかったね!」と言っても、

聞いた人は「美味しそうだ」とは思わない。


「つややかで瑞々しいりんごを美味しそうに頬張る少女」

の写真や絵を見たら、

見た人それぞれが、色々な思いを抱く。

ひとりひとりの感情が、生まれる。


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自分が感じた感情そのものだけを、

「怒ってる!」
「悲しい」

と言うと、

人は同じ怒りや悲しみではなくて、


「自分が怒られてるようでいやだな」とか

「自分が悪いみたい・・・」

というふうに感じたりする。


緻密な描写のなかに、それが描かれたものならば、
相手の中に、
「怒り」や「悲しみ」といった感情を
喚び起こす。


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相手の心の中に湧き起こる感情は、

自分の感情とは、ちょっと違うものかもしれないけれど、

そういうふうに表現することができれば、

あなたの「感情」は浄化されていく。


「共感してもらう」「わかってもらう」

ことで、あなたは落ち着くけれど、

もし、共感してもらえなかったら・・・?


自分の感情は、自分一人の感情なのだけれど

「共感してもらえる感情」に変えてしまう。

それは本当のあなたの「感情」ではなくなってしまう。


「共感してもらえないかもしれない」恐怖、

「ひとりぽっちで寂しくなるかもしれない」恐怖・・・


また別の感情も生まれてしまう。


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だから、


表現しよう。


もっと、形を変えて。


あなたの感情が、あなたの中に湧き起こったように。


きっと誰かの感情も呼び覚まされる。


それは、たとえ「怒り」や「悲しみ」であっても、


とても大切で温かくて優しくて、

きれいな、透明の感情になる。


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私たち人間には想像する力があるから、

「つややかで瑞々しいりんごを美味しそうに頬張る少女」

の写真や絵を見たら、

その文章を読んだら、

見た人それぞれが、想像し、そこに思いが生まれる。

ひとりひとりの感情が、生まれる。


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そういうふうに

「表現」としてちゃんと命をもらった感情は

空の彼方へと霧消していく。

そして、

あなたの中には新しい、

爽やかな感情が生まれる。

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noname
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