感情と表現
すごい声優さんには、個性的な人が多い
と思います。
「自分は自分」と強い個性を体現できるのですね。
「確固たる自分」があるからこそ、演じられる……
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《自分はこれを感じた》
という感情をそのまま爆発させても、
他者には通じにくい。
壁に皿を投げれば割れるだけ。
人に向かって投げたら、怖がられたり嫌がられたりする。
《うまい朗読》は、感情を込めて読まない。
”情景”を声に乗せる。
そこに、読む人それぞれが、それぞれの感情を抱く。
うまい小説も映画も、
巧緻な背景を描くことに力を入れている。
そこに人を、引き込む。
そして読者は
おのが内なる感情を
想起させる。
だから、
感想も、
個人個人が少しずつ異なるものを持つ。
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《ひとつの感情》を描くことが
優れたものになるのではなくて、
”情景を描ききる”ことが
”素晴らしい作品”になる。
「昨日、りんごを食べました。
とても美味しかったです!」
と聞いた人は「それはよかったね!」と言っても、
聞いた人は「美味しそうだ」とは思わない。
「つややかで瑞々しいりんごを美味しそうに頬張る少女」
の写真や絵を見たら、
見た人それぞれが、色々な思いを抱く。
ひとりひとりの感情が、生まれる。
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自分が感じた感情そのものだけを、
「怒ってる!」
「悲しい」
と言うと、
人は同じ怒りや悲しみではなくて、
「自分が怒られてるようでいやだな」とか
「自分が悪いみたい・・・」
というふうに感じたりする。
緻密な描写のなかに、それが描かれたものならば、
相手の中に、
「怒り」や「悲しみ」といった感情を
喚び起こす。
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相手の心の中に湧き起こる感情は、
自分の感情とは、ちょっと違うものかもしれないけれど、
そういうふうに表現することができれば、
あなたの「感情」は浄化されていく。
「共感してもらう」「わかってもらう」
ことで、あなたは落ち着くけれど、
もし、共感してもらえなかったら・・・?
自分の感情は、自分一人の感情なのだけれど
「共感してもらえる感情」に変えてしまう。
それは本当のあなたの「感情」ではなくなってしまう。
「共感してもらえないかもしれない」恐怖、
「ひとりぽっちで寂しくなるかもしれない」恐怖・・・
また別の感情も生まれてしまう。
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だから、
表現しよう。
もっと、形を変えて。
あなたの感情が、あなたの中に湧き起こったように。
きっと誰かの感情も呼び覚まされる。
それは、たとえ「怒り」や「悲しみ」であっても、
とても大切で温かくて優しくて、
きれいな、透明の感情になる。
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私たち人間には想像する力があるから、
「つややかで瑞々しいりんごを美味しそうに頬張る少女」
の写真や絵を見たら、
その文章を読んだら、
見た人それぞれが、想像し、そこに思いが生まれる。
ひとりひとりの感情が、生まれる。
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そういうふうに
「表現」としてちゃんと命をもらった感情は
空の彼方へと霧消していく。
そして、
あなたの中には新しい、
爽やかな感情が生まれる。