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だが、一貫してサブカル

 私は子供のころピエロになりたかった。小学二年生のとき、フェリーニの『夢』を見てから、ずっと憧れていた。人を笑わせるのではなく、笑われたかった。授業中に的はずれな回答をしてクラスのみんなに笑われるのが好きだった。今でも、地下鉄の階段で転んで、ホームの人に見られるのが好きだ。内心笑っているのかな、と思いながら立ち上がる瞬間が気持ちいい。心配してくれている優しい人もいるだろうが。
 でも、ピエロにどうやってなればいいのかなんて分からなかった。コスプレがしたいわけじゃない。サーカス団で、観客の前でおどけてみせたかったのだ。でも子供の私には、どうしたらいいのかなんて皆目見当もつかなかった。
 そんなとき、私に人生の転機が訪れた。小学5年生の時である。年頃であり、健全に性に興味を抱いていた私は、WiiUのインターネットブラウザで初めて性的なコンテンツに触れた。それは、スカトロ系のエロ漫画だった。教師が生徒の排便を管理する。今まで、なんとも思っていなかった「排便」が、あまりに神聖なものに思えた。とても美しかった。そこから私の将来の夢が変わった。みんなの前ではイラストレーターになりたいなどと言っていたが、その実なりたかったのはスカトロの貴公子。一生懸命絵の練習をしたが、私の画力は高校生の頃から止まっているし、むしろ今は退化していると言えるだろう。あの頃の自分に顔向けできない。私は、いつスカトロ漫画を描くのか。今描かないなら、きっと一生描かない。そういう人生を送ってきているのだ。
 一貫した夢を語り続けることのできる人間は多くない。私は高校生の頃から、もうずっと、変わらない。何も思い描くことのできない人間に唯一できるのは、死の恐怖を忘れたフリをすること。死を漠然と望めば、それもひとつの夢になる。
 カフカ、フェリーニ、マザーグース、それより不思議な人間目指してここまで生きてきたけど、結局できあがったのはありきたりなサブカル女だった。いつか私は、骨董屋の隅に置かれたまま、忘れ去られた人形のような女になりたいな。
 つまるところ、私の今の将来の夢は、素敵なお嫁さん❗


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