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「いつも心にファブ5を!」Netflix『クィア・アイ』の魅力を全力で紹介します

Netflix『クィア・アイ』シーズン5が配信開始された。
いや~~嬉しい!もう全部観ちゃった!またシーズン1から観直そう~!
クィア・アイが本当に素晴らしくて大好きなので、そのゴージャスでハッピーで救いしかない世界と、ファブ5への個人的愛をここに記そうと思う。

観たことがない方はこれを読んで興味を持ってくれたら嬉しいし、一度観てから共感していただけたら、もっと嬉しい。

クィア・アイは、ただの変身番組ではない

ご存知ない方に簡単に説明すると、

『クィア・アイ』は、Netflixの人気ドキュメンタリー。
各分野のプロフェッショナルである5人のゲイ「ファブ5」が、様々な悩みを持つターゲットを「外見も内面もステキに改造」していく。
「ファブ5」のメンバーは、ファッション担当のタン、フード・ワイン担当のアントニ、インテリア担当のボビー、カルチャー担当のカラモ、美容担当のジョナサン。

こういった「ダサい依頼人を素敵に改造!」系の番組は日本にもたくさんあるし、プロの手であっと驚く変身を遂げた姿を見ると、ファッションの力ってやっぱりすごいな~インテリア変えるだけでこんなに素敵な部屋になるんだ~みたいな、ビフォーアフターを目の当たりにする快感みたいなものがある。

でも、クィア・アイの本質は「変身」ではない。
自分に自信を持てず、変わることができないでいたターゲットに、「自分自身を愛する大切さ」を教えてくれる。それが、クィア・アイなのだ。

ターゲットには本当に様々な境遇の人がいるが、共通点は、コンプレックスや過去のトラウマによって「自分の愛し方を知らない」ということ。
お洒落に無頓着、部屋が汚い…といった問題も、実は無意識のうちに、「こんな自分がお洒落をしたって」「私が綺麗な家に住んだって」というような、「自分にそんなことをする価値はない」という呪縛に囚われていることが多いのだ。

そんなターゲットを、ファブ5は決して否定しない。
今のあなたは本当に魅力的!と、本気で語りかけてくる。
そして、あなたは本当は何がしたいのか、どんな姿になりたいのか、「本当の自分」へ踏み出す勇気を、それぞれの分野から全力でサポートする。

そんな最強セラピー集団だと思っているファブ5。
シーズン5ともなるとそれぞれへの愛がたまらなくなってきたので、個人的目線でご紹介しよう。


自信へと導く、最強お洒落紳士:タン

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ファッション担当のタンは、毎回確実にターゲットを生まれ変わらせる。
変身系の番組だと、あ~これは私の好みじゃないな~みたいなファッションがたまにあったりするが、タンの提案するファッションにそう感じたことは、私はない。なぜならタンは、ターゲットとの会話で「本当はこうありたい」姿を見つけ出し、ターゲットが一番魅力的に見える服を提案しているからだ。

コンプレックスを抱えたターゲットは、それを隠すためにサイズの合わない服を着たり、地味な色で自分を押し隠したりする。
タンは、コンプレックスとなる部分を上手く隠す方法だけでなく、むしろコンプレックスだと思っている身体の部位を魅力的に見せるファッションを提案する。
「コンプレックスは最大の武器」と言うけれど、それをファッションという一番目に見えて分かり易い部分で、圧倒的説得力で教えてくれるのだ。

高身長で、友達と比べられ人の目を気にし続けてきた女性に、「それはつらかったね」と寄り添い、彼はこう言う。

信じてくれるまで言い続けるよ、あなたはゴージャス。
でも僕の言葉は無力だ。
あなたはずっと自己嫌悪と戦ってきた。1日じゃ変わらない。
でも僕の目を通して見るあなたを見せたい。

そして彼女は、脚の長さがとても魅力的に見えるパンツを履き、絶対に履かないと言っていたヒールの靴を履いて、きらきらした笑顔で立っていた。とっても素敵。なんてゴージャス。

タンの服を着ると、ターゲットはみんな胸を張って姿勢が良くなる。「自分自身を押し隠さなくて良いんだ」と、鏡に映る自分が示しているから。そしてタンは言うのだ、「自信に満ち溢れてて、とても素敵!」と。

タンのファッションセンスはまじで最高。だけど、ターゲットに彼の美意識の押し付けはない。だからこそ、全員がそれぞれ輝くファッションが提案できるのだ。
あ、でもフレンチタックへのこだわりはあるな。もはやメンバーにネタにされてる。私はタン大好き信者なので、最近フレンチタックしてます。


笑って、泣いて、料理を楽しむ君が好き:アントニ

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フード・ワイン担当のアントニは、見ての通り爆裂にイケメンである。そして無類の犬好き。特にコーギーへの愛は凄まじく、大量のコーギーに囲まれた幸せそうなアントニを眺めたい。

それはいいとして、フード・ワイン担当としてアントニは、ターゲットに料理を教える。思い出の味だったり、家族で食べられるものだったり、ターゲットが今すぐ作れて、生活に必要な料理を一品教えるのだ。

料理をほとんどしないターゲットも多いから、そういう人に丁寧な生活を教えるというのも勿論大きい。
でも、アントニ自身がとても大事にしていること、それは「料理は人と人を繋ぐ」ということだ。

アントニは、シーズンを通して一番変化が見られる人物だと思う。自分のセクシャリティへの答えが明確に見出せない部分もあったらしく(今では決め付けない〈クィア〉ことを大事にしているみたい)、他のメンバーに比べて自分をさらけ出せていない様子を感じることもあった。
でも、シーズンを追うごとに、彼から「料理を通して絆を深めてほしい」という言葉を聞くことが増えた。自身の家族との確執も交えて、「家族にとっていかに料理が大事か」と話す。その言葉の持つ力も、どんどん強まってきているように感じる。

大切な人のため、家族、友人、恋人、そして自分自身のために、料理をすることの大切さ。それを伝えることこそ、アントニの役割なのだと、彼自身が気付けたのではないかと思う。
最近誰よりも涙もろいアントニを見ると、愛おしい気持ちでいっぱいになるわよ。


心配りの天才、大人ってこういうこと:ボビー

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インテリア担当のボビーは、まじですごい。
ターゲットの家は、正直目も当てられないような状態なこともしばしばなのだけれど、毎回「こんな家に住みた~い」と思う家に大改造を遂げる。リフォームっていう物理的作業量も格段に多い分野で、確実に期待以上の仕事をこなしてくれる。「ボビーすげぇ~」って独り言を何度口にしたことか。

ボビーはそんな「影の立役者」だと思っていたけれど、最近は、ターゲットの今抱える問題点から、その人らしさ、そしてこの先の人生まで、一番広い視野で見ているのはボビーなのではないかと思っている。

家は、自分と向き合う時間が一番長い場所。自分を労わるのも、自分らしさと向き合うのも、大切な人と過ごすのも、家という場所は特別な意味を持つ。
ボビーは、ただお洒落なモデルルームみたいな家を作っているのではない。
「友人を招きやすいリビング」「家族との会話を楽しめるダイニング」「夫婦の時間を大切にできる寝室」、そういった「ターゲットが大事にしなければならないことを、自然とできる空間」を作り出す。その気配りが半端じゃない。
そして、ターゲットのルーツになるアイテムだったり、家族との思い出の品を、絶妙に取り入れてくれる。その心遣いも半端じゃない。

ファブ5メンバー全員なかなか壮絶な人生を歩んでいるのだけれど、ボビーは厳格なキリスト教の家庭に育ち、自身のセクシャリティで家族に拒絶された過去を持つ。そのトラウマは強く、教会に入ることをボビーだけ拒否した回もあった。でも、シーズン5では牧師さんがターゲットとなり、自らの手で教会を素敵にアップデートした。ここでのボビーの苦悩みたいな描写はあまりなかったから実際のところは分からないけれど、どれだけのことを乗り越えてきたのかと、想像するだけで頭が下がる思いだ。

カメラには映らない大変な作業も、表面には出さない苦悩も、思いやりに溢れたインテリアに全て落とし込むボビー。ひとりの大人として、心から尊敬する。


全人類のメンター:カラモ

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カルチャー担当のカラモ。
観たことがない方はこう思うだろう、「カルチャー担当って何?」

カラモは、ターゲットが自信を持てない理由、前に進めないトラウマを探り出し、それを解決するために会話をし、必要な場を提供する。つまり、人生に悩むターゲットのカウンセラー的役割だ。

クィア・アイは5日間ほどの撮影期間で、ひとりのターゲットにつき1話となるため、必然的にカラモがターゲットの心を紐解く時間は短い。だから、ターゲットの人生において今一番しこりになっている部分、そこを解きほぐせばきっと道が開ける部分を見極め、最適な場で対話をする。

時には、大きなトラウマに向き合わせることもある。銃で撃たれ下半身不随になったターゲットと、銃を撃った張本人を会わせたこともあった。なかなかに壮絶である。でも必要なことなのだ、目を背けてはいけないのだ、なぜならその過去を乗り越えないと、ターゲットは「今」を生きることができないから。

「クィア・アイは『自分自身を愛する大切さ』を教えてくれる」と言ったけれど、今を生きる自分を愛するには、過去を含め、まず自分を許してあげなくてはいけない。これまでの自分を肯定し、許さなければ、本当の意味で前を向き、明日を変えることはできないのだ。

だからカラモは、ターゲットが逃げ続けた過去と向き合わせる。誰にも見られたくない弱い部分と向き合わせる。
それは間違いなく、辛いことであり、エネルギーが必要なこと。でも大丈夫、カラモは、向き合えば絶対に変わることを示してくれる。そして、大きな身体で、優しい声で、絶対に味方だと寄り添ってくれる。

「カラモと話すとターゲットみんな泣く」というのが定番で、「カラモに泣かされたの~?」とメンバーが声をかけるのも微笑ましい。クィア・アイのカラモは、全人類のメンターなのだ。


あなたこそ世界一可愛い妖精だよ!:ジョナサン

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美容担当のジョナサンは、本当に特別な存在である。無邪気で、いつもハッピーに溢れていて、ジョナサンみたいな人を私は他に見たことがない。
ファブ5は「5人のゲイ」と言ったけれど、ジョナサンは自分を「ノンバイナリー」と言っている。5人の中で唯一、スカートもヒールも履く。可愛いお花の髪飾りもつける。チャームポイントは、美しいロングヘアーとキュートな髭。ゴージャス!ってたくさん褒めてくれる。

ジョナサンは、5人の中でもとりわけ「ありのままが美しい」を哲学にしている。顔も、体型も、年齢も、あなたの全てが美しい。ちょっとプラスして、髪や肌をケアして労わってあげれば、ほらこんなにゴージャス!
これを、心の底から全力で伝えてくれる。

「そのままの君が素敵だよ」って褒め言葉として優秀だけど、コンプレックスを抱えている人にとっては「嬉しいけど、でも自信は持てないよ」というのが本音だろう。ジョナサンは、持ち前のポジティブパワーで、そんな否定も全て吹き飛ばす。
私は捻くれているから、「根っからポジティブ」みたいな人がいても、あ~そもそもの性格が楽天的なのかな~私とは違うな~と思うに留まってしまう。でもジョナサンの言葉は、全身に響きまくりである。
それはきっと、ジョナサン自身が、たくさん傷ついてきたからなのだと思う。

クィア・アイ IN JAPAN!で、ジョナサンがターゲットに「これまで鏡を見て自分をきれいだと思ったことある?」と聞いた。
「あんまりない…」と答えた女性に、ジョナサンはこう返す。

私ね、これまでいろんな人にひどいことを言われてきたの。
でも絶対信じなかった。
だって、自分は美しいって心で分かっていたから。

なんて美しい人だろうと思った。そう言えるジョナサンが、世界一美しい。私、号泣である。

ムードメーカーで、最高にキュート。名言メーカーとしては、カラモと並ぶジョナサン。
ジョナサンに「なんてゴージャスなの!」と言われれば、その時だけは、自分も世界一ゴージャスな人になれる気がする。


ここからはじまる

撮影が終われば、ファブ5とはお別れ。
素敵な家や服、ケア用品は残るけれど、ターゲット自身は同じ人間である。
タンみたいに素敵な服を選べるようになったわけではないし、アントニが教えてくれた以外の料理の腕は変わらない。ボビーが作り上げた家を散らかしてしまうこともあるだろうし、思い悩んだ時カラモはそばにいないし、髪も心も綺麗にしてくれるジョナサンがいる美容室は近所にない。

でも、そこではないのだ。
ファブ5は、「自分はお洒落をしていいんだ」「料理って楽しむものなんだ」「心地良い家ってこんなに大事なんだ」「弱い自分を認めていいんだ」「自分ってちゃんと美しいんだ」
「私は自分の人生を愛していいんだ」ってことを、教えてくれた。

だから、ファブ5がいなくなって、変身はおしまいじゃない。
前に進むことを教えてもらったから、変身はここからなのだ。

「自分を大切にできなかったら、他人を大切にできるわけがない」
これも、ファブ5がよく言う。言葉だけじゃなくて、自信に溢れたターゲットの表情や姿が、それを私たちに伝えてくれる。

自分で自分を褒めて生きるのは、なかなか難しい。
自分の失敗を許してあげるのも、なかなか難しい。
自分のだめなところたくさん分かってる、変わりたいけど変われない自分が嫌になる。そうやって、自己嫌悪と戦いながら生きている。

そんな時、クィア・アイを観て、ファブ5の言葉を聞く。
自分を嫌いでいたら、いつまでも変われない。
だったら、今の自分を、好きになっていいのかもしれない。

こんなふうに、ありのままの自分を受け入れたら、私も前に進める気がする。

へこたれそうになったら、クィア・アイを観て、心にファブ5を住まわせて生きていきたい。
だから合言葉!いつも心にファブ5を!


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