転職してしまうから、研修は不要？

人事白書によると、企業がキャリア開発研修を行う理由のトップは「自律した社員の増加」を期待しているというものです。従業員の満足度向上や優秀な人材の定着が次に続きます。一方でキャリア開発研修を実施しない企業にキャリア開発研修が必要でない理由を訊いた調査では、「ノウハウがない」「予算時間がない」等が挙げられており、「退職してしまう可能性があるから」という回答もあります。研修によって自律した社員の向上を効果だと捉える企業と、研修によって退職してしまったら困るからやらないと考える企業。全く異なる視点であることがわかるのです。

研修を実施したために、社員の退職が続いたという話を聴いたことがあります。それまで外部講師による研修を実施しておらず、本格的な研修を受講したことが初めてのミドル世代の従業員の方々が、自分のやりたいことに気づき、他の環境を選んだということなのです。

企業側の従業員への期待値や研修会社側の意向のすり合わせが十分でなかったのかもしれません。けれども、それまで研修受講等の経験が乏しいままにしていた職場にも、課題があるように感じます。ダイバーシティは必要ないという企業が理由として挙げていた「同質のほうが管理しやすい」という考え方と通じてるようにも感じます。

ある時期までは管理できるかもしれませんが、ミドル世代ともなると、自律性が育ち、研修やキャリアコンサルティング等を実施しなくても、モヤモヤが大きくなって、パフォーマンスが下がったり、突然退職するリスクもあるのではないでしょうか。

インターネット時代において、労働市場の情報や、他社の情報をシャットダウンすることはできません。たとえ、社内イベントを増やして社内の交流を深めても、囲い込まれることで、さらに不安を感じる方が増えていくでしょう。

それであれば、定期的に外部の刺激を受ける機会を設けつつ、職場とのエンゲージメントも考えてもらっていたほうが、パフォーマンスも向上するでしょう。

企業としてのビジョンや従業員に期待することを伝えながら、一人一人のキャリアプランを考える時間も設定し、企業と従業員が一緒に成長できる機会を作っておいた方がよいのではないでしょうか。自律した人材が増えることは、アイデアが生まれ、生産性が高まる等の効果につながり、そのような人材が増えることで企業価値が高まり、さらに自律性が高い人材の採用につながるでしょう。伝え方や、研修の在り方を工夫するとよいですね。

組織開発には、チームで取り組んでいます。参考：プロティアン・キャリア協会の組織開発

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