「ヒトノカタチ」STORY-23(2/4):サマーバケーション、2日目

1日目:https://note.com/mnp_x7/n/n21059d174b91

「おはようございます」
女子がそれぞれに挨拶をすると朝食会場に集まっていく。
「お兄ちゃんたちは?」
「男子は朝早く出かけたわよ。今日の夕食を釣りに行くって」
「えー、ちょっと楽しみー」
百合子とアルルが話ししてる
「ねえねえ、今日はみんなでビーチで遊ぶんでしょう?」
「そうだな、海なんて久しぶりだから楽しみだな。ところで真夜中に厨房で何かやってたみたいだけど、今日のおやつかい?」
「うん、時間かかるから仕込みしてた。何が出てくるかはお楽しみってところかな」
「楽しみにしてるよ」
「えへへ……」
レイアとミイも話をしている、そこにすずねが
「自分、海で泳ぐのは初めてです」
「そうだったな。新品だったからまだこういう経験は少ないだろうしな」
「それ言ったら私もそうだよ〜」
アルルが話に入る
「じゃあ、この中で海で泳いだ経験があるのはミイだけか」
「はーい、結構連れてもらった記憶はあるよー」
「まあ子どもだと沖のスライダーとかで遊ぶのが中心になりそうかな、くれぐれも気をつけるんだぞ」
「はーい」
3人が揃って返事をする。

一方、同じ頃釣り船「第25昇竜丸」では……
「んー、海風がいい気分」
レンが船上で背伸びしている。
「レン君、船は大丈夫なんですね。車の中ではあれほど気持ち悪そうにしてたのに」
「高かったけどスタビライザー付きの船にしてよかったです」
ルークとキリトが話してると
「閉鎖空間に長時間いる車と違って開放されている船ならなんとか大丈夫だよ」
「そうですね。それならよかった」
「そんなこと言って、実は迷惑かけたくないから我慢してるとか?」
「そんなことな……うっ……」
レンが口をふさいで船の後ろに下がる素振りを見せる
「ほらいわんこっちゃないですよ」
キリトがフォローしながら船の後ろに連れて行く。
「相変わらずですね。まあトラベルパートナーでもこういう人いますし」
「そうだろうねえ。今頃こういう船に乗るなんて早々経験できないだろうから」
「そうですね……おっ、ポイントに着きました。始めましょう」
キリトがそう言うと全員が準備を始める。

「おっ、結構大きいのが釣れたぞ」
「正さん意外と釣りますね」
「何でも屋でもあるからこのぐらいはできますよ」
キリト、正、ルークは順調に釣り上げる中レンは……
「……全然かすりもしない」
「まあよくあるパターンでしょうけど」
しかしその時、レンの持っている釣り竿が大きくしなる。
「え……これって……わっ!!」
レンが引き込まれそうになる。あわててキリトがフォローに入る。そして船が動き出す。
※船自体は無人で、操船や航法装置、レーダー、魚群探知機などのデータはすべてキリトが操作/把握している
「これは来たかもしれないです。引き上げる準備を……!」
しばらく格闘した後に獲物が引き上げられる。
「これは……M3マグロ!ここまで大きいのはなかなか見ないです」
「すごいな、大物を釣り上げたじゃないか」
「へへ……まぐれですよ」
「さすがにこれはうちらだけでは食べきれませんね。市場に持っていきましょう」

一方百合子、レイア、アスナがビーチで泳いでいる。
「レイアさん、案外泳ぐのは上手ね」
「このくらいなんてことないよ……っておっと」
アスナがフォローに入る。
「へへ……まあこんなもんかな」
「あんまり調子乗らないで下さいね。溺れたら大変ですから」
「子供たちは沖の遊具で遊んでるかな?」
「そうですね。ちょっと見てみますか」
3人で沖の遊具に行く。

「ひゃっはー!月面宙返り~」
「すごいミイちゃん!」
「あんたも躊躇してないで思いっきりいっちゃおうよ~」
そう言ってすずねがアルルを押す
「ひゃあ~」
アルルが少しコースを外れて海面に大きな水しぶきを上げて落ちる
「もう、すずねちゃんったら」
「でも楽しかったでしょう?」
「ん……まあね」
「今度は私と一緒に落ちるわよ~」
ミイがそう言うとアルルの腕をつかんで一緒に滑る。
「おりゃあ~!」
2人がおもいっきりすべり出し、大きな水しぶきが上がる。
「……ぷはー、水のんじゃった」
「へへ、でも楽しいでしょう?」
遊具に来たレイアが3人に声を掛ける。
「よう!みんな楽しそうじゃん」
「あ、お姉ちゃん」
「あんまし悪ふざけはするなよ。ドロイドとはいえ破損は怖いからな」
「はーい」
百合子が来るとアルルが駆け寄ってくる。
「ねえねえ、一緒に滑らない?」
「そうね、一緒にいきましょう?レイアさんとアスナさんも」
「おう、じゃ一緒に滑ってようか」
「わーい!」
こうしてしばらく全員で滑っている。

そして午後になると女子勢が宿に帰る。
「ふう……これだけ泳いだのは久しぶりだから疲れたよ」
「でもお姉ちゃん結構楽しんでたじゃん」
「まあ、たまにはいいかな」
レイアとミイが話していると男子勢も帰って来る。
「戦果はどうだったい?」
「おかげさまで大漁ですよ。大物も釣り上げましたし。さすがに食べ切れる量じゃないので市場で解体していい部位だけ持ってきましたよ」
「そうか、これなら夜は期待できるな」
「そこはお任せ下さい」

全員が宿に帰り、しばらくそれぞれ休んだあと
「みんなー、おやつですよ」
声がかかると食堂に向かっていく。そして席につくとミイが
「今日のおやつは手作りアイスクリームとフルーツゼリーです〜」
「うわー、美味しそう〜」
そうしてそれぞれの皿に寄せると、全員が
「いただきます〜」
と食べ始める。
「うわ、めっちゃ美味しいよ」
「このアイスのコク、たまらないわ」
アルル、すずねの反応を見てて
「やっぱり、コドモロイドだけにこういうのは好きなんだな」
「そうよね、じゃ私達もいただきましょう」
そうしておやつの時間は過ぎていく。

そして夕食の時間、テーブルの上には豪華な活け造りや刺し身や寿司の皿が並ぶ。
「すごいな、これだけ釣果があったんだ」
「そうですね。このT2タイなんて自分が釣りましたよ」
レイアと正が話してる時にレンも
「へへん、でもM3マグロなんて大物釣り上げた自分には敵わないでしょう」
「そんなこと言って、キリト君のアシストがないとあんな大物釣れなかったでしょう」
「ん……まあ、共同作業なのかな」
「相変わらず船上で酔ってたですし、あれがなければ何も釣れなかったでしょう?」
「それ言わないで〜」
そうしてると百合子が
「やっぱりそうだったのね。相変わらずとはいえ……まあそんな話は置いといて、みんなでいただきましょう」
「はーい」
そうして全員が食べ進め始める。

食後、それぞれの部屋に帰り、それぞれ過ごしている。
「ぷはー、これだけ食べたのは久しぶりだよ」
「そうよね、なかなかこれだけの量食べられないからね」
レイアと百合子が話してる。
「ところで、レン君とわざわざ結婚したのは何故なんだい?」
「そうね……まあ学生時代からそれなりに付き合いはあったけど、その頃から意気投合はしてたかな……」
「レン君は本当はアスナちゃんと一緒になりたかったようだって……」
「救ってくれた恩は忘れないから……って言ってるけど、あの子は遠い世界のアイドルみたいな位置づけだっただろうし、そこは別に考えてたのかな」
「けどショップの店長から聞いたけど、あれから必死に探していてたどり着いて「僕にください」的なことを言ってたって聞いたし」
「そう……まあせめてお別れだけでも……って本人は言ってたからそれを信じてデートのOK出したわけだけど、もしかしたら……っていうのはありそうだったわけね」
「ルークのあのメッセージがなければ文字通りお別れだったわけだし……」
「でもそのおかげでみんなで遊べるようになったわけで、そこは感謝しかないわ」
「まあ、ミイも古代ゲーのつながりができて喜んでるし」
「はは……そうよね」
「ま、これからも深い付き合いになりそうだよな」
「そうね、お互いまたつながっていきましょう」

一方、男子部屋では
「今日は楽しかったですね」
「ああ、釣りなんて初めてだったけどいろいろ釣れて楽しかったよ」
キリトとルークが話をしてる
「ところで、釣りが趣味なんてドロイドにしては珍しいと思いますけど……」
「そうだな……元々板前として働いてた頃から魚の生態とか必要な知識だったから覚えてたけど、今のところに来てそこから興味持って……って感じかな」
「釣りするとなると費用もかかるし、マスターは反対しなかったのかい?」
「マスターは最初消極的だったけど、これから深い付き合いになるなら趣味もいいかな……って認めてくれたよ」
「まあ、趣味を持たせるとより人間らしさに磨きがかかるからね。そこはマスターの考え次第だけど、そういう個体はよく見てきてるよ」
「ルークさんはどうしてこの業界に身を投じようと思ったのですか?」
「妹のコネみたいなものだったとはいえ、こういう仕事を通じてドロイドと人間のいい関係を築きたかったっていうのもあるかな。戦争中では考えられないことだったし」
「そうですよね、こういう人間とのいい関係が築けるっていうのは平和だからこそでしょうし」
「そう、いろんな戦場見てきてるけどやはり平和じゃないと人間らしさなんて邪魔なだけだし」
「ですね……」
話してると正がレンを抱えてくる。
「いや、長話してたらレン君がのぼせちゃって……」
「ってそれ、大丈夫かい?」
そう言うとルークと正が対応に入る。
「しばらく横にした方がいいですね」
「ダメですよ、ヘタレなんですからあんまし無理しちゃ」
横でキリトも心配そうに見てる。
「すまんな、まさかのぼせちゃうとは……」
「まあまあ、よくあることなんであまり気にせずに」
「まあしばらく寝かせましょう」

そして、子供部屋ではミイとアルルが対戦している
「よし!これで決める!」
「あちゃー、また負けちゃった」
「さすがにビデオゲームだとミイちゃんの方が強いわよね」
「まあ、私はじっくり考える方なら強いけど……」
そしてすずねが
「でも見てると大きな差はないように見えるけどね。やっぱり経験の差なんじゃないかな」
「そこの点ゲーセンに入り浸ってるミイちゃんの方が上なのかな」
「まあそんなもんよね」
「さて、みんなそろそろ寝ようよ」
「あー、悔しいからでしょう」
「そ、そんなことない……」
「まあ私達だといつ寝ようと関係ないけど、マスターは寝姿を見るのを楽しみにしてたりするから、もう寝ましょう」
「う、うん……」
そう言って各人がケーブルを繋ぎ、電気を消すと寝始める。

3日目へ続く:https://note.com/mnp_x7/n/n3eed315c4b85

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