「ヒトノカタチ」STORY-20:ピクニック
---ある日、レイア一家と春香一家が公園に集まっている。
真、春香とレイアがお互いに顔合わせをして
「うちの春香がいつもお世話になっております。よろしくお願いします」
「こちらこそいつもお世話になってます。よろしく」
「ちょっと真ちゃん、年下だからって子供扱いしないでよ」
「まあまあ、お互いにお世話になってるからそこはね」
「そういえばレイアさん、真ちゃんの美容室のお得意様よね」
「ええ、いつも来ていただいてありがたいです」
「そうだな、この辺じゃ人間外の散髪ができるところは限られるからね」
「人間と違って髪質が針金みたいだからね、結構大変よ」
「まあそれはよく言われるけどな」
「あとハウ族なんか逆に髪質が細くて大変よ。耳大きいから傷つけないようにするのも気を使うわ」
「もしかして、あの一家も常連だったりする?」
「メイアちゃんでしょう?よく学園のよもやま話をしてるし。あとお母さんも来るわよ」
「いつもなら口数少ないはずなのに、よく話してるね」
「あの子はハマったから良くお話ししてるわよ」
「そうかい」
ミレーネが話に入り込んでくる。
「そういえば、兄のルーク君は?」
「ああ、仕事が抜けられなくて来れなかったんだ」
「それは残念、ぜひお会いしたかったわ」
「やっぱりミレーネちゃんは普通の女の子だよな。そっちのほうが良かったか」
「えへへ……まあそうなんだけど」
4人で話している間、ドロイドも話が進んでいる。
「はじめまして正です。よろしくお願いします」
「アスナです。よろしくお願いします」
「ルカです。よろしくお願いします。」
「翠です、よろしくお願いします」
大人勢がお互いに挨拶が終わると。
「ミイでーす。よろしくね」
「すずねです。よろしくです」
「……ミャムです。よろしく」
ミャムが恥ずかしそうにしてると、すずねが
「あーら、みんないい人だから恥ずかしがらずにしないでいいのよ」
「あ、ありがとうございます」
そんな様子を見て、レイアが
「はは、ドロイドで引っ込み思案なんていうのは珍しいな」
そう言うと春香が
「元々中古だったんだけど、前オーナーがそうさせたみたいで……でもこれはこれで可愛らしいからそのままにしちゃった」
「まあコドモロイドは愛玩要素が強いしね。これはこれでありだな」
話を進めていると。
「準備できましたよ。来てください」
正が呼びに来る。
---全員で話をしながら食事している。
「これって、カレーサンド?」
「そうよ、ミレーネちゃんがどうしても作りたいって」
「そ、それってもしかして……?」
不安そうなレイアを見て、ミレーネが
「大丈夫よ、甘口に仕上げているから」
おそるおそるレイアが口に運ぶ。
「……ん、確かに甘口だわ。でもスパイシーな感じは残ってる。イケるわ」
「でしょ、これでもスパイスから作ってるんだから」
「へえ、そこまでできるんだ」
話をしていると、真が
「こっちの方は辛口よ、食べてみる?」
そう差し出されたサンドをレイアが口にすると
「……う、これは確かに……」
レイアが少し悶えそうになって水筒に手を伸ばす。
「まあこれでもうちじゃライトな方よ」
「そうかい、けどこれだけ幅広い物をスパイスから作れるってすごいよな」
「センサー強化したルカさんのおかげだったりするけどね」
「ええ、私は最初は悶えたけど最近はスパイスの理想的な配合を導き出せる様になりましたし」
「甘口を作るようになったのは春香とミャムのためだけどね」
「ちょっと、私を子供扱いしないでよ。好みの問題なんだから」
「まあまあ……」
そうしていると正も挟まってくる
「ではうちから、タマゴサンドとカツサンドですよ」
「おおーこっちも美味しそう」
「うわー、つまんでいい?」
そうミャムが言ってつまむ
「うん、美味しい!」
「それはよかった。それではみなさんもどうぞ」
「はーい」
しばらく食べ進めて、会話が進み始める。
「ねえねえ、対戦してみない?」
そうミイがミャムに勧めるが
「ごめん、あまりゲームって興味ない」
「そう……気を悪くしたらごめんなさい」
「ミャムちゃんは普段何してるの?」
すずねが切り出す
「本読んでるわ。時々読み聞かせのボランティアもやってるし」
「へえ、そうなんだ」
「そういえばすずねちゃんって音楽プラグイン入ってるよね」
「うん、学校の先生の助手やってるし」
「今楽器はある?」
「うーん、タブレットならあるけど」
「ちょっと、リンクしてみない?朗読劇ここでやってみる」
「うん、いいわよ」
そう言うとお互いの額を合わせる。
「ついでだからミイちゃんも参加してみない?」
「うん!楽しそう~」
こうして3人による朗読劇が始まる。
---
「……だとさ、めでたしめでたし」
朗読劇が終わると集まってきた周りの人と一緒に拍手が上がる。
「ちょっと本気出しすぎちゃったかな、恥ずかしいかも」
レイアが3人の元まで来て話をする。
「すごいなー、みんな一糸乱れぬ演技だったよ」
「ま、こんなものかな」
ミャムは得意そうな顔をする。ミイ、すずねがレイアの元まで駆け寄る。
「ミャムちゃんすごい。こんな体験初めてだよー」
「演奏してて楽しかったよー、思わずノリノリになっちゃった」
「そうか、よかったな」
「今回は子供だけでやってみたけど、大人型ともやることもあるわよ」
「へえ、それも見てみたいかも」
「是非とも共演してみたいのがフェリスさんとこのフレイアさんね、あの人声がすごいきれいだから」
すずねが反応してみる
「ちょっと話してみようか?フェリスさんのパートナーだし」
「え!可能ならお願いしてみたい!」
「今回の動画見せてみるわ」
「うわー、楽しみ~」
---
話が進みレイアが真に話を振る
「ところで春香ちゃんと真ちゃんの馴れ初めってどうだったんだい?」
「自分のは人口調整のために生まれた子だったんで、ずっと施設暮らしだった。身請けしてくれるところもなくて18歳になって美容師学校に進学して寮生活しながら学んで、それから今の美容室に就職したの」
「トウキョウの美容室じゃなくて?」
「うん、それも考えたけどなんか故郷……っていっても私に故郷なんてないはずなんだけどね。でもそんな雰囲気を感じて、本当の故郷にしようと思って選んだの」
「……自分もそんなもんかな。元の故郷はもうなくなったし、もうここに根をおそろうと思ったからな」
「そんな時に常連だった春香と出会ったの。お互いに女の子好きっていうこともあって意気投合しちゃって、そのままゴールインしちゃった感じかな」
「そうか……」
「レイアさんは付き合ったりとかしなかったの?」
「小さい頃から女の子が好きで、あまり男には興味はなかった。まあ付き合ったところでどちらかが戦死する世界だったからな。そんなのは山ほど見てきたよ」
「兄とべったりなのは?」
「元々狙撃手だから集団で動くこと自体が少なかったからあまり他の男性と一緒になることがなかったからかな。身近にいるのが兄だったのもあると思う」
「ふーん、私はそもそもきょうだいとかいないし、そこは羨ましいかも」
「その割にはドロイド嫌いなんだろう?」
「これも子供の頃から好きじゃなかった。なんでかな……何か違和感を感じてたのかもしれない。でも春香と一緒になって最初は違和感感じてたけどドロイドたちの立ちふるまいを見てて悪くはないかな……なんて思うようにはなったわ」
「自分はむしろ人間よりも人間らしく振る舞う様子に惚れた感じかな」
「だからミレーネちゃん身請けしたのよね。妹ができて嬉しかったわよ」
「えへへ……自分もお姉ちゃんができて嬉しいよ」
ミレーネが照れくさそうにする
「ミレーネちゃんはドロイドたちをどう思ってる?」
「虐待受けてたときはかばってくれたりして、自分はいい思い出が多かったかな〜」
「そうだったな、でもおかげでトラウマを抱えることはなかったんじゃない?」
「うん!おかげで今の生活にもすぐに慣れたし」
「良かったわ、私たちのこと悪く思ってるかなとも思ってヒヤヒヤしてた時期もあったから」
「そんな事ないよ、でも男の子は欲しいかな」
「まあ、そのうちにね」
「やったー!」
一方、春香とアスナがお互いにべったりしている
「ふふ〜ん、やっぱり癒しの雰囲気、たまらないわ〜」
「ふふ、春香ちゃんもその元気な笑顔、好きよ〜」
そんなことをしているとルカが
「おやおや?2人でいい関係になってますね」
「ちょっと、変なところで割り込まないでよ」
春香がちょっと怒った顔をする、そうするとアスナが
「まあまあ、でも怒った顔もステキかもね」
「そ、そう?」
「まあたまには他の子とくっつくのはありかな?」
そう言うとルカがアスナの顔を向ける。
「それなら私も癒して~」
そう言いながら2人は顔を赤らめてテレ顔をする。春香はそれを見ながらニコニコする。
「へへ……こんな関係見るのもいいかもしれない」
そして時間が過ぎ、空が徐々に赤くなってくる。
「じゃ、またの機会にな」
レイアが春香一家に挨拶をすると、ミレーネが
「今度はルークくんもご一緒してほしいな」
「本人には伝えておくよ。ぜひ会いたかったって」
そうすると真も
「またうちの店に来てくださいね」
「おう、また来るからな」
ミイ、すずね、ミャムの3人が
「楽しかったよ、またやってみたい!」
「またやりましょうね。先生には話しておくから」
「ありがとう。みんなでやれて嬉しい」
そして春香、ルカ、アスナが
「またべったりしようね〜」
「もちろん、私もまた癒してね」
「ええ、いつでも来ていいわよ」
そうしてると正も
「今度はもうちょっとバリエ増やしてもよかったですね」
「うん!また食べたい!」
ミレーネが正の手を握る
「ミレーネちゃんのカレーサンド、美味しかったですよ」
「嬉しい!また作ってくる」
「まあ辛いのは程々にね」
そうしてお互い離れていった。
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