めぐみ

3分で読めるエッセイを気の向くままに綴っています。24歳 / 社会人 / 福岡出身 / 東京在住 / 邦ロック

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身近な存在がいなくなるということ

いつも隣に居て当たり前だと思っていた存在が、 急に、いなくなる。 こんなご時世だからこそ、 今はそんな話がしたい。 2020年4月1日。 明日、私は社会人になる。 そんな門出を控え、学生最後の日をただなんとなく過ごすはずだった今日、 奇しくも“その日”は訪れた。 3月30日。 住み始めて1週間の社宅の片付けを昼過ぎに終え、ベッドでゴロゴロしていたそのとき、突如電話が鳴った。 「トトを、殺してしまうかもしれない」 電話口で嗚咽混じりにそう呟く弟に、

    • ぜいたくなんて日常だ【新聞掲載】

      私にとって、ぜいたくは日常だ。 どんなに裕福な暮らしをしてるかって? 家にプールがある大豪邸で…… なんて言えたらいいけれど、現実は6畳間に住む貧乏大学生である。 週に1回、自作の茄子の煮浸しをつまみに、1本130円の発泡酒を飲む。 こんな些細なことが、私にとってはぜいたくである。 何を隠そう、日常のレベルが高いのではなく、ぜいたくのハードルが極端に低いのだ。 少し前までは、大人数での外食や飲み会の方が好きだった。 でも、気付いてしまった。 自分の好きなもの

      • 失敗したってどうにかなる【新聞掲載】

        旅行前の準備で面倒なことと言えば荷造り、そしてもう一つは冷蔵庫の一掃である。 作りすぎた野菜炒め、安売りで大量買いした卵、それから思ったより減らなかった牛乳。 そんな余り物たちを消費するために、オムライスを作ることにした。 いつもと違う材料、違う味付け、ケチャップがどうにかしてくれるだろという他力本願っぷり。 しかしこれがどうして、美味しかったのだ。 それは紛れもなく、私が作るオムライスの最高傑作であった。 余り物の寄せ集めくせに。 思わぬところから名品や傑作が

        • ホットミルクとかけがえのない嫌悪感

          私はホットミルクが嫌いだ。 5年程前、まだ私が高校生だった頃の寒い冬の日。 寝坊して慌てて家を出て行こうとする私に、父が決まって玄関で差し出したのは、大嫌いなホットミルクだった。 ただでさえ猫舌なのに、表面に張り付いた膜が追い討ちをかける。 “何故熱くした?” そんな思いを牛乳と一緒にグイッと飲み込む。 そして、明け方の痺れる空気で舌を冷やしながら、よく学校へ向かった。 そんなこんなで高校を卒業し、一人暮らしを始めた。 上京して1年目の、ある冬の日。 寝坊し

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          私が私であるために

          私のことなんて、何にも知らないくせに。 そう思ってしまうことが多々ある。 そんな風に、苦しい思いも、悔しい思いもしてきた。 でも、そんなことなんて、思ってくれるな。 入学試験、就職活動。 そんな、人生を左右する大切なことでさえ、ほんの二、三十分、ましてやほんの数回顔を合わせただけで結果が決まってしまう。 私のことなんて、何にも知らないくせに。 そりゃ、そうだ。 そんなのは当たり前だ。 面接や仕事の場で自分の境遇や心情を詳細に話す人なんてい

          私が私であるために

          大きなミミの木の下で

          やっと会いに行けた。 誰かにとっては早朝のジョギングコース。 子供にとっては毎日の通学路。 犬にとっては存分に駆け回れる散歩道。 そんな日常の背景のひとつに過ぎないけれど、なんとなく心が穏やかになる川沿いの道。 その道を見守るように立つ1本の木の側が、私の特別な場所になりました。 今から5年と半年前。 ペットショップの眩しすぎる光の下、手のひらに包まれて震えながらも、唯一じっとしてくれていた子。 その姿を見て、この子と一緒に暮らしたいと強く思った。 身

          大きなミミの木の下で

          降り止まぬ雨の中、スクリーン越しにこう悟った

          「表裏一体」この四字熟語が脳内で踊り出す、『天気の子』はそんな映画だった。 作中、駆け巡る感情に幾度となく振り回されながらも、心の奥底には間違いなく世の中の確信が芽生えていた。 晴れを望む人も居れば、雨に病まないでと請い願う人も居る。 自らの幸せは、気付かないところで他の誰かを痛めつけているかもしれない。 あの子の笑顔を支えているのが、地球の裏側の涙だったら? 「表裏一体」 幸せを選ぶには、責任が伴うのだ。 何があっても、その幸せを貫く責任が。 そして、生きてい

          降り止まぬ雨の中、スクリーン越しにこう悟った

          ばかやろう

          「箸の持ち方が違う」、「行儀が悪い」 幼い頃、父にはよく叱られた。 時には手を挙げさえしてくる父を、私は少し疎ましく思っていた。 中学生のとき、小さな事が原因で私は家出をした。 しかし、案の定行くあてもなく、父に連絡を入れて迎えにきてもらった。 「また怒られるのか……」 しかし、父が発したのは意外な一言であった。 「ありがとう」 後になってわかったことだが、この日父は会社を早退し、必死になって私を探してくれていたらしい。 無事でいてくれてありがとう。 連絡を入れ

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