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社長になった。何も変わらなかった。

MNHの小澤です。


「社長やってよ」。
2011年11月のとある日、会長に唐突にいわれた。
その瞬間、ぼくは「取締役社長」という肩書に変わった。入社の翌年だった。

会長がそれをいったきっかけは、ちょっとしたことだった。
何かの理由で会長がぼくを叱った。それを戒めるために、ぼくを社長にしたのだと思う。
でも、その理由を覚えていない。


覚えていないくらい、ぼくにとってはインパクトのない出来事だったといえる。

強いて言えば、周りが変わった。
出会う人の態度が変わった。売り込んでくる人も少なからずいた。
決定権者と話すのだから当然だろう。

そして、それが嫌だった。
彼らに対してというよりも、むしろ自分のなかで、だ。

ぼくはこのとき、30歳そこそこだった。
こんな自分が社長をやっていいのだろうかと。
肩書きと年齢とのギャップに、かなり違和感があった。


しかし、社長になったからといって、やることは変わらない。
今までも、ぼくらの理念のもと、会長と一つひとつ話しあいながらことを進めてきた。
これからも同じだ。

権限の範囲も、がらりと変わるわけじゃない。
ただ、社長になったことをきっかけに、自分が責任をもってやるべきことを、会長との距離感をはかりながらつくっていく感じは、あった。



一方で「立場が人を育てる」ということを、会長はよく口にしていた。
それは一理ある。

社長になり、周りの人からの対応も変わるため、何かしら自分にも影響は出てくる。
そして、そこから今に至るまでいろいろと学んでいくのだが、そのための出発点だったとはいえるだろう。

また、入社後にだんだん分かってきたが、そもそも会長がぼくを会社にいれたのも、経営を担う人材候補を探していたということもあった。
多かれ少なかれ、ぼくが社長になることは決まっていたのかもしれない。


いろいろ意味付けをしてみたが、結論としては、社長になったけれど何も変わらなかった。

それだけだ。


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