ちょっとしたお詫びに「ねこや」の羊かん
MNHの小澤です。
2014年の秋ごろ。この頃のMNHは、工房や小売店を持つことがブームだった(*1)。
その流れで、あるアイデアが上がった。
それが、「ちょっとしたお詫びに『ねこや』の羊かん」という企画だ。
要は『とらやの羊かん』のパロディーである(笑)。とらやの羊かんは本気の謝罪のときの品で、ねこやの羊かんはちょっとした謝罪に使ってほしい。
B級のお詫びの品というストーリーが、肝なのである。
ちなみに当時は東京の谷根千(*2)がブームでもあった。
下町ブームの火付け役ともいわれる谷根千は、雑誌やテレビに頻繁に取り上げられ、観光客でにぎわっていた。
なかでも、谷中は「猫の街」と呼ばれるほど猫が多い。谷中銀座商店街は、木彫りの猫が所々に置かれていたり、猫グッズを売る店があったりと、猫愛にあふれた雰囲気だ。
この商店街に店を構えてこの羊かんを売ったらウケるのではないか、と考えた。
また、実店舗があればストーリーの「根っこ」がつくれる。
たとえば『麻布かりんと』。
実は、麻布にゆかりがあるわけでもなく製造する工場があるわけでもない(*3)。しかし、麻布に実店舗を据えているだけで、"本物感"がある。「あそこの味を自宅でも食べられる」という、"ありがたみ"とでもいおうか。事実、このブランド戦略は奏功し、全国の百貨店で幅広く展開をしている。
羊かんという商品自体もよかった。
たとえば、井村屋の『スポーツようかん』。
羊かんは栄養価が高く、エネルギー補給にもいい。ちなみに、MNHの商品開発の基本的なコンセプト上、外せない点として「賞味期限が長いもの」というのがある。羊かんの期限は1年と長く、仮に流通させた場合にも無難な品であることが魅力だった。
要は、そんな愛されるブランドをひとつ、MNHでつくれたらいいよな、と思ってたのだ。
ちなみに、この商品企画に対する「本気度」は珍しく高かった。
物件やOEM先が決まっていないのに、ぼくらは先にデザインやロゴなどをもう内部でつくっていたのだ(*4)。そして、同時期の東京ギフトショーでそれを発表もしていた。猫の雑貨屋さんなどから「発売したら連絡をください」ともいわれていたのだった。
このように、全体的な企画としては結構いける事業ではないか、と自負したスタートだった。
(つづく)
(*1)MNHのようなニッチ路線の商品企画をするファブレスメーカーが、OEM先を探すのは大変だ。商品が真似されるのを防ぐために、OEM先もニッチなところを探していた。しかし、そのような先はOEMを積極的にやっていないため、交渉が難航することも。そこでハード(物件)をもって自分たちでつくる、売る、ということを考え始めていた。
(*2)文京区から台東区一帯の谷中・根津・千駄木周辺地区
(*3)実際は鳥取の問屋さんがやっている(これは良い例としてお伝えしている)。MNHのこの羊かんもOEMでつくるというのが前提だった。
(*4)ちなみに「ねこや」という名前は商標を取っている。