障がい者の働く場がただの”居場所”でいいのか?
MNHの小澤です。
障がい者の就労支援をはじめた矢先、ぼくはある研究会に顔を出すことになった。
法政大学の教授らによる「障がい者就労の研究会」(*1)だ。
ここで障がい者の働く現場の解像度が一気に上がった。
そして結論から言えば、障がい者が雇用契約を結んで働くのは非常に厳しいと悟った。
障がい者の働く場を真剣に考えているからこそ、誤解を恐れずに率直に課題をいおう。
働く場は大きく分けて3つある。
まず、特例子会社。
企業は、法律により障がい者を一定数雇わなければいけない(*2)。そして障がい者の働ける特別な子会社をつくるわけだが、ふたを開けてみると、清掃作業、シュレッダーに代表される簡易な作業が中心だ。
つまりは極端な話、親会社の周辺業務…社員がやりたくないことを押しつけるような閉鎖空間になりがちとも言える。そして業務に特別なスキルを必要としないため、障がい者自身もステップアップできず、やりがいにもつながりづらい。
そしてA型作業所。これは事業所と“雇用契約”を結ぶ形だ。
企業は障がい者に対して基本、健常者がするのと同じような作業をしてもらい、最低賃金も保証しないといけない。しかし現実問題、障がい者の方はその作業を健常者と同等なレベルでできないことが多い。よってこの形を成り立たせるのはとても難しい。
最後にB型作業所。これは“雇用契約”は結ばず、業務ごとに工賃が支払われる。障がい者の方が通えば、毎日なにかしら彼らにできる作業がある。そんな場だ。
しかし、このB型作業所にも問題は山積みだ。
それは“賃金の低さ”に顕著にあらわれている。
障がい者の人に暇をさせるわけにはいかないので、職員もやみくもに仕事をとってきてしまう傾向がある。そもそも対価が少ないうえ、あいだに中抜きする業者が入ると、障がい者の方の手に渡るのは1円を切ってしまうこともままある。
ならば職員がもっとよい仕事をとるべく、交渉すればよいのでは?とも思えるが、障がい者のスキルのレベルもあるし、彼らの現場監督をしながら仕事内容の交渉までするのは、とても難しいと思える。
かといって、障がい者の働く場がこのような状態でよいのだろうか?
このB型作業所の形態のなかで、もっと多くの仕事が回って、適正にお金も支払われるためには、どうすればよいだろう。
無理に一般企業への就職を目標とせず、できる範囲の環境でやりがいを生みだすことができれば…
研究会を通じ現状を知るなかで、ぼくなりに障がい者のよりよく働ける形を模索していった。
(*1)法政大学現代福祉学部の教授らが立ち上げた、障がい者が働く福祉作業所の課題を検討・解決するための研究会。当時、八王子周辺の福祉作業所を取りまとめている協議会のトップとつながりがあったことから、その研究会に参加させてもらえることになった。
(*2)企業は「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、法定雇用率に相当する数以上の障がい者を雇用しなければならない。現在多くの企業が、障がい者のための特別会社をつくる形で障がい者をひとところで雇用し、雇用率を便宜上満たすことでその法を回避している実情が多くある。
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