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石がある〜観ると河原で水切りしたくなる石映画の決定版

石映画の名作『無能の人』で忘れられないのは、女房を寝取られ落魄している神戸浩の演技だが、そもそも石に魅せられるというより石に耽る日常とはあまりにも虚無で、趣味などというものは陳腐に見えてならないのであった

この作品の川向こうから渡ってくる男はある面閑雅とも言えるけれど、河原で平たい石を探し、ひたすら水切りをする毎日もまたかなり虚ろだ

どうやら親が亡くなり、一人暮らしをしているらしい

老親の介護は免れたが、パラサイト的な地位を失い、精神的に瞑想しているのかもしれない

きわめてセリフが少ない不親切な構成なので、何とでも想像できるし、ここまで静謐だと彼が彼女を殺してしまうのではないか、家に火をつけて人生を終わりにするのではないかなど、余計な想像をしてしまう

事実としてはそれこそ何も起こらないにもかかわらず、期待感と緊張感のはざまで奇妙な心地よさを味わう

さまざまなシーンが目の記憶に残っているのだから、それだけ印象的な作品だったことになる

なぜこんな映画をつくったのか、つくらせたのか、上映しているのかと不可思議でならない


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